62話 見た事ある神様はここですぅ!!
今日は夕飯の当番でスーパーマーケットに行った傍のパチ屋がイベントしてました。
ええ、久しぶりに勝ちましたとも、2kが25kになって返ってきました!
決して、そのせいで更新が遅れたという事実は存在しない……といいな? と思っております!
それはともかく(話を逸らす)
今回はレイアの一人称回です。あの時のレイアはこんな事を考えてました、という話になります。双子の親のザガン編でだいぶ誤解は解けていたとは思いますが皆さんの補完の助けになれば、と思います。
だから、バイブルはレイアを嫌う人から必死に擁護したのよ?
ヒースの一撃が決まったと思ったら浅く、追撃をかけたらオトウサンの偽者に手を読まれてアタシは絶体絶命に追い詰められた。
でも、アタシに青竜刀を喉元に突き付けた状態で止めた。
ワザといたぶるつもりで止めたのかと見てみれば本人がどうして止めたか分からないといった苦渋に満ちた表情を浮かべて自分を叱咤して止めた手を動かそうとする。
その時の表情を見たアタシは思った。
どうして泣きそうな顔をしてるんだろう……と
動かぬ右腕に焦れ、無理矢理に左手で押し込もうとし、アタシの喉を浅く切り裂き慌てて腕を引く偽者の様子を喉の痛みも忘れて呆けて見てたアタシを左肘で横っ面を殴られる。
油断してた事もあり、まともに入り地面に叩きつけられながら意識が飛びそうになった。
スゥがアタシと偽者の間に飛び込んで盾を掲げるがアタシと同様に盾を青竜刀でノックするような状態で偽者もスゥも驚いた様子を見せていた。
偽者が顔を手で覆い、苦々しく何かを呟いた後、スゥの盾を膝蹴りでホーラ姉達がいる方向に吹き飛ばす。
胸のダメージは既に塞ぎ終えているのに足下をふらつかせる偽者は歯を食い縛り過ぎて口から血が滲んでいた。
「な、何が何か分からん……一旦、引くか……だがっ!」
そう言った偽者が背後にある地底湖に向けて魔力弾を放つとそれにビックリしたように地底湖から飛び出してきた大カエルが飛び出してくる。
なんとか上体を起こして大カエルを見上げる。
えっと……大きくない?
下から見上げているから余計にそう思うのかと思っているとダンテが声を張り上げる。
「何匹いるの!?」
「安心しろ、これが最後の1匹だ……コイツはお前等や向こうで白髪エルフが相手した母親だがな?」
どうやらアタシが思っていた通りで大きいみたいだ。
偽者が大カエルにアタシ達を吹き飛ばせと命令をすると天井に魔力弾を放ってその穴から出ていくのを見送っていると我に返る。
「やば……アタシだけみんなから離れてる」
肘打ちによる脳震盪からか、足に思ったより力が入らず苦労しながらなんとか立ち上がり、ゆっくりと歩き始める。
すると、大カエルの口の中から激しい光が漏れるのに気付き、見上げると凄まじい力の波動がアタシに届き、驚きから再び足を止めてしまった。
「早くこっちに来るの! シールドの内側へ!」
「お、おう!」
硬直してたアタシをスゥが怒鳴ってくれた事で我に返れた。
前を見るとアリアがシールドを唱え始め、ダンテも何かをしようとしているが頭を抱えて膝を付くのが見える。
ダンテは魔力エンプティか……アリアのシールドだけで凌げるか分からないけど、あの力はまともに受けちゃ駄目だってアタシの深い所が叫んでる!
思うように動けない体に苛立ちながらもアタシはアリア達が居る場所へと必死に向かう。
歩き始めてすぐに気を体に循環させれば回復が早いと気付き、循環を開始すると当初はアリア達の方に意識を向けていた大カエルが急にアタシの後ろ、腰を抜かし座り込む兵士達の方向に顔を向ける。
「えっ!?」
慌てて振り返った先はアタシが移動をする前と同じで立ち上がれてない兵士というより鎧を着た素人、新兵以下のアタシ達と年がそう変わらない少年達が多数いた。
戦い慣れなど当然してない少年兵達は大カエルを絶望の象徴のように見つめてガタガタと体を震わせている。なかにはオシッコを洩らしてるヤツもいるかもしれない。
助けなくちゃ、と思うが体が動かない。
だが、脳が揺れたせいじゃないとアタシの冷静な部分が言ってくる。
こ、怖い……死にたくない
そう、アタシは怖い。
あんなのを喰らったらまともにすまないとアタシの経験則が言ってる。
アタシは無意識にオトウサンのカンフー服を握り締めている事に気付き、奥歯を噛み締める。
オトウサンがいなくなってダンガを出る直前、食堂で見つけたオトウサンのこの服を見つめ、アタシは何を思った?
今までオトウサンに甘えから酷い事をしてきた清算をすると決めたんじゃないのか?
