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秘密基地で遊ぼう  作者: まる
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かくれんぼ

かくれんぼ




====================


見つかりたくないけど、やっぱり見つけて欲しい?


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魔薬組織の件が一段落すると、ザルトーニュクスには、グルナート商会とダンジョン、魔石研究所を往復する日々が戻ってくる。


日々の生活で少し変わったのは、他の町へ【転移】で行ける様になり、特産名産品を食べ歩きに出向ける様になった事だろう。

まぁ先般の砂糖と胡椒ほどでは無いが、一応世話になっているグルナート商会には、手土産を持って行く様にはしている。




ここで各地方の特産名産品を復習しよう。


ノース地方は、水が豊かで海や湖があり漁業が盛んで、魚介料理が有名である。

ウエスト地方は、天候に恵まれ農業や酪農が盛んで、小麦、野菜、果物、肉、香辛料を使った料理が有名である。

イースト地方は、殆どが鉱山で宝石や貴金属、その他あらゆる金属が産出されるが残念な事に名物料理は無い。

サウス地方も、砂漠や荒地でダンジョンが食べるに適した物は取れず名物料理は無い。


しかし美食家と呼ばれる人々は、サウス地方を目指すのである。




ここで魔物の3Kについて説明しておく。


多くの魔物の肉は、臭い、固い、危険の三つのKが有名である。


ちなみに危険とは毒や病気、寄生虫などの事である。


もし、この3Kが無くなれば、食べてみたいと思わないだろうか?

しかもそれが美味であるとしたら・・。


その肉がサウス地方では得られるのだ。

それは何処からか?

