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秘密基地で遊ぼう  作者: まる
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秘密のベッド

秘密のベッド




====================


マットレスの下って、物を隠す時に真っ先に考える場所だよね?


====================






魔法を隠したまま、如何に魔法を使いこなせるか・・

乗りかかった船にそのまま乗る言い訳を、ザルトーニュクスはそう考える事にする。


自分は正義の味方ではない・・




「次に野盗の情報がありそうなのは・・、冒険者ギルドと商業ギルドかな」


そう考えると、まずは冒険者ギルドへと向かう事にする。


するとありがたい事に、切っ掛けが向こうから歩いてきたのである。




依頼板には、緊急という事で確かに野盗退治の依頼が張られていた。


「日付を見るとかなり前から依頼されている様だな」


依頼の条件を見ると、誰でも、常時、生死問わず、期間問わずと破格である。

しかしこの扱いでは緊急とはいえ、いつかやればいいレベルで、誰も手を付けないだろう。


「おっ! この依頼まだ残ってるぜ。俺たちがやってやるか」


職員に最近は町の南に出たと聞くと、俺たちも南にと出て行った。


「ああいう冒険者もいるのか」


誰も手を着けない依頼を受けた冒険者に興味をひかれ、彼らの事を職員に聞くと、悪徳商会※の専属冒険者らしい。


※プライバシーの配慮から、音声と表記を変更してお届けしております。


きな臭さを感じ【隠密】を使って後を付けたら、更におかしな事に彼らは北へ向かっていく。


「(ふむ野盗の情報は南だったし、彼らも知っているはず・・。

悪徳商会の冒険者・・ね。一発目から当たりを引いたか?)」




二日程進み野営をしながら、何故か街道を見張るかの様な動きをする。


見張り始めてから二日目に、村からの行商を終えた荷車がこちらに向かってくる。


冒険者たちは装備を替え、顔を隠して荷車を囲む様にして剣を突き付ける。


「多くを語るつもりは無ぇ。分かってんだろう? 荷か命どっちにする?」

「ひぃっ!?」


ザルトーニュクスは悪いと思いながらも、傍観に徹する。

流石に流血沙汰になれば割り込むつもりで、【鉄壁】【強化】【探査】の魔法を掛けてはいたが。


しばらくすると行商人だけを追っ払い、荷車を人目の付かない処へ隠す。

その後荷だけを奪い、森を越えて別の街道の傍に隠す。

途中でその内の一人が、町の方へ向かって行く。


「何時もながら、この作業が面倒だ」

「わざわざ森の中を、この荷物を抱えて運ば無くちゃいけねぇんだからな」

「そう言うな。これをしないと足がついちまうんだから」

「へいへい」


文句を言いながらそのまま何往復かして、全ての荷を移し終えると町の方を見守る。


分かれた一人が伝令役だったのだろう、町の方から空の荷車が来て荷物を載せる。


「じゃあ、あんたらはいつもの様にな」

「分かっているよ。適当に魔物を狩りながら、南にいたアリバイ作ってから帰るよ」

「出来れば護衛がいい」

「ふん、そうそう運よく荷車が通るか」


やり取りの後、荷車はそのまま町へ冒険者は南の方へと、それぞれ分かれて行く。


「(なる程、そう言うカラクリか。

ついでに荷物は何処へ運ぶのか案内して貰おう)」


その場で野盗を捕えるのではなく、黒幕の顔を見せて貰う事にする。




奪った荷を乗せた荷車は、例の悪徳商会の倉庫へと入っていく。

ザルトーニュクスも【隠密】を掛けて、荷車と一緒に入る。


すると悪徳商会の会長と思われるオークの様な人物※が待っていた。


※プライバシーの配慮から、音声と表記を変更してお届けしております。

オークとは二本足で歩く豚で、代表的な魔物の一つです。


「会長、荷物が届きました」

「分かっておる。荷を卸せ確認する」


奪ってきた荷の目録を帳簿に付け、倉庫の中の他の荷と混ぜてしまう。


「後は任せる。冒険者たちは?」

「何時もの様に」


従業員の声に、満足気に頷くとオークの様な会長は自室へと戻る。


「(結構、悪どい事やってるんだな。

そうそう、もう一つ大切な事を忘れないようにしなくちゃね)」


ベッドの下に帳簿を隠すのを見届け、念のためと内容に目を通す。

元に戻した後、もう一つを確認すると【転移】でその場を立ち去る。






町長として今日一日、色々な事に頭を悩ませ解決しても、夜まで残る仕事の山。

溜息を吐く間もあればと、書類に目を通し、必要な物にサインをしていく。


唐突に背後の窓が叩かれる。


「ん? 何だ?」


窓を開けると、屋根からの縄にぶら下がる人物が目に入る。


