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七色のドラゴン  作者: 雲の糸
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学園案内

 ホウレイ学園に入学することになったニコラは、ニース学園長との話が終わった後部屋を出てホウレイ学園の廊下をエレンとあわわちゃんの2人と一緒に歩き出した。


 僕の隣にエレンが、そのとなりにあわわちゃんが並んで歩いている。

 

 エレンはここホウレイ学園の上級生で僕の2つ年上だ。身長は高く髪がきれいな黄色でロングで腰近くまで下ろしている。そしてなんといってもこのするどい目が特徴だ。よく言えばクールなんだろうけど、悪く言えば単純に怖い。初対面だと印象が悪くなってしまうタイプだと思う。もっとも、僕との初めての出会いは別の原因で悪い印象となっているが。


 エレンは黄色の魔導師で雷を扱う。僕を気絶させここまで運んできたのはエレンのようだ。あわわちゃんはただの付き添いだったらしいのだが、あわわちゃんがいなかったら僕の家はエレンの出す雷で崩壊していたかもしれなかったというのだから、恐ろしい方だと思って間違いないだろう。

 

 「なんというかまあ、これからよろしく頼みます。エレンさんと、あわわちゃん」


 「ああ、よろしくな」


 「ちょっと私はシーカです!さらっと変な名前で呼ばないでください!」


 「ごめんごめん、名前分からなかったからあだ名っぽいのを予想してみたんだけど、違ったみたいだね」


 当てようとしてないでしょ!っと頬を膨らませてこっちを上目遣いで見てくるのは、体が小さく見た目が子供っぽくて同じホウレイ学園女子生徒のシーカだ。僕と同じ歳らしいんだが、改めて見ると到底そうは思えないほど幼い容姿をしている。そして、まだ数回しか会っていないが、おっちょこちょいな性格な気がする。


 シーカは水色の魔導師で、風を扱う。僕の家のドアを勢いよく吹き飛ばしたのはこの子だ。かわいらしい見た目とは裏腹に、強烈な風の魔法を扱うようだ。シーカが本気になれば僕の家を丸ごと吹っ飛ばせることもできるらしい。僕の家は普通の木造建築だが、レンガの家でも難なく吹き飛ばせるらしい。3匹のこぶたも狼からは防げてもこの女の子には歯が立たないんだからびっくりすることだろう。



 「あのー、今僕たちってどこに向かっているのですか?学園内を案内してくれるみたいですけど」


 学園長にエレン君とシーカちゃんと一緒に学園を見て回るといいよと言われさっきまでいた部屋を出てずっと歩きっぱなしだ。途中いくつもの部屋を通り過ぎているが、どんな部屋なのかなど何も説明をしてくれる感じがしない。おそらくまず最初に説明するべき場所へと向かっているのだろう。


 「君の魔法の力がどんなものなのか調べる場所だよ」


 「なるほど、最初はまず何か検査みたいのを受けるんですね」


 エレンがこちらを見向きもせずっと前を向いたまま答えてくれた。そのとなりにいるシーカはどこか不思議そうな顔をしている。少し気になってみたのでシーカにちょっと聞いてみることにする。


 「ねえシーカさん、学園に入ったらまず検査のようなものを受けるってことで良いんだよね?」


 「いえ、私は入学前に受けた魔法色適性検査以外特に検査と言われるものは受けていないですよ?」


 シーカはエレンの言っていることが分からないらしく、どこに向かっているのかシーカも分かっていない様子だ。エレンは表情を一つも変えず黙ったままで歩き続けている。


 あのーエレンさん?検査っていったい何するんですか?とまさに聞こうと思ったその時だった。


 「着いたぞ、ここが無色闘技場だ」


 エレンが立ち止まり、そう告げた。


 「え、闘技場?」


 「あわわ…」


 シーカがお得意の困惑アピールをしている。つまりシーカは困惑している。なんだ?闘技場って言ったら普通闘う場所だよな。そのまんまだけど。今誰かが闘っていてそれの見学でもしていこうということか?初日にいきなり魔法の戦いが見られるのはうれしいことだ。


 急に興奮してきてテンションが上がってきた。早く中に入って魔法を見たいということで頭がいっぱいになってきた。


 わくわくうきうきしていると、後ろの方からシーカが耳元で小さな声でささやいてきた。


 「あのーニコラさん?多分ですけど今中には誰もいないと思いますよ?」


 「え、なんだって?じゃあこれから何をするつもりなんだ?エレンさんは」


 「エレンさんがおっしゃってたことを踏まえて、あとこの場所ということを考慮すると、おそらくですけど…」


 「おそらく、なんなんです?」


 恐る恐る答えようとするシーカを待たずにエレンが先に答えを言った。


 「さあ、始めるぞ、ニコラ。私の相手をしてもらおう」


 エレンが闘技場の入り口のドアを少しだけ開き、こちらの方を向いてそう言い放った。


 「ええーー!」


 ただただびっくりする僕と、後ろであわわと言っているシーカがそこにはいた。

 いきなり僕が魔法を使って戦うなんて無理無理、不可能だ。

 

 エレンは一人先に闘技場の中へと入って行き、僕とシーカは入口のところで立ちずさんでいた。

 僕はシーカと目を合わせ首を横に振り、できませんアピール。シーカは目をきょろきょろさせ、困惑アピール。本当に困惑していると、あわわという言葉も出ないということか。


 だとしたらこれは相当まずいことに違いない。この闘技場に入ってはいけない気がする。ニコラは闘技場を背に向けその場をあとにしようと歩き出す。すると後ろからバタンと大きな音がして、恐る恐る振り向くと、そこには扉を開け、全身が雷でビリビリいってるエレンが入口の前で突っ立っていた。


 「今から行きまーす」


 僕はその言葉しか頭に浮かばず、無意識のままにそう答えていた。

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