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7話 この洞窟には双頭の蛇はきっといないのですぅ

 月曜日、お休みしてごめんね?

 ガチではしゃぎ過ぎて体力ありませんでした。月曜も引っ張ったしね……


 でも実は行くのは東京旅行だけじゃないんですよね(笑)

 来月の3連休は山口に行きますので、その時の更新がブレるかもしれませんのでご了承ください(笑)

 ヒースの案内で向かう滝の裏にある洞穴を目指して歩くレイアは空を見上げながら呟く。


「熊ってどうやって食べるんだ? 焼くのかな?」


 独り言のようにレイアは言うが傍に居るアリアとスゥも同じ疑問を思ったらしく、最後尾を歩くミュウに目を向ける。


 注目を浴びて、出番だと理解したミュウが太めの眉をキリリとさせる。


「定番は鍋。でも……」

「でも?」


 レイアが聞き返すと先頭を歩いていたヒースも振り返って全員に見つめられるミュウは口許の涎を拭う。


「新しい肉、生でいけるぅ!」

「――ッ!! う、美味いのか?」


 生唾を飲み込むレイアに可愛らしいオメメもキリリとさせるミュウがガゥ、と頷く。


「前回来た時、食べ……なんでもない」

「ミュウッ!!」


 サッと気合い負けした犬のように目を逸らすミュウをレイア達は半眼で見つめる。


 食い物の恨みは業が深い。


 怒りに飲み込まれた少年少女、レイア達は目標であるミュウを川を遡るようにして追いかけ、突如始まる『第174回、ミュウ以外、全員「鬼」』の追いかけっこが開催された。





 しばらくして、ヒースの言っていた滝に着く。


 廻り込むようにして見るスゥが驚いたようで口を手で隠す。


「本当に滝の裏に洞穴があるの!」

「言った通りだったでしょ?」


 思ったより歩いたので「本当に滝があるの?」と言われていたヒースが名誉回復と言わんばかりに胸を張る。


 だが、スゥの隣のアリアに違う真実に気付かれて顔を赤面させる事になった。


「ん、嘘じゃなかったけど、釣りするのにここまでやってくるのは『張り切り』さん?」


 アリアに急所を突かれたヒースは思わず膝を着いてしまう。


 川魚を食べるのも好きだが、ザガンでなかった川で遊ぶのが楽しくてテンションが上がって上流に行ってしまった事を見抜かれて耳まで赤くする。


 ヘコむヒースの両肩をポンと2つの手が置かれる。


「童心に帰るのはたまにあるさ!」

「がぅ、遊ぶの楽しい!」

「お願いだから慰めないでぇ!!」


 優しさ100%の慈愛に満ちた瞳で見つめてくるレイアとミュウはヒースを半泣きにさせた。




 そして、ヒースはダンテと男の矜持とは何かと相談、テツも交えて開催を心に決めて、少女達を洞穴に案内するように先頭を歩いた。


「どう?」

「遠くで見た時に思ったより大きいの」


 後ろにいたスゥにヒースが感想が求めるとスゥは入口を見渡しながら呟く。


 天井が2mぐらいあり、その奥を覗き込むようにするアリアが告げる。


「奥も結構続いてそう。洞穴というより、洞窟かもしれない」

「それはそれでアリだよな? 面白そうだし」


 アリアの言葉に楽しげに頷くレイアに口の端を上げて笑みを作る。


 それなりに楽しそうにする4人だが、ミュウだけが真面目な顔をして地面に顔を近づけ、地面を指で撫でたり、匂いを嗅ぐ素振りをみせる。


 ミュウの様子がおかしい事に気付いたヒースが声をかける。


「ミュウ? どうしたの?」

「ここにいるの熊じゃない。多分、人。しかも沢山いる」

「「「「えっ?」」」」


 こんな山の中に人の出入りがあると思ってなかった4人は驚く。


 驚く4人に静かに、というゼスチャーをするミュウ。


 それに慌てて口を閉ざす4人を確認後、ミュウは可愛らしい耳をピクピクと痙攣させるようにして集中させる。


 口をへの字にしてガゥと呟くミュウが4人を見渡す。


「奥にやっぱり人が一杯かも。風向きが逆なら匂いで分かる、残念」


 ミュウの言葉を受けて5人は顔を近づけて話し合いを始める。


「明らかに変だよね? こんな山奥に沢山の人……山賊?」

「私も一瞬、そうかも、と思ったけど住処にするには街道から離れ過ぎてるの。宝物庫にするのにはいいかもしれないけど……」


 ヒースの言葉にスゥが残念そうに首を振るが、ヒースも「だよね~」と頬を指で掻く。


 考えるのが苦手なレイアが何か思い付いたようで元気良く手を上げる。


 みんなの注目が集まった事を知ったレイアがドヤ顔で言ってくる。


「秘密基地!」

「馬鹿言ってるんじゃないの!」


 スゥがマッハで突っ込み、アリアとヒースも苦笑いを浮かべるがすぐにアリアが真顔になる。


「待って、レイアの考え、なくはない」

「どういう事?」


 今度はアリアにみんなの視線が集まる。


 アリアは微動だしない表情のまま、4人に促されるがまま口を開く。


「前々から疑問に思ってた事がある。ユウさんが主導でリホウ、ホーラ姉さん、テツ兄さんが悪党駆除をしてた」


 そういうアリアの言葉にウンウンと頷く4人。


