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2-2 

 キリリと鋭い目つきがぼくを刺す。


 「ええ、まあ、早くお弁当食べたいですし?かまいませんよ」

 「ならば、貴様、神剣士か?」

 「しんけんし?なんですか?それ、知らない言葉ですね」

 「そう、か。ならいい。すまなかったな時間をとって」


 そう言って、彼女はぼくに一言言って教室を出ようとする。

 しかし、ぼくは彼女を引き留めた。


 「ああ、そうだ。ぼくらのクラスって全員で何人でしたっけ?」

 「あ?……私を含めて40人だな」


 彼女は振り返り、ぼくの目を見て答える。


 「そうですか、転校生ですもんね、間違えるのはしょうがないですね。ぼくらのクラス、席は40席あるのにもかかわらず、あなたを含めても39人なんですよね。おかしいですね?」


 彼女の表情がこわばる。

 あれは照れの顔ではない、怒りに似た、いや、怒りそのものであろうか、そんなものがそのまま出ている顔だ。


 「黙っていれば、分からなかったものを……。貴様がこの学校の神剣士海翔か」

 「海翔?それはぼくの友人だ。ぼくの名前は、水尾(みずのお) (れい)。ちなみに、先生に朝早く海翔のことを聞いたが、回答はそんな人物は知らないと……。それなのに外部からの転校生の君が知っているのは……不自然じゃないか?君こそ何者なんだ?」

 「黙れ。御託はいい……貴様が神剣士であることには変わりはない。剣を抜け。あっちの世界でやり合うぞ」


 そう言って、彼女は制服のポケットより取り出した携帯を色々と操作をし始める。

 あっちの世界?剣を抜け?

 ぼくからしてみれば、はて、何のことだか、と言った次第だ。

 しかし、彼女の目つきには明らかになんらかの怒りやら恨みやらを抱えている様子で、とてもではないが、常人があの目つきで嘘をつくことができるわけがないと、感覚的にわかった。

 そうこう考えているうちに、彼女はぼくの目の前から姿を消していた。


 「あれ?どこに行った?」


 思わず声に出してしまった。

 すぐに教室から顔を出して、あたりの廊下やらを見渡すが彼女の姿は見えない。

 はあ、とため息をつくと、ぼくの頭に少々不誠実な考えがよぎる。

 ……もしかして、ぼくが彼女の言うとおりにあっちの世界なるものに行かなければ解決するのでは?

 いや、根本的には何も変わっていないか……。

 そんな自分にツッコミを入れていると、ぼくに今の考えと別に、また二つの考えが思いつく。

 一、彼女と話せば海翔のことがわかるかもしれない、ということ。

 二、この場で彼女の言うあっちの世界とは、あのゲームであるかもしれない、ということと。

 前者はまあ、確定で達成できるとして、問題は後者だ。

 なぜなら、後者はぼくの考察であって、確定事項ではないからだ。

 ただ、もし、あの、剣を抜けという言葉が、あのゲームのことを指していてあのゲームのリアルなタイマンを張ろうぜという意味で彼女が言っているならば、正しいということになる。

 そう、そう解釈すると、ぼくは彼女にデュエルを申し込まれたのだ。

 しかし、それはぼくの考察であって、彼女の本意でない可能性もある。

 あ~、現代文の小説じゃないんだから、全く……。

 そう意味に解釈することもできるかもしれませんが、実際に書かれていないので不正解です、一体どこに彼女は神隠しにあったという記述がありましたか?

 ……はあ、昨日模試の過去問の丸付けをおばちゃん先生に頼んだのが間違いだった。

 ああ、そうか、きっと彼女はぼくが生み出した妄想的な何かで、きっと海翔がいないのも聞き間違いか何かだろう。

 神隠しなんてないんだよ。


 「神隠し、神隠しねぇ~……神秘的なこと昨日から起こりすぎ。ラノベの主人公かって……。あ~、ゲームしたい。あ、そうじゃん。昨日入れたゲームが……。そういえば、ぼくまだ海翔の性癖聞いたことないな。ど~いう子が好きなんだろ、あいつ。昨日のシュナとか、どんな子だっけ?」


 ぼくは、そんな風に現実逃避を始めて例のゲームを起動する。

 そう、なんの意図もなく、ただ単純に、頭を空っぽにして……。

 ぼくがゲームを起動すると、またあの、空気感が殺風景な気を感じる。

 そして、誰かに声をかけられる。


 「やっと来た、か。私に切られる覚悟はできたな?」


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