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異形の塔  作者: 紅龍
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塔下

「僕は一目で分かる弱者で、足手まといです。ですが、シキさんはそうじゃない。そして、塔に登るには、『パーティー』が必要らしいです。でも、僕が居たら、邪魔でしょうから」

サンゴはそう言って、微笑んだ。

この街へ着てから、何度人に救われたか。それこそが、弱さの現われ。

そして、先のフルドの様に、邪魔になる者は、旅立つことすら困難。

ならば、自ずと手を引くのは自身に出来る優しさであろう。

「・・・・弱い? そうです、その通り。貴方は心が弱いのです」

「・・・ええ・・・そう、で―――痛っ!」

諦めにも似た表情で、肯定するのを許すものかと、頭を小突く。

サンゴは痛みに飛び跳ね騒ぐが、その程度で、怒りは収まるものかと、にじり寄る。

「そうでしょう、痛いでしょう。でも、私も痛かったのだからお互い様です。それにもし、私が禁忌の兵器とばれたなら、色々と面倒なのです。ですから、貴方と共に歩むのは、狡賢い打算なのだと、理解なさい」

嬉しいやら痛いやらで、目元より、雫が零れ落ちる。

本当は、不安でしょうがなかった。でも、自分に出来る事は何なのか? そう考えた時、此れしか無いと思ってしまった。そして、今でもその決断に後悔は無い。

きっとそれは、誰の目からも明らかで、唯一正しい答えだったのだから。


「ほら、さっさと行きますよ?」

だが、そんな悩みは些細な事だと、笑いかける。

そんな光へ、手を伸ばす。

光は、手を取り、連れて行く。

僕を未知の世界へと・・・。



「はぁ~~~。やっぱり大きいですね~~」

塔の入り口。開け放たれた、門の前でサンゴは上を仰ぎ見、声を漏らす。

「ほんとうに・・・」

シキにとってもちゃんと眺めたのは初めての事。改めてその異形にサンゴと同じく声を上げる。

「オイオイ、そんな処に立ってられたら邪魔なんだが?」

門の前は、冒険者達も通る道。その前で御上りとばかりに、見上げる二人。

歴戦の冒険者からすれば、邪魔者に、声を掛けるのも当然か。

道を開ける為に退いた先では、続々と、冒険者達が塔へと入る。

何時までも眺めていても変らない。ならば、我らも進もうかと、二人も列へと並び往く。

先程の受付と類似するシステムなのか、手形へと手を合わせる事で、冒険者は塔へと入って行く。

「所々に、昔の名残がありますね」

「そうなんですか?」

「ええ、あの簡易ゲートもその名残」

シキの眺める先では、塔への入塔を管理するシステムが、黙々と扉を開く。

「入る者と出る者を記録し、送っているのでしょう」

「へ~~~」

先程の受付へデータを送っているのか、はたまた、別の何処か? この国を管理する者達が分からぬ以上、詮索しても仕方ないと、皆に習い歩を進める。


「さて、そろそろ順番ですね」

日も陰り、周囲の景色は闇の中、されど塔は盛況と、順番を待つ中、二人の順番が訪れる。

「・・・暗くなっても人は多いんですね~?」

火を明かりと使う者として、気になったのか、サンゴが当然疑問を上げる。

シキにしても知るのは過去の光景。ならば、どう答えるかと、頭を捻るが、もしやと思い口を開く。

「・・・昔と変らないのなら、今も光が満ちているかもしれません」

「塔の中なのに、明るいんですか?」

何も知らぬサンゴにとっては、全てが新鮮か、子供らしく疑問を漏らす。

面倒事と、無下にするのは為にならぬと、昔の知識を漁って話す。

「多分、昔のナノマシンが未だに稼動してるのでしょう。ホタルの発光器を模した構造ですので、ぼんやりとした光ですが、多少の明かりにはなるのでしょう」

この世界では捨てられた知識。ただ明るいのだと思われた事実が語られ。

サンゴは既知となった未知の知識に目を輝かす。

暇を持て余した二人のやり取り。しかし、サンゴの知識になるならば悪くは無いか。

何処か、保護者めいた思いを胸に、独り密かに微笑んだ。

それは成長する子供を見るかの如く、微笑ましいが、今更ながら頭痛も感じる。


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