妖怪ポ○トに連絡届いて妖怪ア○テナ的な不思議パワーでビビビみたいな
「結構……歩きますね」
「うん……正直集合場所ミスったよね」
「これだったら昨日の公園に集合したほうが良かったんじゃ……」
「言うんじゃない。割とマジで私もそう思ってるんだから」
噴水のある公園を出てからおよそ30分。恋人まみれの坂道を真顔で通り過ぎ、坂の下にある全国展開しているスーパーマーケット近くの自販機でお茶を買った私達は、私の自宅がある見慣れた住宅街を歩いていた。いつも通る道なのに目的は幽霊との待ち合わせ。当然ながらそんな理由でここらを歩こうなんて人生初である。
「待ち合わせって本当にこっちの方向なんですよね?」
「うん。それは間違いないよ。この前、つーか昨日調べてみたけど、どうやらこの辺みたいだし」
そういいながら乃子さんは自販機で買った紅茶をぐいっと飲む。両手でペットボトルを掴んで飲む姿は、やはり年上には思えない。
「調べたっていうのは……門番さんから情報が貰えて、それをどうこうとかですか? 勝手なイメージですけど、こうなんか妖怪ポ○トに連絡届いて妖怪ア○テナ的な不思議パワーでビビビみたいな」
「んにゃ、ラ○ンの通知来て、後はグー○ルと実際の現地下見やね」
「思ったより現代的だった!?」
「そっちの方が効率いいじゃんねー。時代はITよIT」
そう言いながら乃子さんはグビグビと紅茶を飲み干すが、捨てるとこが見当たらなかったらしい。背負っていたリュックサックの中に、ホイッと投げ込んだ。
「昔は、家のポストに入れられたり、電話で来たりってのがあったらしいんだけど……ほら、一応ルールで周りの人に、繋魂使チェーンソウルガールってのが、ばれちゃいけないってのがあるじゃん?」
確かそんな項目があった気がする。
「だからさ、そういうことをするよりは、遥かにこういうやり取りの仕方をするほうがバレるリスクが少ないじゃんね。電話とかポストだった時は、もし当人より早く家族が対応しちゃったら、通報されたり、なんか叱られたりとかあって……まぁ一言で言えば「駄目だった」人がいたらしいんだけど、今みたいにこうやってSNSでやりとりをやっているのを見られたところで、昔とは違ってふざけてるくらいにしか見られないだろうし」
「なるほど。確かにそんな気がしますね」
「でしょ? それに何より楽だしね」
ゴソゴソと乃子さんがリュックサックを探る。
「あ、そうだ津池さん。ところで今何時かな?」
「えぇっと……ちょうど五時前ぐらいですね」
「ならいい具合の時間かも。そろそろ場所につく感じだね」
そういいながら乃子さんは、リュックサックからA5版のノートぐらいの大きさの手帳のようなものを取り出した。高そうな茶皮のカバーが被された古い手帳だ。乃子さんはその紙へと視線を落とし、ときたまキョロキョロと周りを見渡しながら住宅街を歩いていく。
「それ、何が書いてあるんですか?」
「ん、ああ。今日合う幽霊の特徴とかやり残したこととか色々と書いてあるんだわ。繋魂使チェーンソウルガールをやってるとかかせない一品だね」
「なるほど。そこは現代的っつーかデジタルじゃ無いんですね」
「うん。天界かどっか知らないけど幽霊の情報はこれに直接書き込まれていくからね。ここだけは紙にしとかないといけないんだよねー」
「え? 直接書き込まれる?」
「うん。気がついたら結構詳細に書き込まれてるよ。ほれ」
そういって乃子さんに見せられたページを見ると、幽霊の顔の特徴、年齢、未練の内容、趣味特技、家族構成。などなどその人の人生や情報を簡潔にまとめたものがページの中にびっしりと書かれていた。
「おお……おぉ何というか」
「こんだけの情報をスマホで見るとなると正直、面倒くさいからね。ここだけは不思議パワーを使ってアナログなんだよねー」
「なるほど……なんか便利ですね不思議パワー」
「ね。超便利。幽霊集めも勝手にやってくれればいいのに」
「そしたら私達が生き返れないですよ」
「それもそうか」
ニャハハ。と乃子さんが笑う。
「ま、これは気がついたら津池さんのとこにも届いてると思うんで……まぁバッグの中とか気をつけといて」
「気がついたら届いてるって……」
「だって郵送で送るわけにも行かないでしょ。律儀に手渡し渡すなんてこともあれだし。私あてに1回届いてから貴方に届けるっていうのも二度手間だしねー」
「……それもそうですね」
「でしょ? まぁ楽しみにしといて」
そこまで言ったところでピタッ。と乃子さんが止まった。
「? どうしたんですか?」
乃子さんがスマートフォンの画面に視線を落とす。そこには地図が映しだされており、ノートの内容と見比べているようだった。乃子さんがリュックサックから棒キャンディーを取り出す。
「そろそろついたっぽいや。ちょっと路地入ったら待ち合わせ場所だね」
乃子さんが指を刺した方向を見ると、若干細い路地があった。人は普通に通れるが車がすれ違うとなるとまぁ無理だろう。というくらいの幅の道だ。
「……こっちに幽霊がいるんですね」
「いるいる。んじゃ早速会いに行こうか」
乃子さんが、ロボットのような動きで大袈裟に角を曲がる。先ほど取り出した棒キャンディーはどうやらいちご味だったらしく再びリュックサックの中へと戻していた。
「……今更ながら質問なんですけど幽霊に会ったからって憑かれたりはしないですよね?」
「まぁ……私が現に憑かれてないから多分大丈夫っしょ。というか人に憑かないように未練を叶えてあげるのが私達の仕事だし」
「……確かに言われてみれば」
「そそ。だからまぁ安心して、いざっという時は私がなんとかするし」
「……なんとかする?」
「あ、そろそろつくよー」
不穏な単語が聞こえた気がしたが、そんなことお構いなし。といった様子で乃子さんはずんずんと歩いて行った。
私も若干どころかかなりの不安を抱きながら、乃子さんの後を続き路地へと進んでいった。




