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七色のドラゴン  作者: 雲の糸
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能力判明

  エレンさんに特別授業をしてもらうこととなった僕。

 学園長に突然明日、毎年恒例の今年魔導師になった生徒対象の試練が行われると告げられ狼狽している僕にエレンさんから特別授業を受けるように言われる。

 最初はこのエレンさんに人に説明することなんてできるのか?なんて思ってしまっていたりしたが、意外にもちゃんと説明してくれたのでそれは良かったと思う。



「魔法の詠唱の練習は分かりますけど、なんで僕とは関係のない他の色魔法の詠唱の練習をするんですか?」



 ニコラはエレンさんから、自分の魔法色とは違う色の魔法の詠唱を覚えるよう言われてからずっと思っていた疑問をそのまま聞いてみた。


 

 まずは自分の色の魔法、白色魔法の練習をしてから他色という順番なのではないかと思っているからだ。



 しかし、そんなことを思っていたニコラに対しエレンはニコラの思っていて通りの回答をした。


 「本来、他色の魔法に手を出すのは一流の魔導師だけだ。自分の魔法色を十分に極めた者のみが他色まで極めようとするのが通例である。そもそも自己本来の色の魔法が扱えない者に他色など扱えるはずがない」



 「じゃあ、なぜ僕は他色の魔法の詠唱を学ぶのでしょうか…」



 「それがお前の能力だからに決まっているだろうがこのバカめ」



 「僕の能力、あのシーカさんみたく風の魔法が使えたあれですか?あの時は言われるまま勢いで詠唱唱えただけなので、どうやって魔法を発動させたかよく覚えていないんですよね」



「心配するな。マグレだろうとなんだろうと、そもそもの力がなければ魔法は発動しない。お前がどんだけバカでも魔法の素質は備わっているということだ。バカでもな」



 「つまり僕には他の人と同じ魔法が使える、ということですね?」


 

 「だからそう言っているだろうが、このばかが」



 この短時間に何回ばかと言われたかは置いとくとして、いよいよ僕にも魔法を実践的に学べる時が来たのだ。内心とてもわくわくしている。しかしその一方で不安は残る。僕に本当に他の色魔法が使えるのかということはもちろんだが、エレンさんとこれから上手くやっていけるのだろうかというものだ。

 


 エレンさんは悪い人ではない、のだろう。多分。でも僕とは合うようなタイプではないことだけははっきりと言える。僕はどちらかというと控えめで心配性な性格であるが、エレンさんはというと、なんというか突っ込むだけ突っ込んで上手くいかなくても無理やり突破しちゃうみたいな、かなり強引に物事を片付けてしまおうと考える人だと思う。はっきり言おう、僕とは正反対だと。そして、合わない!と。



 これから行われる予定であり、試練と称される学園のイベント。通常なら新人魔導師同士でペアを組んで挑むはずが、僕が変な時期に學校に入ったばかりに上級生であるエレンさんと組む羽目に…。

 今回の僕の魔法勉強の付き添いもそうだけど、エレンさんと一緒に過ごすことが多い。しかも二人きりで…。シーカさん!和みの象徴、「あわわ」を巧みに操るあのシーカさんの笑顔が今欲しい。ここの教室のドアを風魔法でぶっ飛ばして中に入って来て欲しいまである。




 さてさて、エレンさんと2人きりは気まづいよーという僕の嘆きを言った後で、本題に入ろう。

 エレンさんが言うように僕は他色の魔法を扱えるようにその魔法の詠唱を学ぶことになったわけだが、まずは一度魔法が使えた水色の<風>魔法からやっていくことになった。一度成功したということからこれをちゃんと扱えるようになれば、要領を掴んで他の色の魔法に取り組む際に効率的にいけるだろうという考えだ。



