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「おそらく、ネイザーにあってはならないからだと思う。これはあくまで推測なんだけどね」
「違反すると何か起こったりするんですか?」
「いや、わからない。ただ、誰かからそう言われた気がする。それに嫌な予感がするんだ。もちろん科学的な根拠はないんだけどね」
「なるほど」
「こんなところかな。片桐、話していいよ」
「フン、待ちくたびれたぞ」
片桐はそう言うと部屋から出てきてこちらの方へ歩いてくる。
そして、何かしらの物体をこちらに投げる。
「これを接続してモニターに写せ」
それを受け取った、あの、人の機械をいじってる人の一人がそのドローンを機械に接続した。
正直また名前と容姿が一致してないので許してほしい。
すると、目の前にあった大画面に、ある写真が映し出される。
目の前の大画面、そこに映ったのは見覚えがある男と知らない女子が二人。
「敵はこいつら、そうだろう?」
「ああ、この三人。と言っても現状でわかっているのは、だがな」
目の前に映し出されていた写真には、あのぼくと彼女の戦闘を妨げた男と、二人の女性、それもぼくと同じ学校の制服を着た女子が映し出されていた。
「同じ高校の生徒か」
「ああ、あいつらの着ている服と私の服が一緒だな」
「フン、だからと言って手加減や情をかけるのか?固城はそんなことはないと思うが、お前はどうなんだ?」
ぼくが少々不安な顔をしているのを見たのか、はたまた念を押しているだけなのか、片桐はそうぼくに鋭いまなざしを向けて言った。
「正直、極論、こういう戦闘は言いたくないですけど、殺す殺されるっていうもの、ですよね。やらなきゃやられる。それはわかります。でも、死んだら終わりですよ?人生が、築いてきたものが。それは、無理ですよ。受け止め切れるかどうか……」
「甘いぞ。たとえそれが現場の意見だったとしてもだ。オレは、ここでサトーみたいに指揮官だ、なんだと威張れる権限はない。だがな、これはゲームではないのだ。お前が言った通りやらなければやられる。死にたくはないだろう、誰だってな。それに、だ。死んだやつの痕跡は消える。誰が悲しむ、誰が裁く?そんなことはない。もし、説得して仲間に引き入れたとしても情をかけて仲間になったやつなど、再起の機会をうかがう虎に過ぎないんだ」
キリリとした眼光がぼくを貫く。
それは痛覚に訴えるようなものではないが、その威圧からかぼくは委縮してしまう。
「情をかけて仲間になった人が信じられないというのなら、ぼくだって信用に値しないはずです」
「フン、その通りだな。ならばここでオレたちが何もせずお前を返すと思うのか?」
「逆に言いますが、無事にぼくの帰りを見送れる確証はどこにありますか?」
それを言った瞬間、ぼくはシュナに手をかける。
それまではシュナの円盤状の部分をまるで賞状でも受け取ったかのような持ち方をしていたが、それは柄の部分に右手をかければいつでも戦闘態勢に入れるような持ち方をしていたのだ。
尤も、ぼくはすでに手持ちのカードは使い切っているし、例え片桐が本当に攻撃力がないタイプの神剣士だったとしても、彼女は片桐に仲間するだろうからぼくの負けは確実なのである。
そう、これはれっきとしたブラフだ。
「フン、いいだろう。お前の力量を計るいい機会だ。手加減はするなよ?」
「命をとらないこと、それが手加減に入らないのであれば」
「フン、暴君の護衛部隊!」
そう言って片桐は、ぼくに剣先を向けて言う。
すると、片桐の剣のグリップガードの円が拡張され、一つの大きな円ができる。
そして、その円の内側の空間からは時空の狭間のようなこの世のものとは思えない異質な空間ができており、そこから2機のドローンがぼくの方に向けて飛んでくる。
「ふざけるな!」
彼女が声を荒げて言った。
それと同時に片桐のドローンは2機とも彼女によって両断された。




