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秘密基地で遊ぼう  作者: まる
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秘密基地を作ろう

秘密基地を作ろう




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部屋の模様替えって、計画する時は何でも出来るような気がしない?


====================






宿屋のベッドの上に寝転ぶと、何度目かの溜息と一緒につい独り言が出てしまう。


「はぁ・・、これからどうするか」


食事付きの宿のため、夕食は既に済ませている。


腹は満ち足り、後はベッドの上で微睡む至福の時間が待っているだけのはずである。




では何故ブルーな気分になるのか?


先程、店でダンジョンのドロップ品を売ってきた時の出来事が原因であった。




今回は何とか食事付きで普通クラスの宿に泊まることが出来たが、それもあと1回が良い所で、初級中級ダンジョンをクリアしてもその程度の金額にしかならなかった。


何故このようになったのか・・。


それはサウス地方の特性が大きく影響している。




そもそもサウス地方は上級と、最上級のダンジョンが売りの一つである。

というかそれしか目玉はない。


そのため冒険者たちも、それに合わせた強者ぞろいで、身に付けている装備も上物である。


そこに今更、初級中級ダンジョンのドロップ品の需要があるだろうか?




例えばサウス地方を除く、他の三地方は気候や衣食住が安定しており、医療や装備もそこそこ揃って、ダンジョンデビューには打って付けであった。


そして中級ダンジョンで物足りなくなった冒険者たちが、サウス地方へ集まってくるのだ。

勿論肩慣らし程度に1回か2回程度は初級や中級ダンジョンに潜りはするが・・


サウス地方の初級中級ダンジョンで、冒険者を殆ど見なかった理由と魔法をバンバン使用する事の出来た理由がこれだった。


逆に言えば、魔法の存在がばれずに済むには、サウス市近郊の初級中級のダンジョンがベストで幾らでも稼ぎ放題である。


しかしアイテムは買いたたかれて、2泊程度のお金しかならないと言う堂々巡り。


至福の時間にも拘らず、溜息の一つも出てこようというものだ。






ダンジョンには宝箱も存在してはいるが、少し質の高いアイテムが出てくる程度で、需要の高いアイテムが入っているかは運次第。


宝箱や魔物からのドロップ品には、武器や防具、薬は元より、それらの素材となる物や、料理や薬の製法と言った本や巻物、ガラスや陶磁器と言った物まで出て来るらしいが・・


他にもこちらの世界では魔法が無い分、スキルと言うモノが存在し、それを覚えたりレベルアップするための本や巻物もドロップ品としてある。

かなりのレアアイテムの様で、殆どが最上級ダンジョンしか見つかっていないらしい。




何より一番のショックだったのが、魔石がイミテーションジュエリーとして扱われていて、いざ売ろうとした時に大笑いされた時だった。


魔石は魔物の体内にある魔力の結晶であると言われており、魔法で魔力を消費してしまうと、体内に魔石の結晶化や精製が起こりにくく、入手が非常に困難となり高額で取引されている物だった。