 僕は早速風魔法の基本の詠唱を唱えてみた。



 「ラ・風の魔法(ヴァン)!!」



 何も起こらない。ただただ気まずい空間がそこには広がっていた。

 エレンさんが無表情のままこちらを見つめている。なんだ、なにを考えているんだ。

 するとエレンさんが歩き出しこちらに近づいてきた。右手を開いたまま上げて振りかざすと、そのまま僕の頭の上へと下ろしてきた。なんか普通に叩かれたのだが…。



 「このばかが、何いきなり風の魔法を唱えているのだ。まずは自分の色魔法が先だろうが」



そうだった、闘技場で戦ったあの時もまずは僕の白魔法を唱えてからだった。



 「すみません、すっかり忘れていました。では気を取り直して…」



 目を閉じ、息を整える。あの時と同じようにイメージして魔法を唱える。



 「ラ・光の魔法(リュミエール)!」



 前と同じだ、僕の右手が白く光っている。そして辺りを明るく照らしている。よし、この状態で風魔法を唱えれば良いいんだよな。また意識を集中して、今度は水色魔法の詠唱だ。



 「ラ・風の魔法(ヴァン)!!」



 あれ、また何も起こらない。さっきまで白く光っていた僕の右手からは魔法が消えてしまい光はなくなってしまった。またただ気まずい雰囲気に部屋が呑み込まれている。本日二度目の気まずい世界へようこそ、と教室が言っている気がする。



 「おかしいな」



 この気まずい沈黙を破ったのは意外にもいつも寡黙なエレンさんの方であった。



 「なにがおかしいんです?」


 「以前お前が風魔法の詠唱を唱えたとき、その右手の光が水色に光っていたはずだ。いや、少し違うな。水色魔法の詠唱を唱える前からその右手水色に光りだしていた、そうだな?」



 「確かにそう言われてみると、風魔法の詠唱を唱えようとしたときには既に右手の光は水色だったような…」



 「しっかりと思い出せ、その時のことを。どのタイミングで光が白から水色に変わったのかを」



 「そうは言っても、さっきも言った通りシーカさんに言われるがまま勢いでやってましたから…本当に詳しいことは何も分かってないんですよ」



 申し訳なくエレンさんにそう言った矢先、体の力がすっと抜けて立っていられなくなった。魔法を使おうとするとまたこれだ、すぐ力が出なくなる。僕の中の魔力みたいなものが少ないのか、それともただ慣れていないだけなのか、後者であってほしいと思いつつその場に倒れかけた。



 クラっときて意識を失った、と思ったらエレンさんが僕の身体を支えてくれた。支えるというより襟を掴んで持ち上げている感じだ。



 「すいません、ありがとうございます…」



 もう大丈夫という意味を込めてエレンさんの手を払おうとした。

 なんかこの感じ、前にもあった気がする。

 そうだ!闘技場で僕が力が抜けたときシーカさんに倒れこんだ時だ。あの時は優しく体を支えてくれたな……じゃない!わかったぞ!その時だ、僕がシーカさんに倒れこんだとき僕の右手がシーカさんに触れた瞬間に右手が水色に光ったんだ。思い出した、そして僕の水色に光る右手をシーカさんが見た途端、風魔法の詠唱を唱えるように言ったんだ。



 「エレンさん!思い出しましたよ、あの時僕の風の魔法がどう発動したのか。触れれば良いんです、相手に触れればその人の魔法の色と同じ色に僕の右手が光るんです!間違いありません…」


 

 そこまで言い終わって完全に僕は意識を失ってしまった。




 次に僕の目が覚めたのは、試練が始まる直前に行われる開会式が開かれている学校のある闘技場の中だった。辺りに気を配ると、エレンさんが僕を見下ろす形で側に立っていた。僕らの周りにはこれから試練を受けると思われる魔導師たちがどこからか流れている人の話を真剣に聞いていた。



 「やっと目が覚めたか、早く起きろ。試練が始まるぞ」



 「部屋の中で起こしてくださいよーーーー!!!!」





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