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デリ嬢を好きになれますか?  作者: ごっちゃん
二章 理想で初恋
27/43

理想で初恋 6 前編

この回は多少の鬱展開があります。苦手な方は「戻る」を推奨します

ーーー4年前


 洟村千織はなむらちおり15歳。

 一戸建てに住むごく普通の家庭。父親と母親と愛知県に三人暮らしをしていた。

 父親も母親も明るく優しい暖かい家庭で生活し成長してきた。

 そんな洟村千織に何があったのかーーー。



2015年5月


 ゴールデンウィーク真っ只中の昼下がり、で動画を見ていた千織は、母親から呼ばれ2階の自室から1階の居間に降りてくる。

 外で洗濯物を干す母親に呼ばれた千織は庭に出る。


「何? お母さん」

「最近、近くにケーキ屋さんがオープンしたからお父さんと買ってきて」

「ケーキ屋さん……テレビで紹介してた?」

「そう!」


 テレビで近所にケーキ屋がオープンしたと朝の情報番組で紹介されていたのを見た母親が食べたいと言っていたことを思い出す千織。開店前からかなりの行列ができるため午前中から行かないと買えないと近所でも噂になるくらいだ。


「あなたぁ、千織とケーキ買ってきてくれるかしら?」


 車庫で愛車の洗車をしていた父親が庭に来る。


「どこのケーキ屋さん?」

「最近、近所にオープンしたケーキ屋さん。ほら、今朝テレビで紹介されてた」

「あぁ!」

「一度食べてみたくって」

「わかったよ。千織、天気も良いし歩いて行こうか」


 千織は「いいよ」と返事をして、父親と共に家を出た。

 2人で玄関を出ると近所のおばさん達が世間話をしていて、こちらに気づいて挨拶してくる。


「あら〜、洟村さんこんにちは」

「こんにちは」

「千織ちゃんもこんにちは」

「こんにちは」


 洟村家の周辺に住む主婦達はよく集まり世間話をしているのを見る。

 千織は朝の登校する時に挨拶をしている。


「2人でお出かけですか?」

「最近出来たケーキ屋さんまで2人で」

「あぁ! あの行列の出来るーーー」


 父親が主婦達と会話をする。

 新しくオープンしたケーキ屋は近所でも相当の認知度だ。


「売り切れるの早いから早く行った方がいいですよ」

「そうそう」

「わかりました。行こうか千織」

「うん」


 主婦達に挨拶しケーキ屋へ向かおうとすると、


「あ、洟村さん!」


 主婦達の1人、噂好きのおばさんが呼び止める。


「最近、近所に強姦魔が出たって噂になってるのよ。戸締りちゃんとしといた方がいいですよ」

「………、わかりました」


 千織達は忠告を受け、さすがに大丈夫だろうと思いケーキ屋へ足を進めた。


 3日前からテレビや回覧板で強姦魔の出没が話題になっていた。被害は千織達が住むこの近辺で、犯人は捕まらず逃走中の事らしい。学校でも噂になっていて、ホームルームで担任から気をつけるようにと注意喚起を受けている。

 ケーキ屋への道中、


「早く捕まるといいね」


と強姦魔について話しながら目的地のケーキ屋に到着した。

 お店の前は7組ぐらいの人で列が出来ていて、千織達は並んだがお店に入れてたのは30分くらいかかった。

 店内のショーケースには1番人気のチーズケーキは無くなっていて、他の商品も残りワンカットぐらいしか残っていなかった。

 結局買った商品は、ショコラケーキと苺ケーキの2カットのみになってしまい、1番人気のチーズケーキは買えなかった。


「あーあ、結局2切れしか買えなかったね」

「仕方ないさ。他のお客さんもいたから。お父さんはいいからお母さんと2人で食べなよ」

「いいの?」

「構わないさ。お父さんはコンビニスイーツで我慢するよ」


 歩いて来た道を戻りつつ、コンビニで買い物をしてから帰路につく。玄関のドアノブに手をかける前に庭の方に視線を送ると干し途中の洗濯物籠が倒れている事に気づいた。


(お母さんが途中で投げ出すなんて、珍しい……)


