3-(−n)
あるひどい雨だったあの日。
私はずぶ濡れになっている彼を、路地裏で見つけた。
「大丈夫ですか?」
私は自分の指している傘をその人の上に腕を伸ばして持っていく。
「どっか行けよ」
彼は私と目を合わせずにぶっきらぼうに言った。
よく見てみると彼の顔は流血しており、他にも体中傷だらけの状態だった。
私は彼を放っておくことができず、持っているハンカチを水筒のお茶で濡らし、それで血をひとしきり拭き取った後、財布に入っているいくつかの絆創膏を彼の傷口に貼った。
「これでひとまずは大丈夫だと思いますが……」
私がそう言った時だった。
突然後ろから複数人の男性の怒号が響いてくる。
「おい、てめえ何してんだ!」
「生きて帰れると思ってんじゃねえよ!」
「落とし前きっちりつけんかいゴラァ!」
そんな声が聞こえた瞬間、私は腰が抜けてその場にへばってしまう。
するとすぐさま彼は私とその男たちの間に入り、私をかばうようにする。
「かかって来いよ。オレはてめえらには負けねえよ」
そう言って彼と複数の男たちの殴り合いが始まったのだが、結果として最後までたっていたのは彼の方だった。
そして、彼は再び私が手当する前と同じような姿になって、へばっている私の前に座って言った。
「もう一回手当してくれ。いつか恩は返す」
「ええ~、いいですよそんな。返さなくていいですから!!」
そう言って私はまた彼の手当てを始めた。
そして手当てが終わって、立ち上がった彼は私に言った。
「名前は?」
「私は、奈永です」
「わかった」
そう言って立ち去ろうとした彼は、少し進んでから私の方に向き直って言った。
「あ、一応言っておくけどな。お前顔覚えられてるかもしんねえから、夜中に外歩くのやめろ」
それを言って今度こそ彼は立ち去ってしまった。
そして次の日になって、私がいつも通り登校し授業を受け、昼みになった時、私は一人の男子に声をかけられる。
「なあ」
その男子が私の机の前に立って私に言った時だった。
それを遮るように私と彼の間に割って入ってくる女子がいた。
「ちょっとあんた!あたしの友達に気安く声かけてるんじゃないわよ!」
「あ?恩返しくらいしたっていいだろうがよ」
その言葉を聞いて私が彼の顔を見ると、確かに昨日私が手当したところと同じように絆創膏やらがついているのが分かる。
「なに?あんた奈永と知り合いだっていうの?」
「そうじゃなかったら話しかけねえだろ」
「あんたみたいなガラの悪いのと、ドジで弱気な奈永に接点があるはずないでしょ」
「それがあんだよ。な?」
そう言って私の方を見てくる彼に、私はおどおどとしながら反応する。
「接点どこよ?」
「私がボロボロになってたところを助けたんだよ」
「あっそう……」
私が説明すると、彼女は彼の方に詰め寄って言った。
「奈永は優しい人だからあんたみたいなガラの悪いやつに優しくするけど、勘違いするんじゃないわよ?奈永は誰にでもやってるのよ。せいぜい自分が特別だなんて付け上がらないことね」
「別に付け上がってねえよ。恩は返す、文句あんのか?」
「ほら、悪い人じゃないんだよきっと!」
私がそういって、彼を不審に思って私から遠ざけようとしてくれる彼女をなだめると、彼女は不服そうな顔を私にしたのち、彼に対して睨むような目線を送って、好きにすれば?都いう。
「今日はあたし学食行くから」
それを言ったのち彼女は教室を出ていってしまった。
「いいのか?追いかけねえで」
「いつも通り、とは言いたくないんだけど、私の事気にかけてくれてるっていうのはわかるんだけど、私だって自分のみくらいは自分で守れるから……それに私はあなたのこと信用してますから!」
私は今考えてみると普段出さないような満面の笑みをこの時出していたと思う。
そんな事があって私は彼と何かと一緒に行動するようになった。
そしていつの間にか彼女もその輪に入って3人で一緒にいるようになった。
この幸せな3人で過ごす時間ができるだけ長く続きますように。
私はそう思いながら今日も笑顔で生きている。
本当に本当に3幕終了!長かったぁ……ぼくが長いって思うくらいだからみんな飽きてるよね……せめてこのSSだけ読んでほしいなぁ、とも思いつつ……。次回から4幕入ります!4幕は~、玲君の人間関係の話になりそうなんだよなぁ……いや、しっかり物語は進めるので心配は無用ですぞよ。というわけで、まだいいね評価してなかったらポチッとお願いします!ではでは~




