捜索
『久保の談話』
そりゃ驚いたよ。
久しぶりに電話をしてきたと思ったら挨拶も無しで『板垣はどうしてる』なんて言うんだから。
西川と最後に会ったのはアイツが就職で東京に行く直前だったから5年くらい前かな。
高校・大学と仲が良かったけど僕は地元で教師、アイツは東京で会社員になったから、なかなか会う時間を作れなくてね。
懐かしい友達からの電話に元気かって聞いたら『入院してる』って言うじゃないか。
心配して『怪我と病気どっちだ』って聞いたら『そんなことより板垣の消息を教えてくれ』って。
板垣あゆみってのはさ、僕や西川と同級生だった女の子なんだ。
美人ではなかったけど、愛嬌があって人気だったね。
僕もちょっと好きだったし。
でも流石に今の消息までは知らなかったよ。
同じ町内ならそれとなく話も伝わってくるけど、板垣あゆみは隣町からウチの高校に通ってたしね。
それにね、男で板垣あゆみと一番仲が良かったのは西川だったんだ。
本人達は否定してたけど、付き合ってるなんて噂も一時期流れたしね。
だから『西川が知らないなら男で分かるやつはいないんじゃないの?』って切り返したんだ。
そしたら西川はしばらく黙ってから『消息を調べてみてくれないか』って。
まぁ学校はまだ冬休みだったし、特にやることも無かったからね。
割りと気軽にOKしたよ。
できることなら僕も板垣あゆみに会いたかったから。
『レストラン店長の話』
板垣あゆみですか?
確かに何年か前までうちで働いてましたよ。
正確には3年前までかな。
辞めた経緯ですか?
なんでも東京に行くとかなんとか。
いや、辞めた理由はそれだけじゃないんですけどね。
実はここだけの話、彼女うちの料理長と折り合いが悪くなっちゃって.......。
仕事はまぁできた方なんだけど、何故か料理長から目の敵にされてましたから。
キッチンとホールの折り合いが上手く噛み合わないのはこの業界の共通の悩みですが、料理長は何故か彼女には怒鳴ってばかりでしたね。
店長の私が間に入って上手く庇ってあげられたらよかったんでしょうが、あの頃は私も店長に昇格したばかりでいっぱいいっぱいでしたから.......
今更何を言っても言い訳にしかなりませんが、周りを見る余裕に欠けていたんです。
彼女ね、僕の所に退職届を持ってきて静かに去っていきました。
今ならもっと働きやすい環境を用意してあげられるのに。
彼女には本当にすまないことをしたと思っています。
東京の所在ですか?
流石にそこまではちょっと。
元気にしてくれればいいんですが.......