そして、そして……
アタシはオトウサンの服の胸元を手繰り寄せて震える体を隠すようにして下げていた顔を上げて大カエルを睨みつける。
「オトウサンの意志を継ぐ。目に届く人の命を1つでも多く……その覚悟を忘れないようにアタシは着ている!」
首を引っ込めてオトウサンのカンフー服に鼻まで埋め、大きく息を吸い込む。
オトウサンに甘えないように覚悟を決めてるはずなのにいつもここぞ、という時は甘えてばかりだな……
こうするとオトウサンに「大丈夫だ」と言われた気がするアタシは苦笑いを浮かべるがすぐに真顔になると気を循環させていたのを丹田に集め、一気に爆発させる。
脳が揺れて感覚がおかしくなっているのを強制的に復活させると赤いオーラがアタシを包む。
それと同時に大カエルが口を大きく開くのと同時であった。
「させない!」
アタシは一気に少年兵と大カエルの間の位置に飛び込む。
飛び込んだと同時に大カエルの口から激しい閃光を伴う攻撃が放たれる。
それを両腕をクロスして頭を守るようにして両足を開いて踏ん張る。
「守ってみせるぅ!!!」
気合いを声にしてアタシは気を全開で行使して全身に纏わせる。
すると、いきなり濁流に襲われたような感覚であっさり流されそうになるが踏ん張る。
なにやらアリア達が何か言ってるようだがアタシの耳には何を言っているかは判別出来ない。
そんな事より、吹き飛ばされないようにするだけで精一杯なうえ、全身を包む赤いオーラが削られて薄くなっていくのが気になってしょうがない。
徐々に後ろに押されて行き、脇の隙間から見える背後で震える少年兵達を見て歯を食い縛る。
アタシが抜かれたら、みんな死んでしまう!
絶望が足下から徐々に浸食してくる感覚に泣きそうになっているアタシの耳に懐かしい声がした。
「レイアは、テツやホーラのように動けるようになりたいんだろ?」
「くっ、誰にも言ってないのに、なんで知ってるんだよ!」
こんな状況に懐かしいやり取りはキュエレーの城門外でテツ兄の訓練を眺めている時にオトウサンと話した事だと思い出す。
そう、確かオトウサンだけでなくシホーヌやアクアにまでその想いを気付かれてた事を悔しがってたっけ? と苦笑する。
「で、レイアは、テツ達のように本当になりたいか?」
「悪いのかよ……でもアタシには、そんな事できないよな……」
お父さんに「お前はいらん」と言われてからずっと自分は何も出来ない無価値な存在だと思い込んでたアタシをオトウサンは優しくアタシの握り締めてた拳を両手で包んでくれた。
「できる! 俺がそう決めた。だから、大丈夫だ」
「アンタができるって決めた? それで、どうやって大丈夫になるんだよ」
この時、本当に嬉しかった。でもアタシは素直になれなかった……
無価値でもアリアだけでも……と何も出来もしないのに必死に肩肘を張ってた。
「俺だろうが、テツだろうが誰もいい、それをキッカケにして、自分を信じてやるんだ。そうしたら神様がレイアにちょっとだけチャンスをくれるさ」
そんなアタシにこう言ってくれたオトウサンの脛をアタシは蹴っ飛ばした。
本当に、本当に嬉しかったんだよ? でも泣きそうになったから誤魔化すように蹴っちゃった……
神様なんかいないっ! と言ったアタシに困った顔したオトウサンが「やっぱり、俺の言葉はまだレイアに届かないか……」と言った。
届いてたよ、オトウサン。
でも、認めるのが怖かったんだ。お父さんを見捨てるみたいで……
そこでアタシはハッと顔を上げる。
どうやら一瞬意識が飛んでいたらしい事を知る。
一向に緩む事のない大カエルの攻撃に耐え、歯を食い縛りながら呟く。
「でもね、アタシは今でも神様に助けを求めたいと思わない。祈りたいとも思わない」
押される力は弱まらないが少し後ろに進む速度は弱まる。
「会った事もない神様の助けなんていらない! アタシは、アタシは!」
大カエルを射抜くように睨むアタシは腹にある息を全てを使い叫ぶ。
「自分を信じる! だから、だから、オトウサン、アタシに自分の覚悟を貫く為の力を貸してぇ!!!」
そう叫んだアタシの背を大きな、大きな温かい掌でポンっと優しく叩く感覚が伝わり、思わず背筋が伸びる。
すると、アタシを包んでいた赤いオーラが一気にイエローライトグリーン、オトウサンのオーラの色に染まるのにびっくりする。
「このオーラ……温かい」
イエローライトグリーンのオーラを纏った瞬間、アタシを飲み込みかかっていた大カエルの攻撃を弾き、押す力が消える。
オーラ越しにまだ大カエルの攻撃が続いているのが分かるが、まったく効果がないのに驚いて見ているとアタシの両肩にそっと大きな掌が置かれるような感覚がする。
そこにない掌に手を添えるようにアタシは左肩をそっと触れ、目を瞑る。
もう何も怖くない。アタシは駆けれる!
そう思うと同時にそっと背を押される感覚に抗わずに一歩目を踏み出すとアタシは大カエルに向かって駆け始める。
大カエルの閃光を切り裂くように走るアタシは大カエルと肉薄する。
引き絞る右腕に全ての気を纏わせる。
「アタシが……キタガワ ユウイチの娘のレイアだぁ!!」
振り抜いた拳は大カエルを木端微塵にし、背後にあった偽者が開けた穴より何倍も大きな穴を開けて夜空にイエローライトグリーンの流れ星が帰っていく。
それを見送った後、アタシは精根尽きて背中から倒れていく。
開いた天井に向かって拳を突き出す。
「オトウサン、ありがと」
オトウサンの腕の中で寝た幼い時を思い出しながら意識を手放した。
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