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デリ嬢を好きになれますか?  作者: ごっちゃん
番外編
34/43

番外編 3

少し長めの読み切り版です


2019年2月13日


 それは朝出勤してきた俺・後嶋龍太(ごしまりょうた)山崎卓郎(やまざきたくろう)に佐藤と三村の4人で始業前の時間を休憩室兼ロッカールームで会話をしてた時のことである。


「ロリ巨乳って、良いと思わないか? お前ら」

「「「………………」」」


 唐突な三村の阿保発言で黙り込む俺、卓郎、佐藤の3人。こいつは朝から何言ってんだ?

 椅子に座り腕を組んで三村はさらに続ける。


「幼さの中に大人のエロさがあるんなんて最高じゃねぇか」


 やたら真顔の三村を見てから俺達は無視して各々スマホを弄り始める。


「無視すんなぁぁぁぁ!!!」


 喚き始める三村。

 こいつは基本オシャレ好きで、仕事なのに香水なんか付けて服装も革のジャケットに白シャツにネックレス着けてダメージジーンズ履いて来てくる奴だ。まぁ身長無いけど。

 そんなナルシスト気味の三村が自分の新たに目覚めた性癖を朝っぱらから暴露するとかどうしたんだ?


「急にどうした?」


 卓郎は渋々三村の相手をしだす。


「俺は気づいた」

「何に?」

「俺にはお姉さん系は不釣り合いだったことに!」


 三村の奴、クリスマス合コンの時の事まだ引きずってたのか………。

 12月24日、この場にいる俺達4人はクリスマスの日に卓郎幹事の合コンに出席した。相手は、俺が食材や包装などの物資の運搬先である地下の食品コーナーのスイーツ店Bに務める女性陣達。相手側の幹事であるさきちゃんといのりちゃんにドタキャンで人数合わせの為参加したフロアリーダーの乾さんと藍原千歳あいはらちとせの4人。

 その合コンで三村は乾さんに酔った勢いで連絡先をゲットしようとしたが、乾さんは『友人』としての付き合いなら交換してくれると言った。

 当然、三村の目的は『友人』ではなく『恋人』目的だったわけで、最初から念を押されていた三村へ更に乾さんは「その気があったのなら、ごめんなさい………」と追い討ちをかけ見事玉砕した。


「三村君、低身長だから乾さんとじゃ並んで歩けないよね」


 そんな三村に現実を再認識させるような台詞を吐く佐藤。言うてお前も藍原とまともに会話出来なかっただろ。


「黙れアニメヲタク! 俺は学習した。身の丈に合った女の子と付き合うってなぁ!」


 身長だけに?


「それで? そのロリ巨乳女子はどこの誰なんだ?」


 卓郎は話の本題に促す。


「それなんだがな、この前地下の食品フロアに運搬しに行った時見つけちまったんだ。その店のレジで客の対応している彼女をーーー」


 だから誰なんだよ。


「合コンで幹事をしてくれたあの子。さきちゃんだよ!」

「「「……………」」」

「なんで黙るんだよ!」


 正直に言うと、合コンの時点でさきちゃんがロリ巨乳なる存在であることは周知であった。唯一知らないのが三村だけなのは、あの場で悪酔いした挙句先走って乾さんに連絡先を聞き出そうとして勝手に沈没したのは三村自信。卓郎と佐藤に介護されてる姿はみっともなかったなぁ。


「あの子が童顔で低身長で胸が大きい事を知らないのお前だけだぞ」


 卓郎は三村に悲惨な現実を確認させる。


「え? マジ?」

「あぁ。なぁ龍太りょうちん

「誰から見たってわかるけどな」


 店舗スタッフの制服姿だと尚更わかると思うけどな。特に胸の辺り。


「くっそぉぉぉぉぉッ! ちなみに何カップだ」


 俺は流石にそこまで知らないぞ。


「見た感じDかEはあるかもな。実際はどうだが分からんが」


 卓郎も予想を言うだけで、確実なカップ数まではわからないらしい。


「充分だぜ。あの胸で色々されたらたまんねぇな!」


 こいつキモいな。


「で結局お前はどうしたいんだよ」


 卓郎よ、この話題閉めてくれてもいいんだけど………。


「お前ら、明日は何の日か知っているか?」


 三村の質問に俺達は顔を見合わせる。


「バレンタインだろ?」


 俺が明確な正解を口にする。

 明日14日はバレンタインデーの日。女の子が気になる相手にチョコを渡すのは勿論、日頃お世話になっている人や職場に感謝として渡したりすることも主流になってきている。いわゆる義理チョコって奴だ。