「・・何をしているのかね」

「町長にご相談したい事があってね」

「ならば、正式なアポイントを取りたまえ」

「緊急かつ極秘な事で」


こんな夜更けに、縄にぶら下がった人物の緊急極秘とは何か。


「手がそろそろヤバいので、入れて貰えると助かる」

「・・入りたまえ」


割と長く考え込んでいたのか、掛けられた声に止む無く呼び込む事にする。




腕を揉み解す人物に問い質す。


「緊急かつ極秘の案件とは?」

「悪徳商会のオークについて」

「・・ほぉ」


野盗と専属冒険者の関係、オークの考えた筋書き、裏帳簿のありかを話す。


「それで?」

「あんたはどうする?」


それだけの証拠があれば、捕まえる事は出来るだろう。

何故町長である自分の所に来たのか?その確認をすると逆に聞かれる。


「どうするとは?」

「あんたが手を下すと言うなら手伝おう。しないなら勝手にやる」


町長は侵入者に真意を問うような視線を向けるが、張り付けられた笑顔からは何も読み取れない。


「どうやって?」

「協力を得られる方のでいいか?」


侵入者の案に耳を傾けている内に、町長の目が見開かれる。


「それは・・」

「もちろん悪人という前提で行うんだ」


それは最初から罠にはめるつもりの内容だった。


真っ黒だが証拠が無いという事で、手を拱いていたのも事実。

侵入者の話を信じるのであれば、どちらに転んでも悪徳商会のオークは破滅しかない。


「分かった。こちらも腹をくくろう」

「あっそう」


ザルトーニュクスは、町長の決断を特に気にした様子も無く生返事を返す。






数日後、悪徳商会のオークはグルナート商会の会長の訪問を告げられる。


「分かった、お通ししろ」


表面上は普通の付き合いであっても、向こうが毛嫌いしているのは知っている。

それなのにわざわざ向こうから出向いてくる理由が分からない。


扉がノックされ、案内されたグルナート会長が通される。


「いやー、ようこそお越しくださいました」

「お忙しい所、突然おじゃまして申し訳ありません」

「いえいえ、構いませんよ」


にこやかに対応しながらも、値踏むかの様な視線を向ける。


「折り入ってお願いがありまして」

「ほぉ、グルナート会長のお願いとは。これはこれはお断りできませんな」


ニコニコより、にやにやと浮かべる笑みを見ない様に話をする。


「このたび町長から直々に、ノース市市長へ届け物をして欲しいと依頼がありまして。

自分たちだけの護衛で問題ないかと考えていたのですが、町長から非常に大切な物なので、今までの達成率から、悪徳商会の護衛を雇った方が良いとの助言を頂きました。

お願いできませんか?」

「ぶふぅ、そうでしたか。それはそれは大変光栄です。直ぐに選りすぐりを準備いたしましょう」

「お手数をお掛けします」


鳴き声かと思わせる声を出しながら、うんうんと頷いている。

しかし悪徳商会のオークの頭の中では、損得勘定のそろばんが高速で弾かれている。


「何時、出立の予定でしょうか」

「念の為、極秘という事でお願い出来ませんか。何時声が掛かっても良い様に」


こちらから情報が漏れる事を疑っているのだろう、この程度は予想の範囲である。


「うむー、分かりました。可能な限りご要望にお応えしましょう」


グルナートが意外そうな表情を浮かべるのを満足げに眺める。




にこやかな笑顔でドアまで送った後、真顔になって部下を呼び寄せる。


「聞いていたな?」

「勿論で」

「今回は冒険者に泥を被ってもらおう」

「よろしいので?」

「なーに良い機会だ。ここらで一回か二回ぐらい失敗した方が得策だ」

「分かりやした」


直ぐに部下は冒険者の元へ走る。


「グルナート商会には、いたーい目を見てもらおうか、ぶふっふっふっ」


悪党商会からは、時折思い出したかのように気味の悪い笑い声が響いていた。






数日後、ノーウの町からノース市へ向けて荷車が出発する。


「グルナート商会さんよ、あんたの所の護衛は?」

「先に行って、安全を確認しています。直ぐに合流しますよ」

「そうかいそうかい」


余りの警戒ぶりに笑っているが、ザルトーニュクスが合流した際、以前にぶちのめされた者がおり、内心驚き仲間に警戒が伝えられる。




そして三日目に、彼らは盗賊に囲まれる事になる。


「手筈通り私と護衛で野盗を撃退するー。そのまま進むんだー」


ザルトーニュクスと護衛が残り野盗と対面し、荷車を先に行かせる事にする。


「分かりました!」


ザルトーニュクスが護衛たちの前に立ち、野盗たちに質問する。


「さてとー。お前たちは誰に・・」


護衛たちの剣がザルトーニュクスに振り下ろされる事で、言葉が遮られてしまう。


「なっー、 一体これはー」

「あんたには悪いけど、ここでオサラバだよ」

