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亜人世界への生  作者: F**kin“nallow”novel'Guy
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未知を知るに、知るは未知

 いずれ来るだろう日を、俺は自身で決めて彼……デルカさんへと告げたのだ。

 いや、それはまあ俺自身が決めねばならんかった事だし、彼含めた村の皆もそのようにして良いと言ってこの四ヶ月間を村で過ごさせてくれたのだけども。

 

 四ヶ月。その間、旅に出る時期を決めなければならない問題が頭から離れた事は片時として無かった。ひととき忘れる時間はあったにしても、一日の終わり頃には必ず鎌首をもたげて頭の中に戸愚呂巻く蛇として居座るのだ。

 結局のところは皆の好意と余り有る時間、そして毎日の充実ぶりに満足して「ま、いっか」で消え去るのであるが、しかし同時に『世話になりっぱなしってのは良くないな』と心の何処かで焦って居たりも……。

 

 では いつ旅に出るかは決めた。それは良い。

 なぜ二ヶ月後か と言うと、それを疑問に思ったのか、だけどそれを表には出さずにやんわりと包んで、デルカさんは理由を聞いて来た。

「いよいよ、だね。それに準備期間は確かに必要だね?」

「ええ。それに村の皆への周知と引き継ぎとか色々有るだろうし、必要な物の調達とかも何かと時間かかると思って」

「そっかぁ でも、全く構わないよ! いよいよ旅立ちの時かぁ……!」

 快く期間を了承してくれた彼は嬉しそうに、ワクワクする子供のように目を輝かせてなにやら様々と想像を張り巡らせ始めた。分かりやすいな、本当に。


 直後に俯き顎に手を当ててなにやらを考え始めた彼の言葉を、俺はじっと待つ。そして数瞬して顔を上げたデルカさんは、僅かに重い声色で 言う。

「んん……この大陸にガグズは居ない。とは言えど危険が無い訳じゃない。ノクァ、君は最低限の、身を守る術を学んでからの方が良いかもねぇ」

 来た。来ると思ったこの話題。 俺の心は未知の物に対する好奇心と、それとない恐怖から心臓がドクンとひと鼓動、大きくなったのを感じる。


 俺たち『ペルヂェグ』唯一の敵で有る『ガグズ』なる存在は、この大陸には存在しない、既に殲滅されている……そう聞いたし、皆にとって周知の事実ではあった。

 けれど、ガグズほど敵性の強い種族ほどでは無いにせよ、ペルヂェグにとって危険な生物が生きて居る事に変わりは無いと言うのもまた、皆が知っていて当然の事実でもあった。 “敵” は居ない、しかし “脅威” は存在する。

 其れ等がどれほど危険な生物かを俺の知る限りで例えるのならば、熊、猪、鰐、ライオンなどの、いわゆる、成体でペルヂェグ種の成人男性のガタイをずっと上回る図体を持つ……『大型の肉食動物』の類だ。


 そう言った大型の肉食動物にいざ襲われた とした時、対抗するために戦いの知識を心身ともに身に付けないといけないのだ。

 村に住んで四ヶ月が経つその間でも、国軍の巡回警備部隊が村に訪れた回数は実に数十にも及んでおり、その都度に聞かされたのが 『どこどこの村か町の子供 もしくは女性が山や原に出かけ、運悪く危険な生物に出会ったのか命を落として居た』 と言う悲痛な報告と 『必ず、身を守る道具と術を備えて出掛けるか、またはそう言った事態に対処出来る成人男性と一緒に出掛けるように』 と言う訓告であった。

 犠牲が出て居るのを聞く毎に俺は少し悲しくもなったし、素直に恐怖を感じて受け止め、遠くには行かないようにガゥルとベーレジェらを戒めもした。


 それでも俺はどこか、他人事のように感じて居た筋はある。自分には起こり得ない、と。俺たちは大丈夫だ、と。 なんの根拠すらも 無く。

 だが今度は、村を離れて大都市を目指す旅に出るのだ。道中がどれ程危険か、若しくはどの様な道程を経るのかは定かでは無いが、あらゆる状況で万一の事態が起こり得るのだと、頭に入れて考えておかねばならない。


