4-1
彪馬、霧花、奈永のところに潜入をして得た情報を彼女に流した次の日。
目覚めの風景はいつもと変わらない白い天井。
なんてことはない、いつも通りの日常だ。
本当に何もない暇な一日の始まり。
だから、せっかくなので彼女のもとに行こうと思った。
「ダメだ」
放課後になってに彼女に会いに行くと、開口一番彼女はぼくに向かって言った。
「なんでだよ⁉」
校舎裏の日陰で話すにはとても似合わない声量だ。
「貴様は連日戦いすぎだ。戦闘狂なのか?だとしても、だ。さすがに傷つきすぎたその体で、こっちの世界に来ることは危険すぎる。休め」
「休めって言っても戦力不足なのは変わらないでしょ。ぼくも手伝いくらいは……」
「そう思うならなおさらだ。体を大切にしろと言ったばかりだが?」
「いや、当てがあるんだよ。この前、と言っても君の拠点に初めて行くことになった時なんだけど、いたんだよ、神剣士が」
「なに⁉なぜもっと早くそれを言わない!それは本当なのか?どんな姿で、どんな剣だったんだ⁉」
ぼくが神剣士の情報を出すと、すぐさま彼女は目の色、声色を変えて食いついてくる。
どこかツンデレ臭がする……とか言ったら怒られるから黙っておこう。
「なるほどわかった。この剣は片桐のやつを使って調べさせる」
ぼくが一通り、知っている情報を出し終えると彼女は腕を組んで何か考え始める。
「くれぐれも貴様は動くなよ?」
ぼくの方に鋭い視線を送ってくぎを刺す言葉も忘れず添えて。
「わかったよ。無茶はしないって」
「無茶じゃない。戦闘、情報収集、並びにこちらの世界来るなと言っているんだ。一体どこから来るんだ、その奉仕精神と自己犠牲の考えは。私には到底理解できんぞ」
「ぼくはこれくらいやって当たり前だと思うんだけどね」
「じゃあ、私の当り前に合わせろ。私の当り前はけがをしたら戦闘はしないだ。再三言ったからな?くれぐれも、くれぐれも自分のみを危険にさらすなよ?」
「あ~、わかったわかった。別に変なことする気ないんだから心配しないでよ~」
繰り返し強調してくる彼女に対して、ぼくは軽く流すように二回同じ言葉を繰り返す。
彼女はぼくが出した情報を片桐に伝えるために電話がかかるまで、いいな?と確認を取って来ていた。
心配してくれてるのか、余計なことをするなとくぎを刺されているのか、どっちなのか分からない。
「それで……」
ぼくは彼女の電話が終わってから再び声をかけた。
「なんだ?」
「学校にはもう慣れたの?」
「まあ、一応はな。色々助けてもらってるしな。貴様にも」
彼女は顔を逸らす。
残念ながらこの時赤面しているかどうかは見えなかったが、まさか彼女のことだ、そんなことだから顔を逸らしたのではないだろう。
「ぼくは何にもしてないでしょ」
ぼくはそう言って首と横に振りつつ手でも違う違うとアピールする。
「学校以外にも色々な」
「いやいや、全然経験ないですからね。君の方が歴あるでしょ?」
「まあ、それはそうだが私にできないことが貴様にはできるだろう」
「そりゃあ、だって、能力には千差万別あるからね。一本たりとも同じのってないんじゃない?」
「どうだろうな。それは私にもわからないんだが」
そう言って考え込むようなポーズをとる彼女に、ぼくは一つの質問をぶつける。
「そう言えば君はぼくに合う以前からも神剣士狩ってたの?」
「ああ、もちろんだ」
なんてことはない表情で彼女は言った。
「それってしっかり息の根も?」
「まあ、初めて会った時の貴様みたいに生にしがみついていたからな。不相応にも」
彼女はまた目を逸らした。
その言葉を放った時、彼女はどことなく初めて会った時のような絶寒に戻っていたような気がした。
最近はだいぶ解けてきて永久凍土がドライアイスくらいにはなったと思ったんだけどな。
「それでなんだけど、その時の剣って保管とかしてないの?」
「あったら能力が欲しい、だろう?全部叩き割った」
「え、なんでよ。剣が多ければ多いほど君の目標は達成できるんじゃないの?」
ぼくは、彼女の目的とかけ離れた彼女の行動に驚き質問する。
「それはそうなんだが、剣単体で放置すると暴走する恐れがある。私も片桐も契約できなかったからな叩き割るほかなかった」
「それってどういうこと?」
「そのままの意味だ。契約者のいない神剣は暴走体になる。下手をしたらこっちの世界から私達の世界に人が送られてきて、それを乗っ取る可能性だってある」
「そんなことあるのか。……というか契約できるのは一人一本じゃないの?」
「できることはできる。尤もそれなりにその剣と相性がよくないと駄目だがな」
「それに奪った剣を運ぶのも面倒だしな。契約していないとまともに触ることもできないからな。ただ、私は見たからな。複数の剣を操って戦う男をな」
「やり合ったの?」
そう苦い思いを思い出すようにして言った彼女にぼくは言った。
「ああ、惨敗したがな」
彼女は肩を落とし、明らかテンションが下がっている。
「剣も奪われた。いや、叩き割られたのだったか……どのみちあれはもう私の手元にはない」
「でも、今神剣持ってるよね?」
「dearFenrir.mk2は二本目の神剣だ。剣が変わって弱くなったとは言いたくないが、実力がすべて出し切れているとは言い難い状況だな」
「そうか」
ぼくは彼女の様子を見てこれ以上言及するのはやめようと思い、頷くだけにとどめてそれ以上何も言わなかった。
「あれ、美結ちゃんじゃん~。何してるのかな?」
背後から声がして、ぼくと彼女は後ろに振り返る。
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