2-8
チーター?いや、小動物か?それとも犬のような何かだったか?
そのような四足歩行の動物が、彼女に向かって勢いよく接近し彼女に攻撃を加えた。
しかし、彼女はすぐにぼくへの攻撃を中断したため、その動物からの攻撃は彼女に当たらず回避された。
そして彼女は、ぼくへのとどめを刺すのをやめその動物への迎撃に集中する。
「不意ついてもとれねぇか。今は戦争する気はねえよ。まあ、そこの男がオレについてくれんなら話は変わるけどな」
屋上の方からする男の声にぼくは顔を向けるが、彼女は目の前の動物との戦闘で忙しいようで全く話を聞いていないようだった。
男の服装はポケットからじゃらじゃらしたチェーンストラップがついているが、ぼくと同じこの学校の制服だ。
見た目は、髪は茶色交じりで首からメンズネックレス下げて完全に校則違反と言った感じだが……。
「聞いてねえな。従獣の緊急招集。これで話が聞けるだろ」
彼がそう言うと、彼女と戦っていた動物は消え彼の手元に一本の剣が現れる。
剣の見た目は、先端が矢印のような返しが付いたいかにも突攻撃が得意そうで、ガードの部分はⅩ字に二本のガードが交差している。
『剣を獣に変える能力?』
『おそらく、と言っても可能性の話じゃがな』
「貴様何者だ?私に仇成すと言うことがどういうことか教えてやろうか?」
「今はやんねえって、やるんだったらサシじゃやんねえよ。数用意してやるからよ。新撰組戦術よ」
彼がそう言ってニヒヒと笑うのに対して、彼女は怒りを見せるかのように歯ぎしりしているのが見える。
「お前もこっち来るか?オレも敵対するやつは少ない方がいいからよ。まあ、返答によっちゃお前ともやることになるかもしれねえけど」
「あ~、この人倒せる?」
ぼくの方を見てそういう彼に、ぼくは彼女を指さしてそう答える。
「サシじゃやりたくねえな。気乗りしねえ」
「ん~、ぼく今この人倒さないと殺されるんですけど?」
「あ~、今仲間居ねえんだよ。オレ単騎。まあ、見るからに強そうだしやりたくねえってのが本音だな。一旦出るわ、この学校だろ?お前も。来いよ。話くらい乗ってやる」
「ログアウト逃げは卑怯じゃない?」
「死にたくねえんだろ?何でもやれよ。……まあ、お前次第だけど」
そう言って彼は、じゃあなとこちらに手を振ってこちらから見えない屋上の向こう側へ行った。
「……」
さて、どうしようか。
ログアウト逃げするべきか否か……。
そう、ぼくがしばし頭の中でいろいろな考えを張り巡らしていると彼女が話しかけてくる。
ぼくはそれに対し一瞬警戒したが、彼女が剣をおろしているのを見て、ぼくも剣をおろして言葉を返した。
「貴様、やつと手を組むか?」
「ん~、状況次第ですかね?」
「と、言うと?」
「一つは、今ここで君がぼくに対して明確な殺意を表し続けてぼくが交渉の余地なしと判断した場合。もう一つは、君とあの人がやり合ってあの人が勝てそうだと判断した場合。こういう状況」
ぼくはそれを身振り手振りを交えて説明する。
「そうか……仮にだが……——」
そう言って、彼女は私もよく知らないのだが、と補足を付け加えて話始める。
「あいつらが何人規模のグループで、どんな能力者がいて、どれほどの練度のものか、それすらよくわかっていない。ただ、私たちはここに神剣があると聞いてやってきたのだ。どうだ?私と手を組まないか?正直認めたくはないが、剣なしで私とやり合えたのは称賛に値する。——私と手を組めば、命の保証は……できないが、君の願った情報は出そう。それが私の現状出せる最大級の打診案だ」
そう、彼女は言った後、自分の剣を地面に置いた。
「今は少なくともやる気はない。人が欲しい。私だけではやつに勝てないからな」
ぼくはそれを聞いてほっと一息を吐く。
それは緊張の糸が解けたかのように、情けない一息だった。
だが、何にせよぼくの当初の目的は達成した。
交渉、できそうだな。
『主様、どうするのじゃ?こやつの話に乗るのか?さっきまでやり合っていたやつをすぐ信用というのもいささか難儀なものじゃが……』
『まあ、ぼくも様子見かなって思ってるのが現状。でも、彼女を敵に回した状態でさっきの動物を含めたグループとやり合うのはきついかなって』
『まあ、そうじゃの。いざとなったら全部逃げてしまえばいいのじゃ!わちきはどこまでも主様と一緒に行くぞ~』
『まあ、それはなんて頼もしいことだか……』
考えはまとまった。




