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「……」
「なんじゃ?その目は……」
ぼくが彼女の姿に目を向けると、そのぼくの視線に対し彼女は嫌なものを見たかのように目を細めぼくをにらみつけてくる。
彼女の服装は着物姿に似ているものの全体的に簡素、いや、豪華さと気品さは残っているものの明らかに動きやすさを視野に入れた設計となっており、羽織物はあるものの床まで垂れてはおらず、どちらかというとスカートなのでは、といった印象を受ける。
また、容姿は全体的に幼め、話し方を見るにのじゃロリといった言い方がいかにもふさわしい。
また、ぱっちりとした目、一見非力そうに見える非筋肉質な細い腕と足、胸部から長くて腹部まで差し掛かるほどのつややかな髪、いわゆる二次ヒロインでいうなれば、——属性盛りすぎ、一属性でも落ちる奴はいるのに対し、この属性の盛り具合はどのマニアックファンの需要を満たすために生まれてきたのか、というくらいで——及第点だ。
「あ、いや、別に何でもない」
ぼくがそう言う時にはすでに、ぼくの上がっていた息はすでに平常時まで戻っていた。
ぼくは全力疾走5秒しか持たないほどの体力のはずだが……。
「なんじゃ?わちきを見て言うことが何もないと?」
「あ~、そういうわけじゃなくて……あ、この剣ありがとうございます」
そう言って、ぼくはぼくの今座っているすぐ隣に立てかけて置いた剣を手に取ろうと手を伸ばすが、そこの剣はなかった。
「あれ?ない……回収しました?」
「……あの剣は……わっちなのじゃ!目の前にいるわっちこそが!あの剣なのじゃ!」
「え?あの神々しい剣が、目の前ののじゃロリ?」
わけがわからない。
ぼくの頭の中は、?マークでいっぱいとなり、ぼくは思わず、彼女に触れようとした。
いや、ようとしたのではなく、しっかりと触った。
しかし、まるでぼくが触っていないかのように、彼女はふるまうし、ぼくは彼女に触れた感覚とは別の感覚を感じた。
「え、痛い……」
彼女の頭をなでようか、そんな軽い気持ちで彼女に触れた。
その瞬間、ぼくの左手のひらは、硬く鋭い剣先に貫かれたのだ。
「……?……いってぇ!なんだよこれ、聞いてねえって!」
「言ったじゃろ?わちきが剣なのじゃって……」
「どういうことだよ、なんで?え?なんでって!」
「あ~、もう物分かりの悪い男じゃな。なら、これを見るのじゃ!」
そう言って、彼女はぼくの目の前でバク転する。
すると、その姿はあのぼくが見とれた美しい剣へとその姿を変わる。
た、たしかに、この剣の白みを帯びた光の反射やオーラと、あのさっきののじゃろりの白い着物はどことなく雰囲気が似ていない気もしない。
「わかったかの?わちきがお主の剣なのじゃよ」
「ああ、まあ、わかった。……が、これは一体どういうことだ?」
ぼくは彼女を膝の上に置いて座り、ポケットのハンカチを手に取って、左手の傷の応急手当てをしながら彼女に質問する。
「あれは……。正直わちきにもわからんのじゃが、わちき達神剣のなりそこないか、マスターの消失、及びマスターと共に暴走、いずれか……いや、穢れに当てられた、という可能性も……そのくらいが原因じゃと思うのじゃが……」
そんなことを話していると、視界の端に何かが映る。
やつだ、まだ追ってきていたのか。
「どうするのじゃ?切るか?まあ、切らぬのなら説教か、わちきがお主を斬るの、どちらかじゃな」
「仮にもあれ人間だろ?プレイヤー同士の戦闘はペナルティとか……」
「いや、あれは人間ではない。神剣のなりそこない、いや、なれの果てと一緒に堕ちたのじゃ、あれのどこが人間であるのじゃ?だから案ずるでない。思う存分切るが良い」
人間じゃない、ね、ゾンビを倒すのはわかるが、人間を倒すのはいささか……いや、待て?スライム擬態人間は、人間じゃない、ということは人間の成れの果て人間は、人間じゃないな?
よし、切るか。
正直あまり気乗りはしなかったが、初戦黒星は、海翔にバカにされる気もしたので、一旦やる気を出そうとぼくは思い、決意を固めた。
「やる、か」
「そうじゃ!それでこそわちきの見込んだ人間!」
彼女がそう言うのを聞きつつぼくは剣へと姿を変えた彼女を手に、やつの目の前に打ち出でる。