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七色のドラゴン  作者: 雲の糸
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雷と風

 なんでこんなことに…

 いきなり戦うなんて無理なんですけど…

 学園来たのも今日が初めてだし…

 相変わらず目は怖いし…

 やっぱりここから逃げるしか…、

 


 ニコラは今ホウレイ学園の施設の一つ無色闘技場の中にいる。

 闘技場には無色の他に赤・青・黄といった七大魔法色それぞれの色の種類がある。

 

 それぞれの色のの闘技場には、その色の魔法の力が闘技場の中に備わっている。


 例えば赤色闘技場の場合、赤色の魔法つまり”火”が闘技場の中に現れるのである。青色魔法の”水”使いなら大した問題ではないかもしれないが、火が苦手な緑色の”木”使いだとそれだけで大変不利な状態となってしまう。


 つまり無色闘技場は、闘技場の中に特に魔法色の力が何もないため魔導師たちの素の力がそのまま競われる場ということになる。


 エレンは闘技場の真ん中らへんに堂々と仁王立ちしている。全身には雷がビリビリといっていて、怖さが増している。ニコラの後ろにいるシーカは身を縮ませながらエレンの方を見つめている。そっとシーカがニコラの背中に軽く触れ何か小言を言ったが、ニコラは全く気付いていない。


 ニコラは頭が真っ白になっている。なぜならエレンの顔は真剣そのものであり、お遊びな感じで魔法を披露するといった感じでは全くない。今からモンスターを討伐しに行くかのような重たい雰囲気を醸し出している。そして口を開き、


 「よし、それでは行くぞ。お前の魔法の力、試させてもらう。ラ・トネール!」

 

 と言い右手を前方に構えた。するとその手の周りに雷が現れ出し、視線をニコラの方に向けた。


 「トネール・フレッシュ!」


 そして声を発すると同時に雷の力が集まっている右手をニコラに向けて振りかざした。

 雷がエレンの右手を離れ、雷が矢のような形になりそのままニコラへと向かっていく。

 

 「うわっ!」


 ニコラはエレンの放った雷をよけようと咄嗟に横に身を投げ出し、地面に倒れこんだ。間一髪のところでぎりぎりよけることはできたが、まだ倒れたままのニコラに容赦なくエレンは続いて魔法を繰り出してくる。いつの間にか右手にだけ現れていた雷が左手の方にも同じようになっていて、両手に雷が生じていた。


 「トネール・フレッシュ!!」


 さっき放ったのと同じものを今度は二つ同時にニコラめがけて放ってきた。ニコラはまだ体勢が整っていないためよけることはできない。二本の雷の矢はもうニコラの目の前まで迫ってきていて、とっさに目をつぶり両手を顔の前に出すことしかできなかった。


 そのまま雷の矢はニコラに直接当たった、そのはずである。しかし、ニコラは特に何も感じていない。


 魔法の攻撃を受けたことがないニコラであったが、目の前の雷の魔法を受けたらかなり痛いに違いないと思っていた。恐る恐る目を開け自分の身体を確認する。だが実際何ともなく、エレンが当たっても大したことない程度の魔法を使ってくれたんだと思った。


 そりゃあそうだよな。いきなりガチの魔法使ってきたら危ないもんな。そんなことしたら大ごとになってしまうだろう。


 エレンさん、見た目はおっかなそうに見えるけど中身はちゃんとしっかりしている人でよかったよかった。ニコラがホッと安心して洋服をはたきながら起き上がった。その時、ニコラはある異変に気が付いた。


 ニコラの身体の周りに風が集まっている感じがする。いや正確に言うとニコラの身体を覆うように、風が吹いている。



 「なんだこれ?」


 「それはシーカの、風魔法だな?」


 「え?」


 何が何だか分からずシーカの方を振り向く。エレンもシーカの方を見つめている。

 その視線の先にいるシーカはゆっくりと歩きだし、ニコラの側まで近づいてきた。


 「そ、そうです。心配でさっきニコラさんの身体にエレンさんの攻撃が当たりそうなとき、その攻撃から身を守れるように風の防御の魔法をかけておきました…」


 「いつの間に…。そうだったのか、シーカさん。それはありがとうございます。え、ちなみにもしシーカさんが何もせずエレンさんの攻撃を普通に受けていたらどうなっていましたか?」 


 「えっとえっと、多分普通に気絶していたと思います」


 エレンさん!見た目通りおっかない人だった!せっかく中身はまともな人だと思って安心していたのに、速攻で裏切られた気分!


 「シーカ、邪魔をするな。これは私が新入生の力を見るためのものだ。余計な手出しはするな」


 「で、でも。まだろくに魔法を勉強していないのにいきなり魔法の力を見るって言っても無茶だと思います…」


 「そんなことは承知の上だ。しかし白色の、しかも竜魔導師だと聞いては早めに実力を試すことは必要なことだ」


 「そ。それはそうですけど…。でも初日じゃなくても…。」


 「分かった、ならばシーカも同時に相手にするとしよう。その新入生を好きに守るがいい。トネール・フレッシュ!」


 またエレンが雷の矢を放ってきた。しかも今度は1、2本とかではなく、数えきれないほど複数の矢を放ってきた。するとシーカはニコラの前に立ち、


 「ヴァン・ブークリエ!」


 シーカが両腕を前へと突き出し両手を広げながら魔法を唱えた。シーカの手の前には、風の盾のようなものができている。エレンの雷の攻撃がその風に触れると消滅していく。


 「やはり風には相性が悪いな」


 相性?あれか、魔法色の優劣ってやつか。黄色の”雷”は青色の”水”には強いが水色の”風”には弱い。

 今この瞬間、シーカがとても頼もしくニコラの目には映っていた。エレンが一度攻撃をやめ相変わらず無表情のままこちらを見つめている。


 するとシーカも風の魔法をやめ、ニコラに話しかけてきた。


 「ニコラさん、白色の魔導師なんですよね?でしたら白色魔法の最も初歩的な呪文を一度唱えてみましょう。」


 「うん白色の魔道師みたいだけど、え、いきなりここで?」 


 「はい、エレンさんの目的はあくまでニコラさんの魔法がどんなものか知りたいだけですし、ニコラさんが何もしないとおそらくなにも解決しませんよ?」


 ちらっとエレンさんの方を向く、たしかにあの人は気が済むまで引かなそうだ。


 「わ、分かった。それじゃあその呪文ってのを教えてくれ」


 「はい。白色魔法の一番基礎の呪文、”ラ・リュミエール”です」


 「ラ・リュミエール?」


 初めて自分が唱える呪文にドキドキし、念のため確認した。


 「はい、そうです。では次にもっと力を込めて。体の中の魔力を外に出すというイメージをもってもう一度、さあどうぞ」


 よし、落ち着け。一度深呼吸だ。本当に僕が魔法使えるのかな?と一瞬頭に疑問がよぎったが、そんなことは考えず一回やってみよう。


 ニコラは目を閉じ、深く深呼吸をした。そして大きな声で叫んだ。


 「ラ・リュミエール!!」


 



 


 

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