「その通りだ」

「それで?」

「あの子からチョコが欲しい」


 合コンの時に接点を作れなかった時点で無理だろ。


「だから、告る!」

「「「いやなんでたよッ!!」」」


 どうしてそうなるッ!


「あの子フリーなんだろ? じゃあ告っても問題無いよな」


 まぁ、それは問題無いが………。


「そこでだ。後嶋に頼みがある」

「嫌だ」

「まだ何も言ってないぞ!」


 だってこの流れで頼み事とか絶対碌でも無いじゃん。まぁ、同僚のよしみで一応聞いてやるか。


「で?」

「後嶋って担当してるフロア地下だよな? 通りがかった時にさきちゃんをある場所に来てほしいって伝えてくれないか?」

「それくらい自分で言えよ」

「だって、周りから見られたら恥ずかしいだろ」


あーもうめどくせぇ。


「頼むよぉ!」


 三村は手を合わせて頭を下げる。こんな奴がアプローチしても絶対成功しないのは予測できる。一度地に落ちて自分を見つめ直させるか。


「わかったよ。言っておく」

「サンキュー後嶋!」


 はしゃぐ三村を見て俺は溜め息を吐く。

 時刻はもうすぐ始業開始になる時間まで来た。俺達は私物をロッカーにしまい休憩室を後にする。



同日17時


 遂にこの時間がやってきた。

 俺は今日も担当する地下フロアの運搬をしていた。その時に通りがかった際、店舗のレジにいたさきちゃんに、


「さきちゃん、今大丈夫?」

「後嶋さん、どうしました?」

「今日何時にあがる?」

「17時前にはあがりますけど、何か私に用ですか?」

「あー……えっとー……、合コンの時にいた三村て覚えてる?」

「はい、覚えてますよ」

「そいつがさ、さきちゃんに話があるらしくてなぁ。仕事終わった後に3階のフードテラス来て欲しいんだけど………。勿論、断ってくれてもーーー」

「いいですよ」

「えっ!? いいの?」

「はい。いいですよ?」


特に詳しい詳細を伝えるわけでもないのに何故かOKが出た。

 今日は俺も自校で受ける科目は無く、技能教習も2月に入ってから時間が取れない。高校生や大学生が冬休みを利用して合宿で免許を取りくる奴らが多いせいだ。

 時間を持て余している俺以外にも卓郎と佐藤は、このくだらない事態を見届けるために3階のフードコートの遠い席からテラス席を隠れるように見ている。外も暗くなりもうすぐテラスが閉まってしまうが三村はテラス席で座って待っている。周囲の客も少なく、時間的にも夕食を食べようと4階の飲食店フロアに集中してることだろう。

 俺達は1つのテーブルを男3人で囲んでいると、


「来たぞ!」


卓郎がエスカレーターの方から私服で歩いて来るさきちゃんの姿を確認した。

 俺達は頭を下げてバレないように通り過ぎるのを確認してからテラスの方を見る。さきちゃんは三村に挨拶をして2人でテラス席に座る。普段は藍原と座るあのテラス席を遠目から見るのは不思議な感じがした。

