3-15
ぼくの額から冷や汗が垂れる。
ピンチか?いや、違う。
これは、チャンスだ。
ぼくが彼らの中に潜入できるチャンスなのだ。
ここは意地でも勝たねばならない。
ぼくは覚悟を決めて彼らの方を見た。
「まあ、オレだってこんな勝負で命を落としてほしくねえし、あの女との勝負もあるだろうからな、命のやり取りはなしでいいな?」
「当然だよ!なんでこんなので命失わなきゃいけないのさ!奪いたくないし取られたくなって!」
ぼくが大声でそう言うと、霧花はぼくの方をにらみつけて言う。
「あんたうるさい。まあ、やるからには全力よね?」
そう言って彼女は剣を胸元から取り出して言う。
「もし仮にだが、命を取ろうとしたらオレら二人も参戦するからな?」
「だから命取らないって!」
ぼくはそう声を荒げて言う。
「さっきみたいな舐めプするんじゃないわよ?」
そう言って彼女がぼくの方に剣先を向けると、奈永と二階堂は少し距離を取った。
ぼくもいきなり切りかかられるとまずいので一旦距離を取っておく。
「正直、あたしはあんたのこと信用できないのよ!」
そう言ってせっかくぼくがとった距離を一気に詰めて霧花はぼくに切りかかってくる。
当然ぼくも何の手も打たないはずもなく、一言叫んだ。
「シュナ!」
もし彼女の飛んでくる速さを計れたらいくつになるだろうか。
それともぼくがこの世界に来たこと察知してすぐそばにいるのだろうか。
そう考えるほどの速さでいつも彼女はぼくのもとに飛んでくる。
しかし、一直線にぼくの元には来ないで、霧花に剣先を向けた状態で攻撃を仕掛けるように飛んできている。
それに対して霧花は驚き、距離を詰めるのやめてシュナを弾き様子をうかがう。
そして攻撃を仕掛けた後にシュナはぼくの手前辺りに突き刺さったのでぼくはそれを引き抜く。
『ぬ~し~さ~ま~?あの二人からこっちに来るのはやめろと言われておったじゃろ!なんで来ちゃったのじゃ~⁉』
『なんでも来ちゃったんです……。いや、まあ、こっち来た方が情報とれそうだしこっちこないと話が進まなさそうだったし~……ごめん』
驚いてぼくに詰め寄るような声をかけてくるシュナに、ぼくは言い訳をする子供のように言葉を並べる。
『もちろん!わちきがいるから主様は殺させないのじゃがな!主様はわちきが守るのじゃ~』
そう言ってくれるシュナを心強く思いつつ、ぼくはシュナを両手で握って構える。
もちろん、と言いたくはないのだが、今日手のけがは治っていないし物を握ると痛むけれどもだいぶ良くなったから、というよりは全力でやらなければならないからぼくはシュナを両手で構えた。
「それがあんたの剣ってわけね?彪馬と一緒で自立させて挟み撃ちするタイプかしらね?」
「さあ、どうかな?」
ぼくはそう言って彼女の様子を見る。
彼女の表情は勝負を純粋に楽しむような不適の笑みを浮かべつつもこちらを鋭い眼光が睨んでいる。
それに対しぼくの額には冷や汗が垂れる。
しかし、さっきの攻撃のことを考えてあまり強そうには見えないし、剣を手にしてから日が浅いのかと思うほど練度が低いとも思われたから彼女と戦った時よりは少しばかり心に余裕がある。
それに彼女との戦闘と違って命のやり取りがないこともぼくの心の余裕を作るのに貢献している。
だから、負けるわけにはいかない。
ぼくはより一層シュナを強く握り相手の行動をよく観察する。
今、霧花が力んだ。
来るぞ!
そう思ってしっかりぼくが迎撃の体制をとると、霧花はぼくの方に向かって距離を詰めて攻撃を仕掛けてくる。
ぼくはここは引かずに構えた通り迎撃して相手の攻撃を弾く。
しかし、霧花は短剣と言うこともあって一回弾いた程度では攻撃は止まらず、続けて2回3回と連撃が飛んでくる。
これはぼくも対応がしきれずに、ガードの隙をついて浅い切り傷がいくつもついてくる。
「くっそ。さすがに手数が多いな」
ぼくはバックステップで霧花と距離を取ってそうつぶやく。
すでにぼくの制服には無数の切り傷ができており、そこから鮮血がこちらをのぞかせている。
痛い改造制服のダメージファッションみたいで非常に不服だ。
しょうがないので今日は体育着に着替えて帰ろう。
「案外大したことないわね。さっきと違って全然攻撃通るじゃない。口だけなんじゃないのかしら?」
そう霧花は構えを下ろしてぼくを煽るように言う。
「まあ、そう簡単にぼくは終わるわけないよ」
「でも、このままだと能力も使わないであたしの勝ちよ?」
「能力を使うことが必ずしも勝ちじゃないってことを教えるまでだよ」
ぼくはそう言った瞬間にシュナの能力を使う。
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