指切り
『外科医 高松の述懐』
我々が西川さんの異常を発見したのは四回目の手術から数日後のことでした。
発見者は包帯を交換するために病室に入った看護師です。
彼女が最初に見たものは、ベッドと床にまで流れ出た夥しい量の血でした。
傷口が開いてしまったと判断して駆け寄ったそうですが、患部の包帯には血液は付着しておりませんでした。
結論から申しますと、西川さんは自分てま自分の右手小指を噛みちぎってしまったのです。
きっと度重なる原因不明の手術に錯乱してしまったのでしょう。
指は元には戻りませんでした。
通常切断面がある程度綺麗ならば繋げることもできなくはないのですが、西川さんは噛みちぎった自分の小指をグチャグチャに噛み砕いてしまいましたので.............
西川さんは気絶していたので失血死寸前でしたが、際どい所で命だけは助かりました。
ただその.......
目が覚めた西川さんは、もう以前の西川さんではありませんでした。
今は当院の精神科病棟に入院しております。
恐らく退院して単身で通常の生活に戻ることはないでしょう。
医者として誠に残念な結果です。
ただ一つ
それ以来、西川さんの胃の中に針が出現することは一度もありません。
それだけが唯一の救いです。
最初から最後まで何一つ理解できないケースでした。
なぜ胃の中に裁縫針が出現するのか?
なぜ唐突に出現しなくなったのか?
未だに全く分からないのです。
『西川の病室前』
部屋の中からかすれた歌声かま聴こえる。
指切りげんまん
嘘ついたら針千本
飲ます
指切った




