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デリ嬢を好きになれますか?  作者: ごっちゃん
二章 理想で初恋
33/43

エピローグ

これで二章は終わりになります

2019年1月26日


 洟村千織はなむらちおりは、静岡での車の合宿免許取得から戻ってきて、先日に地元である名古屋の運転免許センターで試験に挑み見事合格した。合格したとはいえまだすぐに車を購入した訳ではなく、高校を卒業してから進学先である静岡に引っ越してから購入しようとお世話になっている叔父・叔母夫婦と決めた。

 千織は合宿先である出会いがあった。それは初恋の人物であり、澱んだ思考に堕ちてしまっていた自分を正してくれた人でもあった。その人の言動でかつて元彼だった同級生の緑谷にした事を帰ってきた翌日学校で謝罪をした。

 付き合っていた当時の千織と今の千織とでは容姿が全然違い、久々に話をした際に彼は千織の髪型に驚愕していた。名古屋でのデートの事で、千織はナンパしてきた男達について行った理由もその理由のきっかけも全て話した。

 千織は責められるとばかりに身構えていたが、


「あの事がきっかけで、もう少し意思を強く持とうって思えた。だから大丈夫。過ぎた事だし気にしないで」


彼は落ち込んでも自分自身強くなろうと前向きだった。

 千織は少し申し訳ない気持ちになりながらも自分自信を改めて行こうと再認識した。

 そして今日は、久々に母親に会いに行く約束がある。あれから体調も精神も回復し、娘に会いたいと母親から連絡が来た。千織も最近の近況で話したい事もあって了承した。

 母親は現在祖父母の家、つまり実家で退院してから2年間療養生活を送っていた。叔父叔母の家に引き取られてから一度会いに行ったが、その時はまだまともに会話できる状態ではなかった。正月は大学の2次試験の予習や自校の手続きの準備で忙しく祖父母の家に行けなかったのもあり、母親に会うの2年ぶりとなる。

 今は隣に叔母を乗せて千織の運転で名古屋から少し離れた春日井という町に向かっている。


「どう? 運転は」

「緊張してるけど、それよりもお母さんとやっと喋れるから何話そうか考えてるかな」

「そこは初運転なんだから集中しなさい」

「ちゃんと集中してるよぉ」


 移動中は叔母のアシストで危険な事態は起きず祖父母の家に着いた。移動時間は大体4、50分で都会の名古屋と比べると春日井は普通の住宅街だ。

 一戸建ての庭に車を止めて玄関のチャイムを鳴らすと、祖母が玄関を開けて出迎えてくれた。


「いらっしゃい。千織は『あけましておめでとう』かな」

「そうなるね。あけましておめでとうございます」

「はい、あけましておめでとう」

「お母さん、姉さんは?」

「2階にいるはずだよ」

「千織ちゃんは姉さんのとこに、私はお母さんと話してるから」

「うん」


 千織は靴を脱いで上がりそのまま2階へ上がっていく。2階の通路の奥の部屋の前で深呼吸をして扉をノックする。


「どうぞ」


 聞き覚えある優しい声。

 千織は部屋のドアノブを捻り飛び出してをゆっくり開く。


「お母さん?」

「久しぶりね、千織」


 ベッドに座る母親は入院してた当初と打って変わり、顔つきはもちろん体の肉付きも元に戻っていた。


「よかったぁ、元気になったんだね」

「心配かけてごめんね」

「うんうん。私は大丈夫」


 千織は母親と抱擁を交わし、事件が起きる前の記憶がフラッシュバックしてくる。何も変わらない、やつれていない健康な体。千織にとって懐かしい感触だった。


「千織、あのね……」

「ん?」

「千織には黙ってたんだけどーーー」


 口籠る母親が何か言おうとした時、


「千織?」


背後から聞き覚えのある声がした。

 千織はその声のする背後に振り返ると2年ぶりに再開する父親の姿があった。あの頃と髪型は同じだが、顔つきや体つきが全然違う。2年前は細い体つきが今では所々に筋肉が付き逞しく見えた。


「お父………さん……」

「久しぶりだな」


 少し躊躇いながら部屋に入ってくる父親を見た母親は「入ってきて大丈夫よ」と促す。


「ど、どうしてお父さんが?」

「………実はーーー」


 父親が喋るのを母親が掌を出して静止させる。


「私から話すわ」


 千織は2人の顔を交互に見ながら困惑する。


「千織、良く聞いて。私達、再婚することになったの」

「……………」


 突然の吉報で千織は反応が遅れ、


「ええぇぇぇッ!!?」


と家中に驚く声が響いた。

 唖然としながら「えっ!? えっ!?」と再度2人の顔を見る。


「急で驚いただろ。今日千織が来るて聞いたから話そうと思ってな」

「言うの遅くなってごめんね。あの事もあって千織、お父さんのこと嫌いだと思っていたから………」


 千織は別に父親を嫌いになったわけではない。ただ、家族をーーー母親をこの先守ってくれる大きな存在になれるかどうか試した。その結果が悪い方向へ促されてしまっただけだった。


「離婚して、自分の不甲斐無さに落ち込んで、仕事も私生活しばらく上手く行かなくてな………。でも、落ち込んでても前に進む事は出来ないから、もう一度自分自身を見直して再婚したいと思ったんだ」


 父親の決意の言葉を聞いた時、千織はある記憶がフラッシュバックした。


『元彼も君のお父さんも悔やんで前に進もうとしたはずだよ。そこをちゃんと見てれば考えも変わったかもしれない』


 初恋の人に言われた言葉が自分の胸の中を熱くし、徐々に涙が込み上げてきた。

 だが、今は泣かないと目の端に浮かんだ涙を払い我慢をする。


「この人ったら『次は何があっても家族を守る!』て言って、去年から護身術習いに道場に通ってたんだって」


 母親はくすくすと笑いながら千織の知らないこれまでの父親の経緯を話す。


「そうなんだ………」


 体つきが前よりもしっかりしてるのはそれだと千織は理解できた。


「千織、再婚したらもう一度3人で暮らさないか? 前みたいな家で暮らすのはまだ無理だが、アパートを借りて三人でーーーーーー」

「ごめんね、お父さん。私、4月から進学先で1人暮らしするって決めてるから」

「そ、そうか………」

「駄目よ。千織には将来があるんだから」


 懐かしい心地良さだった。事件が起きてバラバラになるまで当たり前だった家族でいた心地良さが千織にとって懐かしく感じた。

 だから独立するまでこの時間、この一時を大事にすることで全員が前へ進んで行く大きな一歩となる。


「私、お父さんに謝りたい。お母さんにこれまでのことを話したい。それからーーーーーー私に変わるきっかけをくれた人のことを」

「聞かせて。私達の知らない時間を過ごした千織のことをーーーーーー」


 この日、一日中千織達は長い時間をーーーーーー久しぶりの家族の時間を尽きない話題で過ごした。



エピローグ 完

次回は番外編です ギャグ回です

温度差に注意

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― 新着の感想 ―
[一言] めっちゃええ話で終わった…と思った次の瞬間にあとがきの次ギャグ回ですでほぼ持ってかれたw
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