「……デルカさん、こんなちんちくりんでひ弱な子供の体の俺でも “脅威” と渡り合えるだけの力は得られるんですか。武器は、俺でも使えるんですかっ……」

 俺の硬い問いかけに、一瞬の沈黙の後で微笑みは絶やさずに、提案をしてくる。

 答え はせずに。

「……この前、弟が街に居るって言ったでしょ? 明日、その街へ行こう」

「えっ? えっ あっ あぁ はい……、……なんでです?」

 軽い驚きと否定する理由もない案に、良く理解する間も無く、よく分かって居ない儘に了承の返事をした俺は、瞬後に一応 『何故か』 と聞いた。

 するとデルカさんはにっこりと、微笑みの月の顔から眩く照る陽星の笑みへと変えて「ん? 準備!」 とだけ、短く答えるに留めた。


 ははぁ、こりゃなにかあるな。 外れがちな勘が頭の中で勝手に推測を立てて、勝手に期待を始めてしまった。

 推測が正しければ……だが。


 何しろ、俺たち『日本人』にとっては、銃だの弓矢だのと言ういわゆる『武器』の類の物ってのは、日常から遠くかけ離れた存在だったんだ。関係があると言えば国防軍や警察の何方か、若しくは猟師かの どれか だ。

 日常に生きる一般人にとって、そんな物は映画やアニメなどの『非現実的』な物に近く、日常の中で実物を見たり触れたりという機会は皆無に等しい。

 それ故に憧れなんてのも抱くし、同時に恐怖や異物感、中には嫌悪ですら抱く人は居る。


 それでも、だ。

 俺は元々 男だ。いや、心なら今でも男だ。

 国を守る軍人さん方や、彼らの所作や行動をカッコ良いと感じるし、存在そのモノを頼りに思ったり憧れたりしたりすれば、当然ながらそんな彼らが所持する銃火器やその他の装備品も含めてかっこいいと、心から感じるのだ。

 

 誰かが言って居たな。

『古代より家族や国を守る為に戦う “戦士達” に敬意や憧れを抱くのは自然で本能的だ』

 と。 俺とて 男だ。だからそう感じるのだろう、きっと。


 え? スポーツだって使うだろって?

 あー スポーツに其れ等を使うのも有るけど、それはそれで『ちょっと違う』んだよ。ベクトルが違うの。かっこいい、のベクトルが違うんだよ。

『生きる為、そして家族や国を守る為の所作や行動』 と 『競い合いの中でより特化して行く所作や行動』 の中で感じる『かっこよさ』は、実は全く違うと俺は思ってる。


 まぁ、とにかく。

 だからこそだろう。

 自分も其れに近づける、触れられるという期待を抱いて心を僅かに踊らせて、同時になんとない不安や恐怖をも抱いてしまっているのは。


……


 その日の夜は、俺は眠れなかった。

 何故ならば、本当に旅に出るという『道』を自分で決めてしまった事と、それをデルカさんに自分の口から直接に伝えて 確定させてしまった 事だ。

 二ヶ月後とはいえ、そんな時間はきっと恐ろしく早く訪れると感じるだろう。

 『不安』 なのだ、つまりは 要するに。


 ではもう一つ 何故ならば、それは期待と緊張だ。

 俺はどんな武器を使いたい? ああしたい、こうしたい、こうなりたい? この “耳” に鉄砲の音は大丈夫なのか? 本当に扱えるのか? 馬鹿にされないか? 似合うか? 本当に大丈夫かな? 銃って反動が強いんでは? 俺ダメなんじゃね?

 もっと重要な疑問はあるはずなのに、そんなくだらない疑問ばかりが脳に沸いては蟠りを残して行く。

 

 でも、第一歩の “街” に行ける。どんな街なのだろう? どの程度文明が進んでいるのだろう? どんな人達が居るのだろう? 人はどれくらい住んでいるのか? やっぱり皆んな “こう” なのかな? 


 そう言った期待からのドキドキワクワクが、止まらない。

ちょっと適当になっちゃった

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