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1-4 

 「ケン、ケンヲキル!」


 そういうと、やつは体内から剣を取り出し、構えてくる。

 人間の成れの果てでも、構えは立派なものだ。

 ぼくは、彼女を右手で握りしめ、剣先を地面につけて構える。


 『何をしておる!わっちは両手剣じゃぞ!右手片腕など、制御できるはずがないぞ!』

 『左腕、さっきのダメージでだ~いぶ痛い、だからもう左手しばらくは力はいらねえよ!多分まともに剣なんて握れない。このままいく。剣を弾いてカウンター、一点狙いだ』

 『お主、バサラじゃな!好きにするのじゃ、まあ、初陣に文句をつけるわちきではない』


 さて、討ちに出てこい、攻撃の直後が狙い目だ、そこをたたいて、決め打ちだ。

 ぼくはそう、頭の中でシュミレーションをする。

 額から汗が流れ落ちる、剣の持ち手が肝心な時に滑りそうで怖い。

 だが、勝つか負けるか、この勝負、黒星はいらない。

 ぼくが、唾をのんだ瞬間……蹴った!

 やつは地面を蹴ってこちらとの距離を一気につける。

 パワーは、下手をしたら負けているかもしれない。

 この打ち合いの直前でぼくは怖気づく。

 そして、ぼくはやつと一合も打ち合うことなく、右へ体をずらしやつの攻撃をよける。

 ただし、カウンターという当初の目的は捨てていない。

 すぐに地面を蹴って、やつの腹部に、左のこぶしをぶつける。

 やつの怯んだ表情が見える。

 まだ、まだ攻撃を続けられる。

 こっちのターンだ。

 ぼくは、先に先行した左手を追いかけるように、地面スレスレを走る剣先を持って、右腕を一気に下から上へ持ち上げる。

 剣がやつの体にあたるように、やつに致命傷を与えられるように。

 しかし、それは当然というべきか、やつの剣にガードされる。

 すぐさまぼくはバックステップでやつとの距離をとる。


 『なかなか良い作戦ではあったと思うが、経験の差じゃな。反応が早かったの』

 『どうしたらいいと思う?』

 『そうじゃな、ガードされたとき、やつの剣がわちきに触れたじゃろ、その時に分かったことじゃが、やつは無銘剣、つまり何の変哲もないただただ、邪念の込められた剣ってことじゃな。わちきは神剣特攻的なそんなやつを持っておるのじゃが……あいにく相手が相手なので使えないんじゃよ。まあ、わちきを扱うための試練じゃな』


 そう、彼女は得意げに話す。

 ドヤァとなっている顔が、さっきの幼女の姿で脳裏に容易に浮かぶ。


 『試練じゃねえだろ!能力使えない相手が敵じゃ何もはかれないでしょーが』

 『まあ、能力なしでそこまで剣を扱えるか……いわば剣士としての技量を計っておるのじゃよ』

 『え、そんなのあるの?まあ、これがチュートならそれでいいけど』


 それにしても、リアルなんだよなぁ。

 やつの殺気といい、さっき幼剣女に触れたときの痛みと言い、これホントにゲームか?

 そういえば、ぼくVR付けた覚え一切ないけど、この完成度。

 今の技術ってこんなことできるのか?

 少々、ぼくはこの現状に理解を苦しめながら、そんな考えに没頭する。


 『前を見るのじゃ!』


 そのロリ剣の言葉で、ぼくは意識をこっちに取り戻し、すぐさま剣先が地に着いた状態になっていた剣を持っている手に力を込めなおし、そのままカウンターの要領で振り上げる。