魔石は色で属性効果を、大きさ、透明度で強さが決まり、魔力節約や半恒久的魔法装置の燃料として使われていた。


しかし魔法の無いこちらの世界にとってゴミ同然の価値しか無く、ダンジョン内では見向きもされない。






これからの生活を考えベッドの上で悶々とで思い悩み、無意識から例の魔法を起動する。


「我は求める。わが知識の泉から答える者を。【助言】」

『質問を』

「どうしたら良い?」

『問題定義が不十分なため、回答不可』


そこで【助言】に、細やかな条件付けと思いながらも愚痴を零す・・。

やはりぼっち対策で開発されたのではないだろうか。


『現状からの打開策として三つ考えられます』

「教えてくれ」

『一つ、定期的な収入の確保』

「ダンジョンからという事だろう」

『肯定。ただしそれを毎日続ければ、素材の需要と供給が簡単に崩れて、比較的高値のボスドロップ品でさえ値下がりすると考えられます』

「な、なるほど・・」


確かにその通りである。

いくら日銭を稼ぐためとは言え、薄利多売していれば、直ぐに需要と供給のバランスが崩れるだろう。

唯でさえ買い叩かれているのだ、更なる悪循環を招く。


『故に、一定期間を置いて売却する事が良いと思われます』

「しかし、それでは日々の生活が成り立たないぞ」


生活が出来なければ意味が無い。


『二つ目の打開策へと連動します』

「ふむ・・、個別では無く繋がっているという事か」

『肯定。支出の減少』


増やすことが出来なければ、減らさないという事だろう。


「どうやって?」

『一番支出が大きいのが、宿屋を利用しての宿泊となっています』

「あたりまえだろう。野宿でもしろというのか?」


無論場合によっては、野宿もやむを得ないだろう。


『よって自宅を所持する事を提案いたします』

「おいおい、そんな金があれば苦労しないぞ」

『購入では無く、作成です』

「作成?」

『ダンジョンに近く、魔法を含め目立たない事を考えて、地下に作成が良いと考えます』

「地下に・・作る? はっ!? 魔法でか!」


ガバッとベッドから飛び起きる。


『肯定』

「なる程。一番かかっている宿代を減らせればかなりの節約になる。

しかも買うのではなく、魔法を使って地下に家を作るのであれば元手は不要」


幸いサウス地方は、殆どが砂漠と荒野である。地下であれば全く問題は無い。


「よし、その方針でいこう」


自分が生まれた時には自宅や研究所は既にあり、引き継いだため購入ではなく作るという考えがすっぽりと抜けていたのである。


『最後に』

「三番目の案か。さっきの2つと繋がっているのか?」

『否定。最終最悪の手段となります』

「最終最悪? どういう事だ?」


あまりに物騒な回答に驚いて聞き返す。


『魔法の悪用です』

「なっ!?」



前の世界では、魔法を悪事や犯罪に使用する者は、例外なく死罪となる。


これには単純明快な理由が存在する。

魔法を使う者を拘束する事は、かなりの労力や費用がかかる上に、反撃や逃走、被害拡大と言った危険が生じるためである。

勿論例外や情状酌量の場合もあるし、冤罪が無かったかといえば少なからずあった。

しかし先程の理由が優先され、禁固刑や労働刑といったものはなく原則はその場での死罪である。



『このパラレルワールドでは魔法は無く、それに伴う刑法も存在しません』

「確かにそうだろうが・・」


魔法の無い世界で、魔法を使う事はまさに無敵状態である。常に初見殺しの状態である。

それは初級中級とは言えダンジョン内で証明されている。


あらゆる悪事を行う事が可能だ。

だからこそ最終最悪の手段と言ったのだろう。


ちなみにこちらの世界では、鍵開けや探索、罠外しといった魔法が無いため、それらを専門的に行う盗賊という職業が存在するらしい。


自分が最終手段は盗賊と同じなのだが、職業としてギルドの登録していると盗賊と呼ばれ、それ以外は野良の盗賊、略して野盗である。


「分かった。一応候補の一つとして考えておくよ」


自衛は別にして、流石に自分が野盗に成り下がるのは本当に最終手段としたかった。






最終最悪の手段に手を染める前に、まず出来る事・・、家作りから始める事にする。




まず最初は場所の選定からである。


今の所、ダンジョンのドロップ品が生活を支える唯一の手段である。


安定した収入を得るには、将来的には上級もしくは最上級のダンジョンに入る事が必須となってくるだろう。


となれば、それらが集中しているサウサの町の近くがベストとなるし、目立たない様に地下に作るのも決定事項である。




出来る事ならば今後を考えて、ダンジョン内で悪目立ちしない様な、スキルに似た様な魔法や魔法陣の開発も必要だ。


そもそも魔法とは、自分の体内や周囲にある魔力を、自分のイメージ通りに変化させる能力である。

能力である以上、強弱はもとより有無さえあり得る。


では弱いもの、無い者たちは、前の世界で虐げられたのか?

