突然の魔導師の来訪
魔法色適性検査の日から約一カ月が経ち、ニコラはアルバイトをしたりして平凡な生活を送っていた。
そんなある日、もう日が落ちようとしている夕方の時間帯、いつものようにバイトから帰りに郵便受けの中身を確認すると封筒が一通入っていた。
中には手紙が入っており、差出人は三大魔法学園の一つとして名高いホウレイ学園からだ。
『二コラ・ボレアス殿
貴方を我がホウレイ学園の特別生として入学することをここに許可する
ホウレイ学園 ニース学園長』
どうやら推薦状のようだ。手紙にはホウレイ学園のシンボルとして有名なマークが記されていた。
間違いなくあのホウレイ学園からの手紙で、ニコラは動揺を隠せないでいた。しかし、ただ喜んでいるだけではいられなかった。
なぜこのタイミングで魔法学園に、しかも魔法学園の中でもトップクラスのホウレイ学園から。
そんな疑問の方がニコラにとって大きいものとなっていた。
色々考えてもなにもそれらしい理由が浮かばない。その日は家に帰ってから寝床につくまで頭の中はそのことでいっぱいだった。色々詳しいことは明日になってから考えよう。ニコラはそう思い寝ることにした。
しかし、その後だった。ニコラが眠りについたあと、
コンコン___
みんなが寝静まる深夜の時間に、ニコラの家のドアをたたく音が静かに聞こえた。
二コラは気が付き耳を傾けた。 家の前に誰かがいる。こんな時間に誰だ?
泥棒か?いや家には高く売れるような代物なんてないし、第一泥棒がノックするわけないか。
だとすると風で飛んできたものがドアにぶつかっただけか? などと色々考えていると、
「ニコラ・ボレアス、出かける準備をして出てきてください。あなたをホウレイ学園へとお連れします」
ハキハキとした 、声に芯が通っているクールな感じの女性の声が玄関の方から聞こえた。
やはり家の前に人がいたのか。出かける準備?ホウレイ学園に案内? 学園の人なのか?
手紙が届いてからまだ一日も経ってない。それに迎えが来るなんてなにも書いていなかった。
「確かに僕はニコラだ。でも君が誰かは知らないし、本当にホウレイ学園の人だという保証はない」
「・・・」
返答がない、帰ったか?確かめようと玄関へと向かいドアを開けようとドアノブをつかんだ瞬間、何か手が痺れるような感じがした。そしてすぐに痛くなってきてドアノブを掴んでいられなくなりとっさに離した。
なんだ今のは。そう思いもう一度ドアを開けようと手を伸ばした瞬間、ドアが外れこちら側に吹っ飛んできた。そしてニコラに激突しそのまま部屋の方へとニコラの身体もろとも吹き飛ばした。
風だ
強烈な風がニコラの家に吹き、ドアを吹き飛ばしたのだ。おかげでニコラの部屋の中の色んなものが舞ってひどく散らかった部屋になった。
「失礼するぞ。なんだこの汚い部屋は」
「あわわ、ちょっと強くしすぎちゃったかな?でもエレンがやってたらこの家そのものが塵になってたよね?」
ドアの下敷きになっていてニコラはいったい何が起きたのかさっぱりだった。とりあえず女の人が2人家に入って来たことは分かった。それも家のドアを吹っ飛ばして。一人は最初ホウレイ学園に案内すると言ったクールな声の持ち主。もう一人は、子供のような声でさっきの人とは対照的だ。
「もう一度言う、ニコラとやら、すぐ出かける支度をして私たちに付いてこい。ホウレイ学園まで案内する」
「その前にまずこのドアをどかしてくれよ!重くて潰れそうだ。ホウレイ学園じゃなくて冥土に案内する気か!」
「あわわ、すみませんです!今どかします! ラ・ヴァン!」
またもや風が吹き出しニコラの上に覆いかぶさっていたドアが吹き飛び、部屋中のものが宙に舞っている。ドアがニコラの上からどいてからすぐ、ガシャンと何かが割れた音がしたが気にしないでおこう。
「あわわ…」
だからあわわって言いながら目を見開いて両手で口を覆うのをやめてくれ。
窓が割れたかと思っちゃうだろ。
「あー痛かった…死ぬかと思った…」
「この程度で死ぬようでは特別生と聞いて笑えるぞ」
「すみません、すみません!エレンが雷の魔法でドアを壊そうとしたんですが、エレンがやると家全体がバラバラになってしまうので私が急いでドアを開けたんです!」
そうか、家がバラバラになりよりかはまだましか。いやそもそもドアをこじ開けようとしたこと自体が間違っていると思うが、ひとまずそれは置いといて、
「君たちが魔導士ということは分かった。でもホウレイ学園の関係者かどうかは分からないままだ」
「そこは別に問題ない、学園長がお呼びだ。出かける準備をしてすぐに行くぞ」
、
「ちょっと待て、なぜそんなに急いで僕を連れて行こうとする?明日にでも自分でホウレイ学園まで行くで良いんじゃないか?」
「そういうわけにはいかない、学園長に急いで連れてくるように言われた。また、少しくらいなら乱暴になってしまっても仕方ないと言われている」
「そんな勝手で危険な人物が長の学園なんてこっちから願い下げだね!」
父との約束のため学園に行けるようになるのは願ってもないことだ。しかも父の母校であり三大魔法学園の一つとして有名な学園ではなおさらこの上ない。しかし、いくら優秀な学園だったとしてもそんな危険な人たちがいるのはお断りだ。
ホウレイ学園から推薦状が来たんだ、だったら他のどの学園にだって行けるはずだ。三大魔法学園に行けて、それより下の学園に行けないなんてことは聞いたことがない。僕は、普通の学園でも魔法を研究できればそれでいいんだ。遠回りになったとしてもいつかは父を超える魔導士になって見せる。
「仕方ない、 ラ・トネール」
「なっ」
まばゆい光が視界いっぱいに広がり、まぶしいと思った時には体全体がしびれて意識が遠のいていった。
ニコラはその後すぐに意識を失い、倒れてしまった。