表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ChAiN soul Girl  作者: 甘味 亜月
お仕事開始
18/37

全力でいないいないばぁをしていた。

 翌日の放課後、私は坂道(恋人の聖地)の上にある公園の噴水の前にいた。翌日の昼休みにさっそく堂六さんからの連絡が届いたのだ。『本日四時半! 坂道近くの公園にある噴水脇に集合っ! 遅れないよーよろりんこ☆」という内容である。

 そういうわけで私は今、噴水の近くの花壇に腰掛けており、視線を上げてみるとベビーカーを引いた主婦や、買物に連れられてきたのかお菓子を頬張る子ども。そして噴水の周りを我が物顔で歩くハトの群れが公園の中をガヤガヤと賑やかにしている様子が目に飛び込んでくる。

 そしてそんな公園内は昼過ぎまで降り続いていた雨を突き破るように伸びた飛行機雲と、澄んだ空気に映える明るい夕焼けと相まって、至って平和で穏やかな空気に包まれているのだ。

 ただ一箇所、私達の周りを除いては。

「……堂六さん」

「ん? どうしたの? てか乃子でいいよ?」

「……乃子さん」

「どしたん?」

 子ども達と混ざっていても違和感が無いんじゃないか? というぐらいに童顔で小柄の堂六さん。もとい乃子さんは、昨日と同じ黒色のセーラー服に身を包み、袋から取り出した棒キャンディーを頬張ったまま、キョトンとした表情で私の方を横からみつめる。

「なんか、あのー……なんていうか……この辺だけやけに空気が沈んでないですか? 鳩ですら私達の周りに集まってこないんですけど」

「あー……だろうねぇ」

 だろうねぇっ。て。

「おかしいですよね? 乃子さんが来るまでは私、鳩に餌あげてたんですよ?」

「んで、私が来た途端いなくなっちゃったと」

 私はコクリと頷く。私がこの公園についたのは、確か四時頃だったと思う。六限までの授業とHRを終えた私はさっさと学校を飛び出し、鳩に餌でもやろうかな。とパン屋でパンの耳を貰いここに来たのだ。

 そういうわけで噴水脇に自転車を置いた私は、乃子さんが来るまでの間は。と公園に群がる鳩たちにパンの耳をばら撒いていたのだ。しかし、それが今ではどうだろうか。乃子さんが到着した瞬間、私の目の前に群がっていた鳩は四方に散らばっていき、結果としては散らされたパンの耳だけが無残に転がっている。視界にはちょくちょく鳩は入ってくるのだが、決してこちらに近づこうとはしない。ついでに清掃ボランティアのおじさんも、パンの耳を食べてもらえない私に同情してくれているのか、こちらを気にかけけはいるものの近づこうとはしない。

「まぁー……なんていうか、そうだろうねぇとしか言えないよね。職業病っていうかなんて言うか」

 そう言って乃子さんは口の中で棒キャンディーを動かし始める。

「ほらー、我々って一度死んでるわけじゃない?」

「ええ、そうですね」

「だからさー、その時点で既に、明確に言えば私達って死人になってるんだよね」

「……なるほど」

「だからー普通の人達にはなんとも思われないっちゃなんとも思われないんだけどー……やっぱ動物は霊感が鋭いんだろうね。よくさ、何もないところに犬が吠えるっていう話聞くじゃん? そういうのって実際たいてい霊がいるんだけど」

「あ、あれって本当に霊いるんですか!?」

「おー、いるいる。あとは猫とか赤ちゃんがじーっとどこかを見てるとかね。ほら、あのベビーカーの赤ちゃんとか私の方をじっと見てるでしょ?」

「あ……本当ですね」

 そう言って乃子さんが指を指す方向を見ると、赤ちゃんがじぃっと乃子さんの方を眺めていた。何かに惹き付けられるようにじぃっと見つめる様はそこだけ切り取って見ると、確かに異様な光景である。そのまま暫く見ていると赤ちゃんが急に泣きだした。乃子さんの方を見ると、全力でいないいないばぁをしていた。私は思わず、軽く乃子さんを小突いた。

「何してるんですか」

「痛ったいなぁ」

 乃子さんは小突かれたところを軽くさすった。

「もー。一応私先輩なんだからね?」

「すみません。なんか自然と出ちゃいました」

「自然とって……いや、まあいいんだけどさ」

 そう言いながら乃子さんは、二本目の棒キャンディーを取り出す。

「まぁ、そういうわけで、私達二人含め繋魂使(チェーンソウルガール)はそこにいる人達と比べたら遥かに霊に近いわけだ。だから周りの人と比べて影が薄かったり、さっきみたいに霊感が強い人だったり動物だったりに過敏に反応されたり。そういうことが起こる」

「なるほど……つまり私達は霊体? に近いってことですか?」

「そうそう。ていうか実際、人間と霊の間だからね。さっきもいったけど死人っちゃあ死人だし。きっちり3年間経つまでは正確には生き返れないのですよ」

「なるほど……あれ? だったらなんで私の時は反応されないで乃子さんが来た途端にあんな感じに?」

「まぁ、それは……暫くすれば分かるわかる」

 そう言い終わるかな否かのタイミングで、乃子さんはバリバリバリ。と勢い良く棒キャンディーを噛み砕いた。

「んじゃあ、そろそろ移動しようか。実際にやってみないとわからないこともあるだろうし」

 「よっこいしょーっ!」と言いながら乃子さんが勢い良く立ち上がる。鳩もついでに四方に飛び去る。

「移動ってどこに行くんです?」

「んぁっ? だから実際にやってみるんだって」

 乃子さんがポケットから三本目の棒キャンディーを取り出す。

「さっそく仕事。五時に待ち合わせしてるからついてきて?」

「待ち合わせって……幽霊とですか?」

「そそ。ほら行くよ?」

 乃子さんが私の方にキャンディーを放りながら、ずんずんと歩いて行く。

「私、いちご味苦手なんだよねーっ」

 そう言いながら四本目の棒キャンディーを取り出す乃子さんは、まるで友達の家に遊びに行くかのような様子でこれから幽霊と会うだなんてことは微塵も感じさせない。そんな雰囲気だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