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2-12 

 「わちきにも姉妹剣と言う同じ一つの窯の鉄を分けた剣がいるのじゃ。名前は、確かわちきと一緒でなかった気がするな。どこにいるのだか、どんな能力なのか、そういうとは一切わからないのじゃがな?」

 「同じ場所で同じ人に作られたってこと?」

 「おそらくそうじゃな」

 「おそらくってどういうこと?」


 ぼくは思わず質問する。


 「わちき達神剣、それらにはこうやってわちきみたいに意識があるじゃろ?けどな、それは剣が完成してすぐにできるものじゃないのじゃよ。あれじゃよあれ、物を使い続けると出てくるやつみたいな」

 「付喪神?」

 「ん~、それがどんな奴かは知らんのじゃが、まあ、そう言う認識でいいのじゃ。まあ、そう言う感じですぐにできるものじゃないのじゃから、作った人が誰だとか、今まで誰が握ったとか、そう言うことをすべて記憶しているわけじゃないのじゃよ」

 「ん?待って、それだとどうして姉妹剣の存在を知っているんだ?」

 「全く一緒なんじゃよ」

 「一緒?」


 ぼくはシュナの言葉に疑問符を浮かべ、シュナの言葉を繰り返す。


 「造形が全く一緒、強いて言うなら色が違う。それはまあ、その日の気温とかそういう問題じゃろう。それに、打ち合っててわかるのじゃ。これはわちきの姉なのじゃなって。まあ、神聖剣であるわちきが負ける相手ではないがの。たとえそれが同じ鉄であっても、同じ形でっても、わちきの方が偉いのじゃ」

 「なんでさ」

 「そう言う役割だからなのじゃ」


 エッヘンと胸を張るシュナにぼくは素朴な質問をする。

 それに対してシュナは、あっさりとそう答えた。


 「わちきの位は絶対王政、つまりわちきがわちきであるからそれに付随して神聖剣の称号がわちきにつくのじゃ。たとえどんな神剣が、世界を救った、強大な敵を倒した、絶大な力を持った、そういうことをしたとしても、わちきには適わないのじゃ。神聖剣の名は与えられないのじゃ。何をしたではないのじゃ、わちきがわちきであるからなのじゃ。それ以上も以下もないのじゃよ」


 中世ヨーロッパみたいなものか、王と言う席があって、そこに座れるやつは王族でなければならない。

 それが、この場合神聖剣という席に座れるのがシュナという存在だけである。

 そういうことなのだろう。

 ぼくは、自分で理解して一言言おうとする。

 しかし、その言葉の前にシュナが口を開く。


 「まあ、もっとも、主様が死んだ場合はなすすべもないのじゃが……」

 「それはどうして?」


 ぼくは即行でシュナに質問する。


 「簡単な話じゃ。そもそも、剣は使ってもらうもの、あんまり言いたくはないのじゃが、ただの道具じゃ。持ち主がいなかったら戦えんじゃろ?まさか、剣がひとりでに動くなんてことあるわけないじゃろ?」


 ……そう言えばシュナは毎回呼んだら剣態で飛んでこないか?そんな風にぼくは思ったが、まあ、一般論だ。

 この場合のシュナは例外だろう。

 そもそも、神剣は人を鞘にするものらしいで、飛んでくる意味なんてないだろうし、シュナが例外中の例外なだけかもしれない。


 「そこに、神剣の場合は契約というものが入るのじゃよ。それは、神剣と持ち主を結びつけるもので、それに付随して持ち主は神剣の能力を引き出したりできるのじゃ。だから、持ち主が死ぬと契約が切れて能力が使えなくなり無抵抗のまま簡単に捕縛されてしまうのじゃ」

 「なるほどね。だから、最初に会った時契約が云々、『やっぱりやめるだなんて言わせないのじゃ!』とか言っていたわけね」

 「そうじゃそうじゃ、よくわかったかの?それで主様は今後どうするのじゃ?」

 「どうするって、どういう?」

 「それは、明らかに戦争が起こりそうな予感しかないのじゃが……それに対してどうするかじゃ」


 シュナは目を細めてぼくの方を見てそう言う。


 「ん~、まあ、暫定彼女の方につく。といっても、明らかに戦力不足らしいし、勝てるかっていたらなんともらしい。簡単なのは、こちら側の神剣士を増やす、数的不利を巻き返せればいいんだけどうまく行くかどうかは不明だね。まず、そこらへんに神剣士がいるかどうかも不明だし、仲間になると口約束して戦争時に裏切られないとも限らない。どのみち難しい問題だけど、とりあえず彼女の組織に行って話を聞くしかないんじゃないかな~って思う」

 「な、なかなか考えて喋るのじゃな。てっきり、『シュナ~、怖いよ~、一緒に逃げて二人で暮らそう~』とか、言ってくれるのじゃと思ってたのじゃが……」


 シュナは少々困惑したような顔でぼくにそういって来る。

 ああ、これは本気でそう思っていたんだろうなぁ。


 「なにを妄想しているんだよ、さすがにそんなことはしない。第一に妹おいて行けるかって」

 「……わちきは主様と二人きりがいいのじゃ」

 「願望じゃん、実現しないしさせないよ。第一、シュナはそれでいいの?」

 「全然かまわんのじゃ!主様と二人っきり~!!」


 そう言ってシュナは、いきなりぼくに抱き着いてくる。

 しかし、シュナは次の瞬間にはぼくから離れた。


 「どうしたの?」


 今までのデレデレとしたシュナの行動と一風変わったシュナの今の行動にぼくは疑問符を浮かべ、質問する。


 「い、いや、別に何でもないのじゃが……」

 「じゃが……?」

 「その~、傷に触るとまずいからの……あんまり過度なスキンシップもダメかもしれないと思ったのじゃ……」


 そう言って、シュナはちょこんとぼくの上に座って言う。


 「まあ、主な傷は腕とかそこらへんだから、別に抱きつくくらいいけどね。しいて言うなら抱き返せないことくらいかな?問題は」

 「そ、そうなのじゃ⁉な、なら、わちきが抱きつくから主様はわちきをなでなでするのじゃ!」


 そう言って、満面の笑みを浮かべてシュナはぼくに抱き着いてきた。

 結局、この日はゲームの中の世界で、シュナに抱き着かれながらシュナの頭をなでて時間をつぶし、ログアウトせずに一日を過ごした。

 シュナといる時間は、何と言うか、懐かしい気がして……これ以上ない幸せの時間の一つだったかもしれない。


2章がこれで終わりとなります。本日(4/2)の12時にSSを投稿しようかと思いますので、良かったら見ていただけると嬉しいです。好評でしたら、各章終わりにその章に出てきたキャラクターを出したSSを出す(かもしれない)のでよかったらいいね並びにブクマ、評価、していただけると幸いです

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