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亜人世界への生  作者: F**kin“nallow”novel'Guy
8/18

村へ向かう足、世は大きく

お久しブリーフでござる

暫く『向こう』の改稿をメインにしていたので、ごめんちょびひげ


 朝から、肉の焼ける良い匂いが森へ漂う。

 何の肉かと改めて聞いても、デルカさんは『それがどうかしたの?』とでも言いたげな純朴な瞳で「何って…… “ビツゥ” のモモ肉だけど」としか返してこない。

 いやだからビツゥって何だよ って聞きたかったけど、俺の記憶は『問う事』自体に対して嫌なホーンをビービー鳴らしている……。faホーンじゃなくて、beepな。

 なので彼がそう答えを返してくれれば、俺はその本能の警告に従って

「はぁ……ビツゥ ですか……」

 と言うしか有るまいよ! なんか、ね 怖いんだよ。

 それに何の肉かはともかくとしても、焼ける匂いは香ばしく上質だし、食べても実に美味なので良しとしようかな。知る時はそのうち来るでしょう。

 そんな風に俺は心の違和感を片隅に追いやって封じ込め、肉をパンに乗せて食べる。ジューシーな肉汁が口中に溢れ、適度なしょっぱい味付けが実にちょうど良い。

「朝飯食べたら、村に行こうね」

「ふぁ はい、よろしくお願いします」

 

……


 朝食を終えると、デルカさんは片付けを実にパパパっと手早く、手際よく終わらせて一つの背負い荷物に纏め上げてしまった。

 それから直ぐに村へ向かう時が来たのだが、何と彼は非常に簡易ながら靴を足に “縛り付けて” くれた。

 足よりちょっと大きい程度に切った厚手の布切れを足裏に宛がったら、其れを革ひもで足に何箇所かで括り付け固定するだけだ。イメージとしては、江戸時代の飛脚のわらじ履きが近いかもしれない。あんな感じ。

「おぉー、ボロ切れと革ひもで……」

「応急的なやり方だけど、無いよりは良い筈! じゃ、行こうか!」

「はーいっ!」

 やべえ、これ結構良いぞ。素足も子供時代みたいで良かったけど、やっぱり布切れと言えども一枚噛ませると安心感がある。それでいて地面の凹凸の感覚はしっかり足裏に伝わってくるから、何と言うかこう 『歩きやすい』のだ!

 ちなみに下着も貰った。シャツとパンツ。パンツに関してはそのままだとずり落ちるので、これまた革ひもで縛って落ちないようにしたのだ。まあ伸縮性のあるボクサー型と言ってもやっぱり成人男性用だけあって大きいし、そこは仕方ない。

 でも森で拾ったボロはそのまま上に羽織っている。下着のままだと俺が心許ないし、そもそもその下着がぶかぶかだから下手に動けば見えるモンが簡単に見えてしまうからだ。

 其れは嫌だ、と言う事でこのポンチョ布は続投である。

 ま、見えたって子供の体だから、問題は無いと言えば問題は無い(と思いたい)が。

 

 さて、そんなこんなで、たまに会話もしながら俺はデルカさんと歩き続けた。いつしか川ともはぐれ、林の中の道を進んでいる事に不安も募った。

 歩いたのは、時間的にどれほど、と言われても時計持ってないから分からん。だが二連星の陽光星を見るのに少し上を向かないといけない、くらいには時間は過ぎた。

 その頃にはお腹も空き始めたが、だが構うものか、と思えていた。何故ならば……立ち昇る白い煙が見えるから。

 だからその方向へ俺は駆けた訳だが、危うく落ちるところだった。なにせ崖だったからな。落ちれば『ただではすまぬ』くらいの高さだが、ともかくその白い煙は、崖を降りた少し先の林の中にある小さな村からだ。三角屋根の煙突から幾本か昇っているところから、割と小規模な村のようである。

「おぉーーっ! すげーーっ!」

 そこからの景色は、とても素晴らしい。林の群が点々とある大地は、くねり続く川をどこへ導いて居るかわからない。と言うかけっこう陸続きなところを見るに此処は内陸のようだ。

 そしてこの崖、左右を見回せばこれまた随分と長い。緩やかな円を描いて続いて居るし、これはつまり、俺の目覚めた森は台地上に存在して居ることがわかった。

「彼処が俺たちの村で、向こうの滝の所から降りるんだ」


 その先で俺はまた、女の子の声で驚きと感動に叫んだ。

 俺が一番最初に見つけた小川。あの綺麗な小川はこの本流に合流して居るのだと言う。通りで大きい川な訳だわな。

 その大きさゆえか、この滝付近では少し張り上げないと声はほとんど聞こえない。終わりなく落ち叩き付けられ続ける大量の水の轟音は体に良く響くが、それ以上にこの聴覚の鋭い『ケモミミ』には些か五月蝿すぎる。