「勿論、コミュニティの人も動いてた。それでもユウさんがいなくなると同時に各国に沸くように出てくる悪党達……どこにいた?」

「なるほど、裏取りなどで時間が割かれてた事もあるけど、処理が追い付かなかったり、気付かれ難い相手がいた、つまり、ここが1つとアリアは言いたいの?」


 スゥの言葉にアリアはコクリと頷く。


 真顔になるヒースが川の下流を示すように指差す。


「すぐに山を下りて、ホーラさん達に知らせないと!」

「今、戻ってもホーラ姉さんと合流するのは難しい。海賊のアジトがどこにあるか私達は知らない」


 ヒースの言葉にアリアは被り振る。


 どうしたら? と悩むアリア達であったが、ワクワクした顔のレイアが口を開く。


「じゃあさ? こんなのはどう?」







「やっぱり、これはマズイと思うんだ?」

「ヒース、煩い。今更グダグダ言っても始まらない」


 ヒースは最後尾から前にいる少女達に声をかけるが目の前のアリアに駄目だしされて昇天しそうになる。


 そんなヒースに苦笑いを浮かべる真ん中を歩くレイアが言ってくる。


「報告するにしても今の手持ちの情報では曖昧過ぎるだろ? だから偵察するだけだって」


 ホーラに偵察を駄目だしされて、挽回のチャンスと考えているのがミエミエのレイア。


 当然のようにその言葉通りに済むと信用できないヒースは経験則が訴えるのか、溜息を吐く。


 ちなみに歩く順番は


 ミュウ→スゥ→レイア→アリア→ヒースである。


 少し黙って進んですぐに先頭のミュウが止まれと手で合図されると物影に隠れる5人。


 岩陰から覗き見る5人は白衣を着た男2人が通り過ぎるのを見つめる。


 それを見送って安全が確認されると再び、顔を突き合わせる。


「あの白いローブみたいなのは何だ?」

「よく似た物なら城の研究者が着てたの」

「つまりここは研究施設?」


 入る前に予想してた事から離れて行く感じるのを気持ち悪いとばかりにアリアが不安そうにする。


 周りの安全を確認していたミュウがみんなに出発指示を手で示す。


「ここでジッとしてても意味ない」


 先に歩き出すミュウを見つめ、4人は顔を合わせて頷くと先程と同じ並びになって奥へと歩を進めた。


 それからも何度もニアミスをしつつ、先を進んだ時、急にミュウが立ち止まる。


「がぅ……挟まれた」

「マジか!?」


 辺りをキョロキョロするレイア達であったが、ミュウがおもむろに壁に手を当てると押した瞬間、回転ドアのようにミュウの姿が消える。


「――ッ!!」


 びっくりするアリア達であったが、アリア達の耳にも歩く人の音が聞こえ、ままよ、とミュウと同じようにして壁の向こう側へと飛び込んだ。




 飛び込んだ、そこは誰かの個室に見えた。


 それほど広い部屋ではないがデッカイ本棚がビッシリと置かれていた。


 本の数に圧倒されるアリア達であったが、まったく見向きしないミュウが壁に耳を付けて苦虫を噛み締めるようにする。


「壁の向こうで話してる」

「私達の存在が気付かれてるの?」


 そう聞くスゥに被り振るミュウは積まれている本を椅子代わりにする。


 座るミュウにヒースが話しかける。


「よく、あの壁が廻る、と気付いたよね?」

「あの位置だけ、人の手が何度も触れた匂いがした」


 それ以外の根拠もなく勢いでした結果と知ってヒースは弱った笑みを浮かべる。


 弱るヒースを余所にスゥは辺りを見渡す。


「待ってるの暇なの。見る価値があるかどうか分からないけど、一応、本を調べてみるの」


 スゥが何やらやる気になってるらしく、片っ端から本棚にある本の背表紙のタイトルを見て行く。


 それにミュウ以外も参加する。


 だが、レイアは1冊目の本を開いた瞬間、ミュウの隣へと座り込む。


「がぅ、おかえり」

「……ただいま」


 頭脳担当になるとミュウの隣が指定席なレイアであった。



 30分ぐらい経った頃、ミュウがレイアの右手に視線を向けている事にレイアが気付く。


「どうしたんだ、ミュウ?」

「がぅ、レイア、その本、貸して」

「ん? これか?」


 そう言いながら差し出すレイアが最初に手にした本を手渡す。


 手渡されたミュウが本を開き、たどたどしい口調で文字を読んでいくミュウを見てレイアは驚く。


「ミュウが自分から本を読もうというは珍し……どうした、ミュウ!」

「このかすかに匂う香り、ミュウ知ってるっ!!」


 本当に珍しいと苦笑するレイアの視界に驚きの光景があった。


 レイアの驚く声に反応してミュウを見つめたアリア達は絶句する。


 レイア達の視界にはピンクの髪を威嚇するネコのように毛が逆立っていた。


 本から顔を上げたミュウは手近にいたレイアから目を逸らして次に近いスゥの下に行くと本を突き出す。


「難しい文字一杯。ミュウじゃ読めない。読んで!」

「え、うん、わかったの」


 ミュウの気迫に飲まれかけながらスゥは本を開いた。

 感想や誤字がありましたら、気楽に感想欄にお願いします。

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