3-16
ここが使い時だ、全知善王の情報開示勅命の!
使用条件はシュナと相手の剣が触れる事。
『のじゃ!あの小娘の剣の能力はずばり【切った物質の状態を変化させる能力】なのじゃ!』
『それは何ができるの?』
『例えば~、水を氷にして飛ばすとかできるのじゃ!でも温度とかは変えられないのじゃな~。遠距離武器としてはだいぶ厄介なのは間違いないのじゃけども……』
『わかった。ありがとうシュナ』
『役に立ててうれしいのじゃ~。いつでも呼んでくれて構わないのじゃよ~、主様~』
帰ったらいっぱいシュナの頭なでよう。
「見せてあげるわ!おてんばな引力!」
そう言うと霧花は右に移動して壁に短剣を突き刺す。
すると、そこから大体一辺2メートルの立方体が、その形を保ったままズズズっと出てくる。
しかし、その壁の一部であったそれの状態はそのまま出てきているだけではなく、見た感じ液体になっているようだった。
さしずめ、彼女が温度を高くして攻撃、温度を低くして拘束と、切り替えるように、移動には液体や気体、攻撃には固体と、言ったような感じで切り替えているのだろうと、一人合点する。
「さあ、行くわよ!」
そう言って霧花がこちらに剣先を向けると、その立方体はぼくの方に向かって来る。
ぼくはそれに対し、あまりの大きさに避けることは無理だと考え、正面から受けることを決心する。
しかしぼくも無策ではない。
シュナを両手で握り、思いっきり大振りで上から向かって来る立方体に向かって振り下ろす。
「ぶった切る!」
「甘いわよ!」
ぼくは剣を振り降ろした。
しかし、何かを切った感触はないどころか、むしろ空振ったような気さえする。
そう思った次の瞬間に、ぼくは視界の両端からそれぞれ来る元壁の岩に押しつぶされたのだった。
「当たるわけないじゃないの。あんたが剣を振り降ろしたタイミングでこれを二つに分分断したのよ。このままだと圧死するけど、降服したら?」
「……」
ぼくは何も言わず、両手で握ったままのシュナをどうにか右側の岩に突き刺す。
すると次の瞬間、その岩は元からなかったように消え失せる。
「無駄なあがきをしたって無駄よ」
そう言うと、左に残っていた岩がぼくのことを押して、今度は、窓と岩で挟まれる。
ぼくが勢いよく打ち付けられた廊下の窓ガラスは、クモの巣状のひびが入り、さらにまだ岩の勢いは収まらず、いまだにぼくのことを押し続け、窓もミシミシとひびが拡大している。
猶予はあまりない。
このままだと窓ガラスが割れて全身でガラス片を浴びることになる。
そう思ったぼくはすぐに左の岩にシュナを突き刺して岩を消す。
そして口角を上げて霧花に言った。
「それで?圧死がなんだって?」
右腕、右足、右腹部は窓ガラスの破片が刺さり、出血しているのが服の上からでもわかる状態だが、そんなことを言ったぼくは強がりだと思われたことだろう。
それに顔面にもすでに破片がいくつか刺さっている。
目に入っていないのが幸運だと言われれば確かにそうだ。
「まだやるのかしら?その状態じゃ無理でしょ。というか、あんたの剣の能力何よ。自立させる能力じゃないの?」
「さあ、なんだろうね?」
霧花は自分が状態変化させた壁がシュナに触れた瞬間、一瞬で消えることに対して疑問を持ったらしくそう聞いてきた。
まあ、教えないけども。
次に、ぼくは霧花との距離を詰める。
踏ん張った右足に破片がより深く突き刺さって血がにじむ。
もはや痛いといった感覚はない。
きっと死ぬ時はこんな感覚のまま切り落とされるんだろうな。
ぼくはそんなことを思いながら、わざと大振りに振った剣を振り降ろそうとした瞬間、シュナの声が脳裏に響く。
『やめるのじゃ、主様!体が明らかに持たないのじゃ!死んでしまうのじゃ!』
分かってる、分かってるけど。
ぼくは周りに聞こえることはおろか、シュナにも聞こえないように心でそう唱えた。
この勝負は勝てない。
ぼくの実力不足だ。
だけど、ぼくはただでやられような男じゃない!
ぼくは懐に素早く入り込んで、ぼくの腹部に剣を突き刺そうとする霧花を見逃さずに、しっかりその剣先をシュナから離した右手で握りこむ。
もちろん剣を素手で握っているだけだから刃の部分が親指を覗いたそれぞれの第二関節に刺さってめっちゃ痛い、もう泣いちゃいそうなくらいには。
しかし、これはもちろん予想して行動してたのだからこうやって防げたのだが、霧花がぼくの腹部を攻撃するのを予見していたやつからも思わぬ攻撃が飛んできた。
「あ、わっり」
そう言ったのは彪馬で、霧花がぼくの懐に剣を刺そうとしたのを、自分の剣を投げて防ごうとした結果、ぼくの腕にその剣が刺さるという事態になったのである。
その時できるだけわざとらしくないように、その痛みのせいであたかも偶然シュナを落としちゃったように見せかけて彪馬の剣にシュナをぶつけたのは内緒だ。
それにしても、もうすっごい痛い。
「いってぇ!あ~、もう無理降参!」
こんな風に無理やり明るいように言っているが、これは文面だからそう見えるのであって、実際は冷や汗が出てまともな状態ではなかったし、いかにも死にかけという言葉が似合いそうな様子だった。
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