勿論ダンジョン、しかも上級や最上級の魔物からドロップするのである。


上級や最上級ダンジョンが見つかった最初の頃は、魔物からドロップされる魔物の肉に誰も見向きもせず、クズ石以下の扱いだったと言われている。


魔法が無く鑑定もままならないこの世界では当然と言えば当然であった。




ある時、食糧の付きたパーティが、飢え死にしかないと、同じ死ならと覚悟して食べた所、毒や病気、寄生虫などの影響が全くなかった。

空腹もあっただろうが、あまりの美味なため全員が涙を流したという。


生還を果たしたパーティは、この事を報告するも、当然誰からも信用されなかった。


それを偶然聞きつけたとある美食家が、そのパーティを専属として魔物の肉を持ち帰らせ、奴隷たちに食べさせ、同様の結果が得られると美食家も食してみたという。

そして「まさに万金に値する」と絶賛して、一躍脚光を浴びたという逸話がある。


ザルトーニュクスも偶の贅沢として、これらを食べに来るのである。




実はサウス地方には、魔物の肉とは別にもう一つ名物が存在する。


・・それは喧嘩である。


そもそも魔物からの守りとして各地方に軍が存在し、町には自警団が置かれている。


サウス軍は、現国王の兄君であるブルートシュタイン殿下が市長になってから、同じ国民軍なのにエリート意識が高くなり、自警団を見下すようになってしまった。


ブルートシュタインは、そんなエリート意識は捨てる様に何度も勧告するのではあるが、士気の高さは何物にも代え難くなかなか解決されないのが現状であった。


しかもそれに加えてサウス地方には、他の地方には無い第三の勢力が存在する。

上級や最上級ダンジョンに挑む冒険者たちである。


彼らは単純な戦闘力で言えば軍を凌ぐ。


冒険者は町単位での行動もあり、乱暴者ではあったが決して町の人たちと敵対する訳ではなく、比較的自警団とも接点があり上手くやっている。


逆に自分達より強いと言う言葉が、軍に属するエリート意識を持つ者たちにとっては非常に気に入らない。


自警団・冒険者VS軍の構図に、正直町の住人はいい迷惑である。






軍は町の外を巡回してくれと思う住民の思いとは裏腹に、今日も今日とて、わざわざ街の中を巡回する軍と自警団の見回りが激突している。


まぁ自分に実害が無いのであればと、食事に専念するザルトーニュクス。


ゆっくりと味わっていた魔物の肉料理が突然ムサイ男に変わり、床からはガシャーンという音が発せられる。

床に目をやれば頼んだはずの料理が無残な姿を晒し、周りを見渡せば数人の男たちが殴り合い、店員も客も逃げ惑っているカオスの状況。


自分の様に偶の楽しみとしていた者も居ただろう。

そんな料理が踏みにじられていく。


・・・ぷちっ


どこからともなく何かが切れた音がしたような気がしたが、ザルトーニュクスは気に留める事無く魔法を発動させる。


「我を敵の刃から守りたまえ【鉄壁】

我に戦う力を【強化】

我敵を知らせよ【探査】」


店の中で暴れている男たちを、片っ端から店の外へ放り出していく。

収納魔法でしまってある金貨を、財布から取り出した様にして店主に投げる。


驚きながらも受け取る店主を尻目に外へ出ると、軍と自警団がこちらを睨んでいた。


「おい、貴様。何をしたか分かっているのか!」

「誰にケンカ売ったか分かってるのか!」


右から左、左から右と見回しと、スラッと刃挽きの剣を抜く。


「おいおい、そんななまくら剣で何をしよっていうんだ?」


周りからゲラゲラと笑いながら、ゆっくりと歩みを進める。


「食い物の恨みを思い知れ・・

【衝撃】起動」


何時もの対人戦術の、【衝撃】の魔法陣を剣の上で起動する。


【鉄壁】の守りに物理攻撃は効かず、無人の野を行くが如く歩みを進める。

【衝撃】のダメージに、【強化】で高められた攻撃力で吹き飛ぶ。


「なっ!?」

「ちょっと、待っ・」


待つ事無く、ひたすら剣を振るう。


「うわぁ!」

「悪かった、許し・」


許す事無く、ひたすら剣を振るう。


全員を地べたに這わすと、最後に一撃ずつ加えて全員に聞こえる様に戒める。


「民草を守る軍と自警団が、住民を苦しめてどうする」


そう言うと「授業料な」と懐を漁ってその場を去る。


それを見ていた住人達は表立っては拍手喝采出来ず、心の中でグッジョブを贈る。






市長の執務室で軍と自警団の喧嘩の顛末を報告すると、笑い声が響き渡る。


「ワッハハハハッ・・」

「ブルートシュタイン殿下、そのように笑われなくても」


傍に居た者が渋い顔をして窘める。


「殿下では無いと何度も言っているだろう。もはや一市長に過ぎん」

「はぁ・・」


市長と言っても、現国王の兄君である事には変わりがない。


「しかし、これが笑わずにはおられまい。

軍と自警団を纏めて、たった一人で打倒し、正論まで頂戴したのだからな。

だが残念だな、折角のスキル持ちを我配下に招くことが出来ないとは」

「えっ!? スキル持ちですか?」

「まさか普通の住人が30を超える兵と渡り合えると思ったのか?」

「その者を追ってはおりますので、殿下の名を告げれば・・」

「止めて置け。この手に人間はきちんと自分というモノをを持っている者が多い」


ブルートシュタイン市長は、世の中ままならんものだと遠くを見つめる。






マーキングしてある各地へ【転移】の魔法で、あちらこちらの特産名産品を食べ歩きするようになると、聞こうとしなくても、向こうから噂話がやってくる様になる。


例えは・・、野盗なんかの情報が。


今回の魔薬組織には、野盗が殆ど絡んでいなかったが、行く先々でその都度結構潰したつもりだったにも拘らず、何時でも何処にでも常に野盗は湧いている状況なのだ。


先程の店主に投げ渡した金貨も、この細々?とした野盗退治の稼ぎの一部である。

最も大半はグルナート商会へ預けてしまっている訳だが。




野盗化の一番の理由が、冒険者の依頼失敗によって借金を抱えてしまい、奴隷になる位ならと、そのまま逃亡して野盗になるケースである。


その場の思い付きで野盗になろうとするが、実はそう簡単な事では無い。


襲われる側も当然の如く護衛を雇っている場合があり、獲物を見定めなければ手痛いしっぺ返しを喰う事になる。


息の長い野盗というのは、命は取らない、荷の何割もしくは通行料、厳格な独自のルールを持っており、部下たちにもしっかりとルールが行き渡っている。

街道を通りやすい様に整備したり、縄張り内の魔物や他の野盗は追い払うといった事さえしている。


商人たちも下手な道を使ってより大きな損害を出すよりはと、黙認してその道を使う事さえある。


その様な割と良好?な関係を築けない者たちが、冒険者や自警団の的となるのだ。


野盗として最初の内は警戒されている事も少なく上手くいった様な気になる。

しかし運よく荷を手に入れられたとしても、今度はそれを捌くためのルートが必要である。


盗品とバレ無い様に売るための技術とか、盗品と分かっていても買い取る店を探すと言った事をしなければ先は無い。


裏ルートにも独自のルールが存在し、はみ出し者はそれ相応の制裁を受ける事になるだろう。

血塗られた商品をそれと知って取り扱う処もあるが、足元を見られたり弱みを握られたりするだけである。


野盗と言う仕事も、案外厳しいものなのである。




そこへザルトーニュクスの野盗狩りという嬉しくない新規参入である。

輪を掛けて、野盗業も厳しくなる事が予想される。


ザルトーニュクスとしては、別に冒険者への野盗討伐の依頼を奪うつもりは無く、あくまでも噂を耳にして、ちょこっと探して、現行犯として見つけた場合に限り捕える様にしている。