 玄関を開けて家の中に入ると、千織はどこか冷め切ったような空気が家の中から伝わるのを感じた。


「ただいまぁ」


 リビングに入ると、母親はいないのにテレビがつけっぱなしになっていた。庭の窓も開けっ放しでいなくなるなんて自分の母親にしては珍しい行動歴だ。


「お皿にケーキ移してるからお母さん呼んできな」

「うん。わかった」


 千織は、母親を探すため最初に洗面所を覗くが母親の姿はなかった。

 次に2階の寝室へ向かう。1階にいないなら2階しかないと思った千織は階段を上がり、奥の寝室へ行こうとするが………。


(………お母さん?)


 2階の通路からいつもと違う雰囲気が漂ってくる。

 千織が寝室へ向かおうと足を動かそうとした時だった。


「ーーーーーー」


 寝室の方から微かな唸り声が聞こえてきた。


「ーーーッ!」


 千織は恐る恐る寝室の方まで歩き、室内を覗くと、



「ハァ………ハァ………」


「んーーーんーーー」



ベッドに頭部をマスクで隠した男性に口と右手を押さえつけられ上にのし掛かられている母親の姿がそこにあった。


「ーーーーーー!!!」


 衝撃的な光景に恐怖と動揺で脚がすくみ、その場に尻餅をついた。


「ッ!!!」


 千織が大きな音を立てた事でマスクの男が千織に気づく。同時に、


「どうした千織!」


様子を見に父親も2階の寝室を見に来た。


「お父さん! お母さんがッ!!」


 寝室内を見た父親も驚愕しマスクをかぶった男に問う。


「誰だ……お前………」


 その瞬間、マスクの男と目が合い、父親はこれまでにないくらいの恐怖と動揺に襲われた。

 マスクをかぶった男の眼は血走っていて、何か下手な事をすれば自分が危険に遭うと感じた父親は、


「お父さん………?」


「ーーーーーー!!!」


「待って! お父さん!!」


その場から逃亡した。

 目の前で起きている最悪の現実をどう対処すれば良いかわからない千織は、その場で動けなくなってしまっている。

 だが、


「千織ッ!! 逃げなさい!!!」


母親は必死に抵抗し口元を抑えつけられた手をどうにか剥がし、千織をこの場から逃そうと促す。

 母親の叫ぶ声に強張った身体が動くようになり、思考もある程度回るようになる。

 千織は急いでこの場から離れる。走って玄関を出た千織は靴を履く事も忘れ、ケーキ屋へ買いに行く途中に声をかけてきた近所のおばさんの家へ行きインターホンを急いで鳴らす。


「はぁい、どちら様ですかーーー千織ちゃん!?」


 玄関の扉を開けたおばさんに千織はしがみ付き、


「お母さんが!! ハァ……襲われてて、ハァ……警察を、呼んでください!!!」


 泣きながら息を切らししがみ付く千織を見た近所のおばさんは、ただ事ではないと悟り急いで家の電話で110番通報をした。


 通報してから10分で警察が洟村家に到着、現場に乗り込んだ警察と共に千織は母親が襲われていた寝室に再度足を運んぶ。

 そこで目にした光景はーーーーーー無惨にも顔中痣だらけで、辺りに着ていた衣類が散乱し、下着姿でベッドに倒れ放心状態の母親の姿だった。

 その後、救急車両が到着し母親は病院に運ばれ、千織も靴を履かずに外に出たためボロボロになった両足を到着した救急隊に手当てしてもらった。


 翌日、この事件はメディアや報道番組などで全国的に報道され、千織はさらに辛い現状と向き合う事となる。



理想で初恋 6 前編 完

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