2話 ちょっと合わないお兄様
まぁ、会いに行くんだけどね。兄様達には挨拶しとかないと色々大変だし。どちらにせよ会わなきゃ。
その日は家庭教師の人と軽く授業をした。ちょっとした計算とマナーだったけど、計算の方はまだ私の教材が用意出来てないらしくて、兄さんたちの問題解かされたけど……まぁ、普通簡単だよね。
実はシルヴィオ兄様とクレート兄様は歳が違わない。ギリギリ同い年って所だ。1つ違う時期の方が多いけど、学校でもギリ同じ学年になるんだってさ。同い年とは言えシルヴィオ兄様とクレート兄様は大分授業の進みが違うらしくて、クレート兄様は授業をサボってばっかりだって家庭教師の人が愚痴ってた。あっ、勿論私はべた褒めされたよ。転生者で勉強ついていけなきゃやばいもんね。マナーとかは聞いた事無いものばっかだったけど、まぁ何とかなるレベルだろう。
次の日は父様についていって、ある部屋に着いた。中には、兄様2人……顔は両方良いんだけどね……
父様に目配せされた。自己紹介しろって事か……第一印象大事。
「……えと、ぼく……フェリシア・フロレンティーノです。よろしくおねがいします、お兄さま」
……思ったけど、クレート兄様に睨まれすぎじゃない?シルヴィオ兄様は穏やかーな顔してるけど。
「初めまして、フェリシア。僕はシルヴィオ。こんな可愛い子が弟になるなんて嬉しいな。仲良くしようね」
シルヴィオ兄様は普通に優しそうなんだけどな……何だかんだ優しい人が1番だし。
「……クレートだ」
うん、君は相変わらずだね。初対面なんだけど。睨みつけるのやめて頂けますかね?
ちょっとイラついたので怯えたフリをして、シルヴィオ兄様に「シルヴィオ兄さま……」と抱きついた。
「……クレート、怖がらせないでよ。フェリシアが怯えてるだろ」
流石兄さん、頼りになるよ。庇ってくれるなんてやっぱ優しいよね。
「……まぁ、ゆっくりで良いから仲良くしろよ」
結局お父様が締めて解散になった。
4歳になって大分自由に動けるようになったし、庭にでも行こう。ここの庭、流石貴族の屋敷って感じでめっちゃ広いんだよね。
「やっぱりおにわは広いなぁ……!」
誰に聞かれてるか分からないので常にフェリシアモードだ。
キラキラした色とりどりの花や噴水を、物珍しそうに観察する。見たことないのばっか……流石異世界だよ。
ん?遠くに居る赤い髪の人は……クレート兄様……?ちゃんと話せるチャンスなんだけど……何か気まずい。でもこのままの方が気まずいし……話しかけてこよ。
「クレート兄さま!」
可愛らしく駆け寄る。何があっても人懐っこいのは大切。
「クレートにいさま!なにをしてらっしゃるんですか?」
「お前には関係ないだろ。あと兄と呼ぶな。俺はお前の兄になったつもりは無い」
うぁーお。言っちゃうか……これは大分面倒いな。私だって別にクレートの事兄とか思ってないし。シルヴィオ兄様は優しいからね、好きだけど。
「クレートにいさまはぼくのこときらい……?ぼくクレートにいさまになにかした……?」
無視して兄様と呼び続ける。これで罪悪感を煽れたらな~
「嫌いだよ、お前なんて大っ嫌いだ!お前なんか生まれて来なければ良かったのに!そうしたら母様も死ななかった!お前が居るから、お前が居るからみんな俺とお前を比べるし、こんな事にもならなかったのに!」
そこまで言うか……?流石にどれだけ性格悪くてもお前なんて生まれて来なければ良かったのには冗談でも言っちゃいけないワードじゃない?
この4歳の精神年齢に引きずられてか、涙が溢れてきた。何でだろう?別に悲しくなんかないのに。
「……うぁーん!ぼくだって生まれてきたくてクレート兄さまの弟になったわけじゃないもん!クレート兄さまのあたまがわるいのだって、ぼくかんけいないもん!」
ちょいちょい煽りを入れて言い返して、一頻り泣いた。そして騒ぎを聞き付けてきたシルヴィオ兄様に抱きついた。