「命と、有り金と、荷物と全部置いて行ってもらうぜ」

「見逃してくれよ、同業者じゃねか」


このように目の前で野盗行為を働いている場合である。


しかもこの野盗は命と金と荷物と奪う最低の部類の方であり、情けは無用である。


「悪いな、やっちめぇ」

「「「へい!」」」

「くそっ!」


お互いが剣を抜いたところで、ザルトーニュクスが参戦する。


「お邪魔するよ」

「「!?」」


事前に仕込んだ戦闘モード魔法の前には瞬殺である、殺してはいないが。


「大丈夫か?」

「ああ、助かったよ」

「「助けて!」」

「・・へぇ!?」

「ちっ!」


荷の方からする女性たちの声から何となく事情を察する。


突如守られた側の護衛や商人が、ザルトーニュクスを襲ってくるも、ジャリンという音がして剣が見えない壁に防がれる。


「なっ!?」

「ふーん、そういう事・・ね」


武器が弾かれる事に驚きを隠せない護衛に、ニッコリと微笑む。


「大人しく有り金出してお縄に着くのと、ぶちのめされて有り金奪われるのとどっちが良い?」


サルト―ニュクスも野盗たちに二択を迫ってみる。




追加で発生した聞き分けのない野盗?を打ちのめした後、荷を確認すると予想通りだった。

全員が女子供で、話を聞けばイースト地方で攫われて来たとの事である。


今思い返せば先程襲われた際に同業者という言葉を使っていた。


「こういう意味だったとは。はてさて、どうしたものか・・」

「お願い、家に返して!」

「お父さんとお母さんの所に帰りたい」

「いや、当然そうしてあげたいんだけど、どうしたら良いんだろうか」


流石に全員を連れて村々を回るのはかなり負担が大きい。

しかし信頼のおけない者に頼めば、同じことの繰り返しになる恐れがある。


「どうしたら良いと思う?」

『イーウの町へ行くべきと判断します』


脳内フレ【助言】に状況から最善策を聞く事にする。


「理由は?」

『一つ、捕えた野盗の取り扱い。

二つ、攫われたとはいえ奴隷の取り扱いが不明。

三つ、信頼のおけるグルナート商会までの距離』


そうなるかと溜息と共に呟き、全員を連れてイーウの町へと向か事に。


「じゃあ、まずはイーウの町へ向かうからね」


少なくとも自分たちの家の方に向かう事に安心した様子。

「ありがとう、おじさん」の声に、いたく傷ついたのは誰にも言えなかった。




更にザルトーニュクスは、この行程で【転移】を使える自分には起こりえない面倒な事に直面する。


お腹の鳴る音を、「えへへ」手で押さえ手隠そうとする少女にゴメンと思ったり。

同じ様に他の少女から「トイレ」と耳打ちされて他の女性の方を向けなくなったり。


食事やトイレ、しかも被害者は全員女性とかなり気を遣わなくてはいけなかった。




それでも何とか、イーウの町に到着すると、ハチの巣をつついたような大騒ぎである。

行方不明として扱われていた女子供が、実は攫われていたのだから。


すぐさま身元が確認されると、それぞれの町に知らせが走る。


野盗たちはそれぞれ尋問を受け、厳しい尋問の後、犯罪奴隷落ちとなり報奨金が支払われる。


何となく気恥ずかしいイベントが起こりそうな気がして、こっそり町を出る事にする。


「色々と問題があるもんだ」


一人呟くと、そう言えば家族を失うという似たような境遇の人たち、燻製に携わっている人たちはどうなったか気になり始める。


何時もは素材を納品して終わりだったので、その後は何も知らないのである。


「ちょっと、ちょっとだけ見に行ってみるか」


誰に言うでもなく、なんやかんやと言い訳を重ねる。

遠回しに聞かれているかもしれないが、愛すべき【助言】は完全にスルーする。


むぅーんと唸りながら、【転移】魔法でノーウの町へと向かってみる。





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