3-20
「それでお前これからどうすんだよ」
「どうってなにを?」
彪馬が言った言葉にぼくはきょとんとして返す。
「今日はどうすんだっていってんだよ。別にオレらは解散でも問題ねえんだけどよ。お前は何かやるべきことでもあんのかって」
「いや、特別何かしなきゃいけないこととかはないかな~」
「じゃあ、解散でもいいな。あ、一応連絡先くれよ。お前もオレらのグループに入れるからな」
「ああ、うんまあ、全然いいよ」
ぼくはそう言って携帯を取り出して連絡先を教える。
そうしてグループに即行参加させられ一言、やほ、とだけ霧花がそのグループにチャットする。
「まあ、これ見えてるなら大丈夫ね」
「画面覗き込んで確認してもよかったのに」
「それはプライバシー的に問題ありじゃない!」
ぼくが言った言葉に霧花は過敏に反応してそう言う。
あはは~と苦笑するぼくとなだめる彪馬と奈永、ちょっと!別に怒ってないわよ!と言葉を返す霧花。
そんな彼らを見てぼくは仲いいなぁ、と思いつつ彼らとて期待しないといけないことに胸を痛める。
居場所、ねえ……。
ぼくの今の居場所はきっと、彼女たちのところになるんだろうか。
そんなことを思いつつ、ぼくらはまた最初にこの世界に入った場所の更衣室に戻ってそれぞれ元の世界に戻って、今日は解散となった。
そして家に帰って夜も更けた大体20時頃、彼女から電話があった。
ぼくは彪馬や霧花、奈永が治療してくれた包帯で包まれた右手で形態をとって電話に出る。
「もしもし?聞こえているか?」
「聞こえてるよ」
電話に出るとあのきりりとした突き刺すような声が耳に入る。
「それで、結局接触できたのか?」
「ああ、うん、まあ、できたよ」
「そうか、やるな」
ぼくが吉報を教えると、少し優しめの柔らかい声になって彼女はぼくに言う。
「それで、信用は取れそうなのか?警戒されてなかったか?まさか今首元に剣先を向けられていたりはしていないか?」
「いや、さすがに剣先は向けられてないんだけどね。なんというか……連絡先もらえるくらいには進んだよ」
「本当か⁉……いや、早くないか?」
びっくりするような反応を見せた後に彼女は冷静になってぼくに疑問の声を上げる。
「ぼくもそう思ったんだけどね。まあ、どうにか頑張りました」
「どうにかって……貴様どんな手を使ったんだ?」
「簡単に言うと君らの世界に行ってちょっとやり合った」
「……おい、貴様こっちの世界には行くなと言ったはずだが?」
「ちょっと待って怒らないでよ!」
明らかに声色の変わった彼女に対して、ぼくは焦って早口で言葉を返す。
「貴様の身の安全のために言ったんだぞ!それを安々と無視するなと言っているんだ!そこにどんな理由があれ、貴様が自分の実を危険にさらしたことに変わりはないんだ!」
「……悪かったです」
ぼくは彼女の最初にあった時のような気迫と怒りを電話越しでも伝わるくらいの勢いで言われたことで、言い訳を言うことがより彼女に借りを増大させかねないと思いただ謝罪の言葉を述べた。
「貴様の命は貴様が思っている以上に価値があるんだ。それに貴様がいなくなったらこれから私達はどうする。そのまま野垂れ死にかねんぞ。分かってくれ、私にとって貴様は相当大切なんだ」
「わかった、ホントごめん」
「分かればいいんだ。それでやつらの能力とかは分かったのか?」
「もっちろん」
そうさっきの説教の時のシュンとしたテンションと打って変わって、上機嫌でぼくは彼らの能力について言う。
「なるほどな。【剣を獣に変える能力】と【物質の状態を変化させる能力】か。そしてもう一人が暫定で無能力、と。なるほど、わかった。片桐とサトーにも伝えて色々話し合ってみることにする。貴様も話し合いに来るか?」
「行った方がいいなら行くけど」
ぼくはそう全然乗り気で言ったのだが、行けたら行くみたいなテンションで言ったように勘違いされたのか、彼女はいや、やっぱり大丈夫だ、すべて決まり次第伝えよう、と言った。
そして、ちょっと言葉に詰まったのち彼女は言った。
「その、なんだ。……危険な役割を担わせてすまなかったな。……その、ありがとう」
それを言い終わったのち彼女の方からブチっと電話は切られた。
ぼくは完全に、カードゲットしてやったぜ、エッヘンするタイミングを逃してしまって虚無感に満たされてしばらくそのまま微動だに出来なかった。
まあ、今度自慢してやろうか、そう思いながらぼくは自分が感じられてない疲れのせいか簡単に眠りについてしまった。
3章がこれで終了です!明日(8/8)の12時にSSを投稿しようかと思いますので、良かったら見ていただけると嬉しいです。好評でしたら、各章終わりにその章に出てきたキャラクターを出したSSを出す(かもしれない)のでまだいいね並びにブクマ、評価、していただけてないのでしたらポチッとお願いします!




