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ChAiN soul Girl  作者: 甘味 亜月
戦闘開始
29/37

戦闘①

 私の手の周りに緑色の光が集まる。それは乃子さんの時の光とはまた違い、渦を巻く。というよりはあちこちから光が直線状に集まっている。という方が近い。空気の震え方や切り裂く様も断続的に続いているというわけではなく、瞬間的に段階的に衝撃が起きているのだ。

「……何してるの?」

 またその光というのは流星のような自然な光ではなく、人工的なプリズムが幾何学的な模様を描いて掌に入り込み、掌の中でまたカクカクと形を作っていくのだ。やがて光は全て掌の中へと集約する。

「……はぁっ……はぁっ……貴方をぶち倒すための……手段ですよ!」

 私は叫ぶ。

罪人入場(シナーアドミッション)!!」

 ぐらっ。と視界が、世界が歪む。集められた光が段階的な波となり部屋に広がったのだ。掌の中の光はカクカクと動き、何か設計図のようなものを建設していく。そして一本の緑色の線が掌から下へと向かい、床についたところでブワッと円が発生した。やがてそれは二つに分かれる。そして、

「……これが私の霊器です!」

 二本のハンマーが右手の前方に建設された。

「ハン……マー?」

「……覚悟しろ!」

 私は二本のハンマーを両手に握る。右手におじさんを殴った血付きハンマー。そして左手には門番さんに貰った昇金槌(のぼりかなづち)。そして、

「おりゃああああ!」

 棟葉さんの方向へと勢いよく駆ける。血付きハンマーを振りかぶり棟葉さんを狙う……が。

「当たりませんよ」

 スっと下の方へと避けられる。が左手の昇金槌(のぼりかなづち)で下から抉るように再度狙う。瞬間的に顔を上へと背け回避した棟葉さんの髪の毛を掠めた。二本のハンマーにはあの世で感じたような重量はない。まるで自分の手のように自由に動かすことができるのだ。その後も右手、左手。と煙を掻き分けながら棟葉さんめがけがむしゃらにハンマーを振り続ける。が一向に当たる気配がない。すべて避けられている。

「あたっ……てよ!!」

「当たりませんって……ていうか……さっきから胸ががら空きですよ?」

 ニヤッと血まみれの棟葉さんが嗤う。

「……しまっ!」

「あなたも……死んでください」

 棟葉さんが腕の無い右手をこちらの方へと向ける。すると、

「っあ!?」

「……あたった?」

 強い衝撃が胸部めがけ撃たれた。煙が円状に弧を描く。何もないはずの腕から、さっきドアを殴った時と比較にもならない程に強い衝撃が放たれたのだ。

「……あ、あ、危なかった……」

 あまりの衝撃で一、二メートルほど後方に飛ばされたものの、左手に握っていた昇金槌(のぼりかなづち)が間一髪盾となり衝撃を和らげた。制服の袖の部分に若干の傷は入ってはいるものの、身体自体にダメージはない。

「ちっ……避けられましたか」

「ありがとう門番さん!!」

 私は再度血付きハンマーで棟葉さんを狙おうとする……が、

「あれ? ……消えた?」

 目の前から棟葉さんの姿が消えていた。

「どこに……いった……の?」

 部屋の中は白い煙が充満している。その煙のせいで棟葉さんの姿が全く見えないのだ。

「……どこ。どこにいるの?」

「言う訳ないでしょうが……別に私は律儀にあなたの目の前にいる必要もないんですから」

「!? 棟葉さん!?」

 少し遠くの煙が円状の弧を描く。

「あの形は……!」

 私はぐっと身体を伏せる。刹那、けたたましい音を立てて私がさっきまでいたところの後方。棟葉さんの部屋とはまた別室の壁が勢いよく破壊された。

「……なんつー威力……あれに乃子さんは……」

 瞬間、私が伏せているところの僅か横が吹き飛ばされた。床の下の断熱材が剥き出しになる。あと十センチ前に顔がでていれば……生きてはいなかっただろう。

「当たりませんかぁ……惜しいなぁ」

 何か対策を練らなきゃ……このままじゃ一方的にやられるだけだ。私は考える……が、とりあえずここにいるのは駄目だ。私は姿勢を低くしたまま衝撃が向かってきた方向へと動く。

 二つの衝撃が向かってきた方向から大体の棟葉さんがいる方向がわかった。……なら二分の一の確率ではあるが、棟葉さんから見て右か左か。あくまで衝撃が来た方向の延長線上ではないほうに逃げることにしたのだ。

 再度、空気が円状の弧を描く。

(こっちに来るなよ……こっちに来るなよ)

 衝撃が部屋の中へと響く。幸いにも私が逃げた方向から反対側へと撃たれたようだ。

「あら、また外れちゃいましたか。しぶといですね」

 なんとか一発は免れた。だが何か手を見つけなきゃ……やられる。私は視野をフルに拡げる。何か……何か手があるはずだと、そう思ったからだ。

 目の前は煙で真っ白。だが伏せているおかげか、さっきよりは大分視界がいい。横を向けば棟葉さんの部屋ではない、家族か誰かの部屋の壁。後ろには当然ながら無残に破壊された壁。そして手元には二本のハンマー……。

 そこまで考えたところで私は乃子さんがさっき言っていたことを思い出した。

『ここの家の間取りは一階が4LDK。二階が子供部屋が二部屋と夫婦部屋が一部屋。それにクローゼットとトイレが備え付けられている』

 つまり、ここの家には……あと二部屋あるのだ。なら……少しでも時間稼ぎをしたい。それに、とりあえずは煙を晴らしさえ出来れば……少なくとも逃げ回るだけじゃなくなる。見えさえすれば近づきハンマーで戦うことができるはず……そのためには時間を稼ぐだけじゃなく煙をなんとか晴らすことが大前提なのだ。そのためには……煙をどこかに出さないと行けない……。なら煙を一体どうやって出すか? 時間を稼ぐにはどこかの部屋に入り込むとして、煙は……。

 瞬間、私の頭の中にある考えが浮かんだ。

(……思いついた! これなら……なんとかはなるかも!)

 視界の隅にはまた、空気が円を描く光景が見えた。

(一か八かではあるけど……)

 私は考えを実行することにした。

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