 其の音の問題があるのか、彼は荷から手頃な大きさの……所謂『バンダナ』を二つ引っ張り出して「これで耳を畳んで塞ぐと良い」と教えてくれた。デルカさんは普段からそうして居るのか、手慣れた様子で立派な獣耳を畳むように頭部を覆って被った。側頭部から生えて居るご立派なツノがあるにも関わらず、一切ツノに触れていないのは正直凄い。

 まるで海賊みたいだぁ と彼のバンダナの巻き方を見て俺は思ったが、対しての俺はそんなかっこいい巻き方なんて知らないので三角を作って真上から耳を押さえつける様に被って、顎の下で結ぶ……のだが、ツノやい、めっちゃ邪魔クッセぇっ! 其れでも真上に伸びてる訳じゃなくちょっと斜め前に伸びて居るから良いけど、引っかかる!

「ぬ〜〜〜っ! なんでこんなっ……!  でけた……」

 勢い余って『何でこんなツノなんか生えてんだよっ!』って言いそうになってしまったが、何とか堪えた。危うく変な目で見られる所だった。

 だけど俺が顎の下でバンダナの結び目を作って居て、俺、不意にデルカさんの方をちらっと見ちゃったの。そしたらこの人すーっげー笑い抑えるの必死な顔してんの! 

「ちょっ! なんでそんな笑いそうな顔してんですかっ!」

「ぅっはははははっ! ぃーっひっ! なにその被り方めっちゃ面白いんだけどぉっ!」

 俺が真剣な顔でそう言ったら、デルカさんは抑えきれず大爆笑してしまった。……この被り方そんなにおかしいかなぁ? と言うか彼が其処まで笑うとは思わなかったよ。

「あ、あのー……此処降りるンスよね? 早くしてくださいよっ」

「ひっひっ……! はひっ……あ、ごめんごめん! そうだったね! まあ道も出来てるしゆっくり降りれば何て事は無いよ! 気をつけて行こうっ! ……ふふっ」

 まだ笑うか。

 まあ面白いってんなら笑わせておけば良いだけだし? 笑われたって減るモンじゃねえし? そんな訳で俺は、まずはこの急な石段を気を付けて降りる事に専念せねばならなかったので、そちらに集中する。

 結構、適当雑破な作りしてるなぁ。石段とか言ってるけど小さな岩を適当に置いただけってな所も有るぞ此処……。

 

 なんだかんだ、途中で怖い思いもしながらも頑張って下まで降りてみれば、凄い滝壺だ。畳んで塞いでるのに滝の爆音は凄まじいし、水の霧は肌に冷たい上に風圧も勢いが良くて、飛ばされた水粒は見る間に身体や布に付着してあっという間にびしょ濡れだ。

 何より大量の水が『ズドドドドドドドドッーー!』って落ちてくるこの迫力よ。見あげりゃ崖も結構な高さだし、滝自体の光景もすごい。

「あんな所から降りてきたんか俺……」

 ふと誰かに呼ばれた気がしないでもなく、ゆえにデルカさんの方を見たら手招きしてるので、逃げる様に俺も彼の元へと小走りに向かった。

 俺たちは滝からそそくさと逃げるしかないのである。


……

 

 離れた所でバンダナを脱ぎ、適当に身体と『服』を拭うと、絞ったら水がジョバァアーッと出た。

 すごかったねーなどと軽い調子で朗らかに、暫く滝を眺めても居たがそれも程々にして、デルカさんに連れられて村へと向かう。

「村に着いたらまずは温泉であったまろう!」

「温泉あるんですかヤッタァーーっ!」

 これがこの世界に来て二日しか経っていない俺の順応速度であるが、正直俺も驚いてる。唯一慣れないのは、ツノの存在感と耳の感覚、そして自分が喋れば喋るだけ、自分の耳に可愛らしい女の子の声が響き届くと言う点だ。この三点だけはとんでもなく大きく変わった点であるので、慣れるのには時間がかかるだろう。


 だが、そんな問題点は『温泉』の前には些細な事にしかならない。

 

 そうして和気藹々、くっちゃべりながら歩いて行くと近づくのは、建物の存在感と活発な雰囲気、村に住まうであろう人々の声や雰囲気、薪が燃え産む煙の匂い、香ばしい腹の空く匂いなどであった。

 さて、俺は どう生きるのだろうな。

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