 しばらく見てた感じ仲睦まじく会話をしている三村とさきちゃん。おかしいなぁ………。すぐに玉砕して落ち込む三村を励ます展開のはずだったんだがなぁ。


「なんでいい感じなんだよ」

「もしかしてもしかしなくても付き合い始ちゃうんじゃ?」


 卓郎も佐藤も予想しなかった展開に動揺を隠せないでいる。

 そんな俺達は周りの目を気にせず2人を見ていると、


「何してるの?」


背後に超絶美女の藍原千歳あいはらちとせが不審者を見るような顔で立っていた。


「あいはーーーーーー」

「藍原さんッ!!! んぐっ!」


 藍原に過剰反応する佐藤の口を卓郎が抑える。声でけぇよ。


「なんでここにいるんだよ」

「休憩よ」


 藍原は上に来ているコートの襟を捲り制服を見せる。


「あなた達こそ何してるの?」

「あー………。説明めんどくさいからあれ見ろ」


 俺はテラス席の方へ視線を向ける。


「そういうことね。除き見はほどほどにしなさいよ」


 すぐに状況を理解しそう言って藍原はファーストフード店の方へ歩いて行ってしまった。まぁ藍原の忠告もごもっともなわけで、上手くいっているならもうこれ以上除き見する必要もない。

 三村はさきちゃんからいよいよチョコのような包みまで受け取っている。1日早い気がするが、望み通りチョコも貰えたことで俺達が茶々入れるのも無粋なのだ。

 さきちゃんは渡す物を渡して上機嫌でこのフードコートを去っていった。俺達は見つからないように通り過ぎる際に再び頭を下げて、通過したのを確認し席から立ち上がる。


「卓郎、佐藤。俺達も帰るか」

「そうだな」

「明日来たら素直に祝ってあげようじゃないか」


 俺達は互いに顔を合わせて他人事だが、この吉報を素直に受けることにした。

 と、ここで幕を閉じるとこの場にいる俺達3人は当然思い込むわけだが、現実はやはり厳しかった。

 三村は俺達の方へ無言かつ早歩きで近づいて来る。


「おい」

「どうした三村」


 無言で黙ったまま三村はチョコの包みを卓郎に差し出す。

 卓郎は不思議そうに受け取り三村に尋ねる。


「なんだよこれ」

「お前に渡してくれって言われた」


えっ?


「明日休みなんだってさ。だから、代わりに渡してくれって………」


ど、どういうことだ………。


「初めから断るつもりだったらしい………。しかも、いつも連んでいる俺にチョコを渡してもらおうと思ってたんだってさ」

「いや、さっきまで楽しそうに話してただろ!」

「見てたのかよ……。あれは合コンの時の山崎の話だっただけで、俺は話にあわしてただけだ」


えぇ………。

 つまり、さきちゃんは卓郎に気があるということか。


「あんまりだ………」


 三村はふらふらと俺に近づいて両腕を掴み、


「そ"ん"な"の"って"あ"ん"ま"り"た"ぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!」


ぐしゃぐしゃな泣き顔で喚いた。

 俺と卓郎と佐藤はあんまりにも悲惨でかける言葉が見つからない。

 ただ言える事はーーー


「飲みに行くか」


酒で忘れさせるように飲みに誘うくらいだった。

 そして俺達は落ち込む三村を筆頭に居酒屋で晩酌をし、三村は溺れるように酔い潰れた後卓郎と佐藤にまた介護されながら帰宅したそうだ。結局、現実は酷という話だ。


2019年2月14日


翌日。

 出勤してきた俺は休憩室兼ロッカー室で昨日の出来事を忘れたかのように髪を弄りながら自撮りする三村を見た。昨晩の酒で全て洗い流した感じのようだ。

 さきちゃんに昨日の件で三村の何が駄目なのか聞いたところ、


「香水がキツいですね。あと、ナルシストなのがちょっと………。それに、あの人私の胸ばっか見てたし………」


もはや三村自信を全否定だった。ていうか、三村の奴胸ばっか見てたのか。救いようが無いぞ。

 ついでに俺のバレンタインデーは、洟村千織はなむらちおりからLINEで『ホワイトデーに渡します』とメッセージが来ていた。いや普通逆じゃね?

 そして職場では乾さんから仕事面で感謝してるということで帰りに義理チョコを貰った。その後は自校から家に戻ると玄関のドアノブに紙袋がぶら下がっており中には藍原から『義理だから』と書かれたレターカードと包装された手作りショコラケーキが2切れ入っていた。俺は来月のホワイトデーはこのチョコをくれた2人にしっかりお返ししようと誓ったのだった。



番外編 3 完

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