「グルだったのかー」


切りつけた時の手応えに違和感を感じたが、素人くさい演技と非常に棒読みな台詞に気を良くしたのか、護衛と野盗の非常の刃が襲い掛かる。




町長の荷は、悪徳商会の別動隊によって奪われてしまう。






「町長の荷がこっちに戻って来るが、準備は良いか」

「あぁ、何時でも踏み込める様になっている」


ザルトーニュクスが、町長の執務室で現状を報告する。


「タイミングを間違えるなよ。悪徳商会の倉庫に入ってからだぞ?」

「分かっている」


護衛と野盗は、【探査】【鉄壁】【強化】の魔法を施したザルトーニュクスに敵うはずも無く、既に捕えられて、精神系の魔法で町へ帰る様に指示してある。


歩きっぱなしと空腹は、悪事の代価の一つである。


「ちなみに町長の荷って直ぐに分かる物なのか?

荷を確認させてくれなかったらどうするつもりだ?」

「その点、抜かりはない」

「ふーん、まぁそこは任せてあるからいいか」






荷車が倉庫に運び込まれて、町長の手の物が踏み込む。


悪徳商会のオークは、慌てず騒がず冷静に対応してくる。


「いきなり、人の倉庫に踏み込んでくるとは、町長とは言え非常識ですぞ」

「グルナート商会に依頼した荷物が、こちらに運び込まれたと聞いてな」

「いったい誰がそのような戯言を」

「誰でも良いではないか。潔白の証明のために、荷を改めさせてもらいたい」

「お断りいたします」

「むっ!? 何故だ」

「この荷はお客様よりお預かりした大切な物。確たる証拠が無くお見せ出来ません」


例え町長であっても、客との信頼を大事と言う姿は商人の鑑である。


しかしここまで頑なに隠そうとすれば、疑って下さいと言っている様な物である。


「尋ねるが、その荷は私が預けた物では無いと言うのだな」

「勿論でございます。懇意にしているお客様の物です」

「客から預かった荷であり、何が入っているか承知しているのか?」

「勿論でございます。中身はお教えできませんが」


預かった荷について、ひたすら平然と秘密厳守を貫き通す。


その時、犬が吠え始める。


「むぅ!? 一体何の騒ぎです、これは?」

「魔薬犬が反応している!」


魔薬犬の一言に、悪徳商会のオークは目を見開く。


「そんなまさか・・」

「法により、荷を改めるぞ」

「お、お待ち下さい」


荷を強制的に開け、出てきた物を確認すると問いかける。


「これらは私が依頼した物の様だが?

私が依頼した物では無いのであれば、貴様が取引をしている荷か?」


問いかけて振り返るとそこには、悪徳商会のオークは居なかった。


「逃げたか! 追い掛けて取り押さえろ」

「はっ!」




追い掛けると、自室の金庫の前で、膝をつき呆然とする悪徳商会のオークを見つける。


「無い、無い! わしの金が、宝石が・・」


財産を奪われ、逃走する気力を奪われ、廃人の様になっていた。




ザルトーニュクスは町長が倉庫へ踏み込むと同時に、前回調べて置いたもう一つの方、悪徳商会のオークの金庫へと向かって行く。


「【悪食】のコントロールはやっぱり難しいな。中身まで食わせそうだ」


【透過】の魔法と併用して、何とか鍵の部分だけを削り、中身を失敬して【転移】する。




町長は配下の者に命じて、悪徳商会のオークや商会の従業員を捕えさせると、他の証拠品や帳簿を押収する。


町長は空の金庫をちらりと見ると、フンと鼻息を一つ吐いてそのまま見なかった事にする。






数日後、グルナート商会へある相談に訪れたザルトーニュクスは、グルナート会長の執務室へ通される事になる。


「悪徳商会のオークが捕まりました」

「ふーん」


さして興味がある訳でも無く、右の耳から左の耳へと聞き流す。


「町長から、ザルトーニュクス様へです」


ザラっと貨幣の擦れる音のする皮袋が前に置かれる。


「これは?」

「野盗たちが犯罪奴隷となりましたので、その報奨金と冒険者ギルドに出していた野盗退治の依頼達成の報酬だそうです」


犯罪者を生かしたまま捕まえると、報奨金として奴隷に落とした時のお金を受け取れる事を、この時初めて知る。

加えて冒険者ギルドの依頼の方も、町長が上手く取り計らってくれたようだ。


「そっ、じゃあ有難く」


そのまま皮袋を受け取る。


「誰かわかりませんが、突然現れた救世主のお蔭でこの町は救われました」

「町長のお蔭だろう。

救世主? 結果良い事であっても、やっている事が悪なら悪党に変わらんと思うよ」


自分が計画した事を暗に告げ知らせるが、町長より大体の事情を聴いているグルナート会長は黙殺する。


ザルトーニュクスは、出されたお茶を知らん顔で啜る。





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