 その振り上げた剣は、偶然にもやつの剣にあたり、その剣を弾くことに成功する。

 これは、またとないチャンス。

 ぼくは直感的にそれを理解し、一気に距離をつめる。


 「これで終わりにしようか」


 ぼくは、この時だけ剣に左手も添えて両手で持ち、やつを正確に切りつける。

 溢れ出る鮮血が勢いよく噴出したわけではないが、ぼくに返ってくる。

 ぼくは、切ったのか。


 「——」

 「お主やったぞ。見事じゃったぞ。あのカウンターからの正確な切り、やはりわちきは両手で持つべきじゃな」


 ぼくは、何を考えるでもなく、自分の切ったそれを見ていた。

 何を考えるでもなく。


 「お~い、聞いておるのか~?」

 「うん?あ、ああ、わゆいわゆい」


 いつの間にか、幼女姿になっていた彼女に、ぼくは頬をつねられながら、そんな生半可な返事をする。


 「はあ、いいか?これからお主はわちきの主様なのじゃからな!そうなる運命じゃし、そうなるからそう呼ばせてもらうのじゃ、よいな?」

 「うん、ああ、ええ、まあ、かまわないけど?」

 「よ~し!やったのじゃ!ついにわちきを扱える主様にありつけたのじゃ~!今更契約解除と言ってもう遅いのじゃよ?お主は何があってももうわちきの主様なのじゃ!」


 彼女はぴょんぴょんとぼくの周りを飛び跳ねながら、やったーやったー、と繰り返し喜びを表す。


 「ああ、はいはい、じゃあ、ぼくもう落ちるから」


 そう言ってぼくが歩き始めると、彼女はぼくの服の袖を引っ張り引き留める。


 「待つのじゃ!わちきに……名前をくれんかの?名前がないと、能力も使えないし、契約も成立してないし……」


 ああ、そういう感じのタイプのやつか。

 最初に手に入れたやつに名前を設定できるタイプの……。

 じゃあ、どうしようか、そこまで厨二くさいのを付けるのは、後で何とか言われる可能性もあって、いやだから、そうだなぁ……。


 「そうだな~、じゃあ、シュナとか」

 「おお~、良いではないか!シュナ!わちきの名前はシュナじゃ!これからよろしく頼むぞ、主様!」


 そう言って、彼女、シュナはぼくの胸元目指してジャンプして飛び込んでくる。

 ぼくは何とかシュナをキャッチして、抱きかかえる。

 か、軽い、それに肌というかなんというか、彼女は触れているその肌の感覚が柔らかい。

 ……ゲームってこんなとこまで再現できるのか……。

 ぼくは、感心しながら、ひとまずシュナをおろす。

 ここでぼくは違和感を一つ覚える。


 「……待った、なんでぼくは八つ裂きにされていない?さっき触ったら傷を負ったはずだが?」

 「……?なんで、かの?まあ、主様とスキンシップをとるなという方が無理なのじゃし、契約したからかもしれないの。まあ、何でもよいではないか~、主様よ~」


 そういって、シュナはぼくの右手をガシッと捕まえて、力強く握る。


 「よし、じゃあ、家にいったん帰るか」


 一体これはどういうことだろうかと、いろいろ戸惑うこともあったが、とりあえずぼくのゲームライフ一日目はこれで終了。

 分からないこととこのゲームの世界観の説明は、明日学校で海翔に聞くとしましょうか。

 ぼくはそう思って、家に入って自室のベッドに横たわり、ゲームを閉じようとする。


 「——」


 シュナが落ちる寸前に、何かを言ったのが聞こえたが……。

 気のせいだろう、いや、初入手時限定ボイスだったら……。

 いや、ネットでいくらでも聞けるでしょ。

 ぼくはそう思って、残りの一日の時間を普通に何事もなく過ごした。


1章終了です。次回から2章になりますのでよろしくお願いします!おそらくこれからも水曜日更新になると思いますので、ブックマークしていただけると幸いです。まだ、いいね、評価なされてない方は、していただくだけで!なんと!ぼくのモチベがあります!(くだらん)ごめんなさい、調子乗りました、自重します……ただ、しっかり生きて更新はする予定ですので!これからもよろしくお願いします!!

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