1-② 初恋そして
四月十三日。俺が一目惚れした日からちょうど一週間が経った。
あの日から、俺はいつも七時にセットしている目覚まし時計よりも一時間も早く起きてしまう。気分が高揚しているからだ。だからと言って睡眠不足にはなっておらずむしろ目覚めがよく健康的な生活をしているように思う。
恋をしてからというもの、毎日学校に行くのが楽しみで仕方ない。見える世界も一層、色鮮やかに見え今まで見てた世界がモノクロだったのではないかと思うほどだった。
俺はカーテンを勢いよく開け朝の陽ざしを全身で浴びる。太陽が今日も俺を祝福してくれているような。そして今日も彼女に会えると思うとにやけが止まらない。
いや、待って。別に俺はこの一週間で別にストーカーになったわけじゃないよ。確かに今の俺を傍から見たら気持ち悪いけど、本当にストーカーじゃないし、むしろこの一週間で俺の男としての度胸がないことに自分自身で幻滅してしるし...
「おーい朔。起きてるか?」
急に部屋のドアが開き、親父と目が合う。ちなみに俺の顔はにやけたままだ。
「・・・・」
親父は静かに扉を閉める。
最悪な所を最悪な奴に見られた~。
やばいどうしよう。気まずすぎてこの後、朝飯が喉を通る気がしねえよ。
俺は頭を悩ませつつ、制服に着替え重い足取りでリビングへ向かった。親父はすでにテレビのニュース番組を見ながら、朝食をとっているが目を合わせないようそおっと後ろを通り、リビングの隅に置かれた母の写真に手を合わせた。
母さん、朝からクソ親父と気まずいことになったんだけど、どうしよう。とりあえず今、真後ろから一発蹴り飛ばしたらいいかな。
そう母に尋ねるがもちろん返事は返ってくることはない。それでもいつもの癖で母に今さっきの出来事を報告する。
自分の中で答えが出たわけじゃないが、親父の向かいの席に座る。
空気が重たい。普段からそんなに会話をすることはないが、いつも以上に空気が重い。動揺からか目玉焼きにかける醤油の量が馬鹿みたいに出てたはずなのに。味を感じれないほどに俺の中で動揺している。
「朔。お前醤油かけすぎだろ」
親父が不思議がって先に口を開いた。しかし俺には返事を返せる気がしない。それを察してか親父は軽く咳払いをする。
そうそのまま、俺のことはとりあえず放っておいて...
「ところでさっきのお前。ちょっと気持ち悪かったぞ」
笑いながら先ほどの出来事を掘り返す。
そうだ。俺の父親は空気なんて読めないんだった。俺は軽く涙が流れる。
だがそんな親父の笑う姿に悩んでた自分が馬鹿馬鹿しくなった。
「別に親父には関係ないだろ」
すると親父は少し間を開けて。
「まあそれもそうだな」
また笑いだすので、俺も自然と笑っていた。そこから学校は楽しいか、などとありふれた親子の会話を交わしながら朝飯を食べた。
気づけばすでに時計の針は八時を指していた。急いで荷物をまとめ、玄関で靴を履いていると親父に呼び止められた。
「朔。今日の夜、大事な話がある」
親父の顔はいつもより真剣な顔をしていた。本当に大事な話なんだろう。
「わかった」
俺は笑顔で答え。行ってきますと告げ家を出た。