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「待った?」
ぼくの第一声もさながらそれっぽいものである。
「いや、別に私は2分ほどでここまで来れるから特別待ったということはないな。まあ、概ね予定通りだろう」
「そう、それならいいんだけど」
「一つ聞いていいか?」
彼女は少々怪訝な顔でぼくに言った。
「貴様の隣にいる少女はなんだ?」
「なんだって、ぼくの神剣だけども?」
ぼくはさも当然のように答えた。
そして、ぼくと彼女は二人して首を傾げた。
「貴様はなにを言っている?」
「言葉通りだけど……?」
「……?」
彼女は頭を抱えこんだ。
ぼくはシュナと顔を見合わせた。
「ほら、こういうことだけども」
そう彼女に言ってシュナに剣態になってもらうようにお願いする。
シュナは、任せるのじゃ!と快諾してくれたため、すぐにぼくは剣態となったシュナを握り彼女に見せる。
「待った、今何が起こった?」
「それ、ぼくが君が胸のあたりから剣を取り出した時の感想と一緒だよ。これはこういうものとして見た方が多分楽だよ」
「……貴様の神剣はあの少女と言うわけか?」
「そう、そういうことよ」
「……わかった。しかし、少女の姿のまま連れて行くんはお勧めできない」
「なんで?」
少々神妙なお面持ちになってそう言う彼女に、ぼくは疑問をぶつけた。
「前言ったと思うが、神剣士は私以外にもう一人いる。そいつが……なんというか、癖があってな。……ロリコンなんだ」
「は?」
ぼくの顔が凍り付いた。
は?と発声したまま、口を開けたままで。
だって、考えても見てくれ。
ロリコンだぞ?
学生時代のふざけた身内ネタで、こいつロリコンなんだぜ、って言うくらいならわかる。
だって、今そんなこと言っているように見えるか?
増してや彼女が、あの厳格そうでジョークの一つでも言ったら殺すみたいな雰囲気出している彼女が、言うわけないだろう。
これは、ガチのやつだ。
本当にダメなやつの気がする。
「まあ、多分、見せなければ何事も起こらないと思うが……。まあ、注意だけしておいてくれ」
「ああ、分かったよ」
「じゃあ、行くか」
ぼくは困惑しつつそう言う。
納得はしていない。
何とも言えない雰囲気になったまま、ぼくは彼女について歩いていく。
駅から本当に2分ほど歩いたところで、彼女は古い、お世辞にもきれいとは言えないようなビルに入っていった。
もちろんぼくも彼女に続いて入ったが。
階段をしばらく上り、5階ほどに着くと、彼女は扉を開け5階の廊下へと入っていった。
そして、廊下に入ってすぐの部屋に入る。
そこは、いくつかのパソコンがあり、機械があり、例えるなら、軍の指令室的な感じがした。
「連れてきたぞ」
「ああ、すまないな。行かせてしまって」
「別にかまわない。貴様らが行っても警戒されるだけだ。それに、せっかく仲間になってくれるんだ。礼くらいは尽くす」
彼女は部屋に入って早々、ある一人の男に向かってそう言う。
男は大柄で、スーツ姿、パッと見で言うなら大柄なこと以外はどこにでもいるサラリーマンと言った感じだ。
「自己紹介をしよう。私はサトーだ。よろしく」
「ぼくは水尾玲です。よろしくお願いします」
そう言って、ぼくはサトーから差し出された手を握る。
「他の人も紹介しておこう。彼女、美結のことは知っていると思うから省くが、今私達の目の前で機械をいじっている彼女たち、右から、カザミ、スズシロ、ナナホシだ」
彼女らは自分の名前が呼ばれると何も言わずに、こちらを向いてお辞儀をした。
ぼくも小声で聞こえてなかったと思うが、よろしくお願いしますと言ってお辞儀を返した。
だって陰キャだもん、見ず知らずの人と話すだなんて緊張するじゃない……。
「それと、もう一人、君には紹介しなければならない人がいる。美結から話は聞いているかもしれないが、ここにいるもう一人の神剣士だ」
ぼくはその瞬間、何か嫌な予感を察知する。
そして、すぐに彼女の方を見る。
彼女は壁に背を持たれて腕を組み、ぼくと目があっても、さあ、と知らん顔をして事の成り行きを見守っているばかりである。
それを見たぼくは、あ、これホントにダメなやつだ、とそう感じる。
そうこうしている間にも、サトーは事を進めていて、今の指令室的な部屋のさらに奥にある扉にノックをして言った。
「おい、片桐、入るぞ」
そう言ってサトーは扉を開ける。




