3-14
二階堂はそういってぼくに切りかかった彼女を問い詰める。
「そんなの決まってるでしょ?気に食わないからよ。あんたの知り合いじゃなかったら首飛ばしてたわよ?」
「まあまあ、霧花ちゃん落ち着いて」
霧花と呼ばれたぼくに切りかかった彼女をなだめるように、もう一人のメガネをかけた女子がぼくと彼女の間に割って入ってくる。
「あ、私は七 奈永です。……霧花ちゃんは警戒心が強いだけなので……あの、ごめんなさい」
そう自己紹介したのちすぐに、奈永は頭を下げた。
見た目はあまり大きくない、というか女子の中でも多分小さい子の部類に入ると思わせるような背丈で、髪は普通くらいの長さで肩くらいまで、制服はしっかりボタンを留めていて、二階堂や霧花とは同じ空間にいるのが異質とも思われるような空気感の違いっぷりだ。
また、少々猫背っぽくなっており、終始体を丸めていて常にこちらを下からのぞき込んでいるような視線で話しかけてくる。
まるでこちらの顔色を窺っているのか、とも思ってしまうが、気が強いよりは幾分か陰キャのぼくにはいいのかもしれない。
卑屈になられたら少々困るかもしれないが。
そしてそれを見て霧花が怒鳴る。
「なんであんたが頭下げるのよ!どう考えても頭下げるのはこいつの方でしょ!」
「ちょっと待ってくれ!ぼくが悪いのか?」
ぼくはいきなり悪者にされてそう反応する。
そこに二階堂が介入して事を収めようとする。
「落ち着け、霧花。お前も一旦自己紹介くらいしろよ」
そう二階堂が言うと、明らかに聞こえるように霧花は舌打ちをしてぼくの方をにらむ。
あ、これは仲良くできないタイプですね。
「わかったわよ。あたしは我妻 霧花。好きな食べ物は、鮭の包み焼よ。まあ、彪馬が仲良くしろって言うなら仲良くしないこともないけど?」
威圧的な態度で彼女はぼくに言ってくる。
髪は長めの髪を一本にまとめた三つ編みのおさげが腰のあたりまであり、制服の上から青色の薄いパーカーのようなものを羽織っている。
また、奈永の隣になってみると、大分大きく女子の中でも大分大きいんじゃないかと、奈永と真逆の印象を受ける。
本当に真逆らしくて、制服は二階堂と同じように改造というわけではないが、パーカーのチャックはおろか、制服のボタンもいくつか止めていない。
そして堂々としていて、何かあったら蹴り飛ばすわよ、そんな睨むような目つきでこちらを見ている。
「仲良くしてやれよ。あと、なんで好きな食べ物言ったんだよ。他になんかあっただろ」
「いいじゃないの!鮭の包み焼は低カロリーで塩分控えめ、それでいてものすごくおいしいのよ!」
「鮭のホイル焼きについて言えなんて言ってねえじゃねえかよ」
二人がそう言い争っているときに、奈永がぼくに話しかけてくる。
「仲いいですね、二人は」
「喧嘩するほどって言うんじゃないかな。あれは」
「きっと、いや、確実にそういうやつですね」
「混ざらなくていいの?」
ぼくはニコニコしながら二人を眺めている奈永にそう言った。
そうすると彼女は、いえいえ、と首を振ってぼくに言った。
「二人はあれでいいんですよ。あの二人はあのままでいるのがいいんです。私はもっと違うコミュニケーションの取り方がありますから」
「そうなのか……」
ぼくはふ~んと頷いてニコニコしている彼女に言った。
「そういえば名前聞いていなかったですね。なんていう名前なんですか?」
奈永はそういってぼくの方を見てくる。
「あ、確かに言ってなかったね。ぼくは水尾 玲」
「玲先輩ですね」
そういえば、とぼくは思い出したかのように名乗る。
そして先輩と呼ばれたことで改めて年下なんだなと思い出す。
「そういえば玲先輩はなんで私達に会いに来たんですか?」
「いや、まあ、こんなゲーム始めちゃって死にたくないからかな~」
ぼくはそれっぽい理由を付けて苦笑してアハハ~と適当なことを言う。
「え、このゲームって死ぬんですか⁉」
ぼくの言葉を聞いて奈永は驚いたような声を上げる。
その声を聞いて仲睦まじく言い争っていた二人もぼくらの会話に入ってくる。
「あんた、奈永泣かせたんじゃないでしょうね?」
「いや、霧花ちゃん、私は大丈夫だよ」
「なんかあったのかよ」
二階堂がぼくに質問してくる。
3人からの視線に迫られてぼくはキョドりながら3人に説明を始める。
「この世界で死ぬとね……存在そのものが消えるんだよ」
「ただのゲームじゃないんですか⁉」
奈永は声を上げてショックを受ける。
「だから何よ?死ななければいいだけじゃない」
「その方が臨場感があって楽しいじゃねえかよ」
それに対して霧花と二階堂は何事もなかったかのように、いや、それ以上に楽しんでいるようにすら見える反応を示す。
「ふえ~、なんでそんなやる気なんですか~⁉」
「いや、ゲームで死ぬんだよ?普通に考えても異常でしょ⁉」
「あんたたちビビりすぎじゃないの?たかがゲームでも負けるとかなくない?全力でやって玉砕するだけよ!」
「霧花の言う通り全力でやるだけだろ?こんな最高のゲーム他にあるかよ?」
奈永とぼくが腰を引けているのに対して、霧花と二階堂は依然として強気な態度をとっている。
「というか、あんたさっきあたしが攻撃したとき剣使わなかったけど本当に剣持ってるの?」
「え、いや、持ってるよ?」
急に霧花がこちらを見てにらみつけて言うのでぼくはびっくりしつつ答える。
それを聞いて何かを察したのか、二階堂はぼくと霧花の間に入る。
「霧花、ここで戦闘始める気じゃねえよな?」
「もしかしたら本当にこのゲームで死ぬとしたら、こいつはあたしたちを殺しに来てる可能性あるのよ?あんたはこいつ信用できるの?」
「そう言われると100%の信用は出来ねえな」
そう言って霧花の方を見ていた二階堂はぼくの方に向き直って言う。
そこでぼくは嫌な予感を感じる。
「お前を疑うわけじゃねえが、勝負してもらうぜ、いいな?」
「それで信用してくれるなら……しょうがないか……」
やっぱりか。
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