答えは否である。


人類は一致団結して、邪王に立ち向かう必要があった。

弱ければ強める魔法を、無ければ使える様になる魔法を開発していったのである。


研究一筋のザルトーニュクスは、その点に関しては今回の魔法開発の機会に非常に喜び感謝していた。






場所の選定に続いて、間取りを考える。


必要と考えたのが、まず寝る所と風呂、トイレであった。


料理などほとんどした事が無いが、外食するより安上がりになるため、台所もこの際作っておき、一応食べる場所も用意するか考える。


個人的な好みではあるが、彼個人いきなり部屋に転移より、玄関から家に入りたいと思っているので、玄関となる場所も用意する事にした。






場所の選定と間取りが粗方決まると、実際に作成を始める。


地下の場所を魔法でがっちりと固めて、一枚の岩の様にして崩れない様にする。


「崩れない様に固めつつ、減った分を何処からか集めてくると・・【土塊収集】起動。

彼の場所を押し固めよ【圧縮】」


広範囲にわたって、少しずつ周囲の土を集める魔法を魔法陣で起動。

集まってくる土に、少しずつ力を加えて固めて行く。

ゆっくりと、慌てず急がず、少しずつ少しずつ基盤を作っていく。


「ふぅー、こんなもんか」


一枚の岩盤の様に固め終わると、今度は地下を透視しながら少しずつ削っていく。


「削り過ぎない様にしないとな。

【透過】起動。

【作図】起動。

我に従いて、喰らえ【悪食】」



【透過】は、物質を透過させる魔法である。

これも覗きなどの犯罪に使われる可能性があり、許可された者が許可された場所にのみ使用が許される。

まあ透過できるのは物質だけで、うすーくでも魔力の幕を張るだけで防げる。


【作図】は、自分の作りたいイメージを、実際の場所に疑似的に見せてくれる魔法である。


【悪食】は、物質を消失させる魔法である。

最強そうではあるが所詮物質限定であるため、魔法で保護された物には役に立たない。



【作図】に沿って、ゆっくり丁寧に、物質を消失させていき、【透過】で削った結果に間違いがない事を確認していく。


部屋全体の大きさは約20キュビット(960cm)の四角形で、高さは10キュビット(480cm)である。


真ん中が壁で仕切られており、左側は外壁の端から約5キュビット(240cm)の所で上下に、右側は上下に二分割する所で、真ん中の壁と垂直に壁が作られている。


右側の上半分が、寝室兼書斎、下半分が風呂となっている。左側の上側がダイニングキッチンで、下側の狭い方は更に半分に壁で仕切られ、玄関とトイレとなっている。


ダイニングキッチンに、それぞれ行き来出来る様に穴を開け、後々は扉を付ける予定だ。


玄関となる場所には、しっかりとマーキングして置く。


玄関と外とは直結で繋がっている魔方陣を設置する。

南部地方は砂漠と荒野なので、自分を隠すほど大きい岩がごろごろしているので、設置する場所には困らない。




そして、ここから非常に役に立つ魔石の登場である。


こちらの世界では魔法が無いため価値が全くないが、半恒久的魔法装置と組み合わせる事で、生活水準を一気にあげてくれる物である。


魔石には色によって属性があり、単体や組み合わせで色々な事が可能である。


例えば、赤い魔石は火の属性を持っており煮炊きに使える。

青い魔石は水の属性で水を得る事が出来る。

赤と青の魔石を組み合わせて湯を沸かせる。

黄色の魔石は光属性で灯りを得る事が出来る。

黒い魔石は土の属性で、以外にも排水浄化に使用出来る。

緑の魔石は風の属性で空気の入れ替え、即ち空調である。


半恒久的魔法装置は、ザルトーニュクスはお家芸である魔法陣によって成される。


魔方陣と魔石の組み合わせを嬉々と配置していく。


各部屋には当然灯りと空調を設置する。

台所と風呂場には、火と水の魔石で、コンロや洗い場、湯沸しを設置する。もちろん排水用の土の魔石の設置も忘れない。




結構な時間を掛けて、家として一通りの機能の設置が終了させる。


「はぁー、何とか形になったな」


背筋を伸ばしたり、首を前後左右に動かしたり、肩を回したり揉んだりする。


後は机やベッドっといった調度品や家具、布団などであるが、素材さえあれば魔法で形作る事は可能である。


しかしデザイン云々の前に、真っ直ぐ切る、真っ直ぐ釘を打つ、きれいに削るなどの日曜大工の部分は、ある程度の熟練が必要となってくるし時間も掛かる。

機織りや裁縫などは手作業にしろ魔法にしろ細心の技術が必要になってくる。


前の世界でも、これらの技術を専門にしていた術者が存在したくらいである。


自分の得手不得手を十二分に理解しており、それらの購入費用も稼がなくてはと心のメモに書き加えておく。


それでもまずは宿代が節約できる事に、ホッと一安心のザルトーニュクスである。





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