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秘密基地で遊ぼう  作者: まる
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鍛冶屋の鍛冶場

鍛冶屋の鍛冶場




====================


鉄を打つ姿って、まさに職人だよね。


====================






ウサの町の事件・・死者4名。


魔法は神の奇跡では無い。


自分の持つイメージを魔力で具現化する。

論理的に事象を理解していればいるほど、威力も精度も効果も向上する。


身体の構造を理解していない者は、治療する事は逆に命を縮める事になりかねない。

医療を学んでいないザルトーニュクスの魔法では、人を治せず見守るしか出来なかった。


被害を最小限度に抑えたと感謝されても、本人には到底受け入れられるものでは無い。


人目に付かない様にウサの町を去る。






ザルトーニュクスは押し留める職員の制止を振り切って、ヤーデ町長の所へ訪れる。


「何事かね?」

「話が有る」


言葉短く発すると、町長は目で職員に下がる様に指示する。


「それで?」


職員全員の退席を確認すると、暴挙の理由を聞いてくる。


「魔薬に関するあらゆる情報を、あらゆる伝手で調べて、最速で寄越してくれ」

「理由は?」


ドンっと爆音と共に、壁が破壊され大穴があく。

ヤーデには彼が壁を叩いた程度にしか見えなかった。


「つべこべ言わずに用意すればいい」

「ふむ・・、いいだろう」




制限を掛ける事無く、現時点で掴んでいる情報を開示する。


「また来る」


そう言い残してその場を去る。


ザルトーニュクスの表情と、壁の惨状を見て溜息と共に呟く。


「どうやら彼にも怒りという感情があるようだ」






魔薬の拡散を本気で止める事にしたはずなのに、ダンジョンに潜る事を続ける。


ザルトーニュクスの行動には二つの理由があった。


サウス市周辺では、魔薬に関する情報が得られなかった。

これはサウス地方はダンジョン目当ての冒険者が多く、購入者も殆どが冒険者でダンジョン内での魔薬使用が考えられた。

狂暴化や死亡しても、問題には上がってこないと考えられるからだ。


ならばとひたすら潜り、冒険者の監視と情報収集する事が一つ目の目的だった。




もう一つは、情報を集めるための魔法を開発や強化向上するためであった。


実際、町で集められる情報は、自分の耳に入った事だけである。


そこで広範囲から情報を集められる魔法や、情報の解析をする魔法の開発のためにダンジョンに潜ったのである。

離れた距離からでもあらゆる人たちの声を集め、情報の取捨選択の魔法実験の成果を試す。






ザルトーニュクスは、ここで苦渋の決断を【助言】から迫られる事になる。


「どういう事だ? 何故イースト地方に向かうべきなんだ?」


新しい情報や状況が変わる度に、冷静な伴侶【助言】のアシストを受けていた。


『現時点までの情報と状況からの判断』


【助言】もザルトーニュクスの魔薬に取組みの真剣さ故に、与えられる情報も求められる答えも的確に詳細になり回答の精度が上がって行く。


『第一に、サウス地方での情報の入手の困難度。

第二に、住民の危険度。

第三に、密売人の移動速度と範囲


これらよりサウス地方に時間を掛けると、イースト地方に密売人が移動。

イースト地方の鉱山と言う労働環境から、魔薬の拡散を考慮。

ダンジョンの町でない為、住民の戦闘力は低く、有事の際に被害が大きくなると判断』


ザルトーニュクス一人で、全ての人々を救えるとは思っていない。

脳裏にこびり付いた、ウサの町での光景が思い出される。


「・・・イースト地方へ行こう」


歯を食いしばり、白くなるまで拳を握りしめ、答えを絞り出す。






イースト地方へ行く前に、素材をグルナート商会へと持ち込んでいた。


「大丈夫ですか? ザルトーニュクス様」

「うん? 何が?」

「お疲れの様ですが・・」


何時もと違うザルトーニュクスの様子に、コラレが心配そうに声を掛ける。


「・・ああ、ちょっと上級ダンジョンに入ってみてな」


情報収集や魔法実験には、人の居るダンジョンに入る必要があり言い訳にもちょうどいい。


「やはり、魔物はかなり強かったですか?」

「うーん、どちらかと言うと人間関係かな?

ほら上級ダンジョンはみんな一斉に入って来るから」


サウス市にわざわざ来る冒険者は、上級や最上級ダンジョンが目当てである。

そうなれば上級ダンジョンは、冒険者が集中し易く獲物の取り合になる場合が多いのだ。


実際は無茶な魔法実験の結果、体にかなりの負担が掛かったのであるが・・


「そういうもんですか」


コラレとしてもノース地方から殆どでた事は無く精々ウノの町位である。

流石にサウス地方のダンジョン事情までは詳しくない。


「そんな訳で、悪いが今回は量があまりない」

「いえいえ、まだストックは十分ありますから」


後ほど素材の整理で、ランクの高さに固まってしまうコラレたちが居た。






イースト地方は鉱山が大半を占めており、常に労働者不足に悩まされている。

それ故、魔薬を使用してかなり無理な労働をしている可能性が極めて高い。


掘り出されてた鉱石は、宝石の原石はカットなどの処理に送られ、金属を多く含む物は溶かされ製錬されていく。


原材料は産地の方が安いため、多くの鍛冶屋や宝石店が軒を並べる。


「・・・(きつぅ)」


そんな中、イーサの町の酒場でザルトーニュクスは渋い顔をする。


わざわざこんな山の中まで引っ越して来る人物など、自分の求める物にひたすら突き進む、職人気質の人物が多く、全くと言って良い程、会話が成り立たない。


今開発中の広範囲から情報を得るための魔法は、一旦耳で受け取ってから情報を取捨選択するため、常に槌振る音が入って来る。


しかも望むような情報は、全く入ってこなければ苦行以外の何物でもあるまい。


「・・【集音】【解析】解除。早いところ改良しないと駄目だな」


流石に限界と、起動していた魔法を解除して、食事に専念する事にする。


「遠征訓練に出かけていた連中が戻ってきたらしい」

「そうか・・、という事はあいつ出てきたのか」

「もう一種の風物詩だからな」


後ろからの声が何と無しに気になって、商人たちに思わず声を掛ける。


「何だ、その風物詩って言うのは?」

「気になるかい? 風物詩って言うのは・・」


イースト地方の軍は、他にはない地方遠征訓練を行っている。

戻ってくると、軍払い下げの中古の武器や防具を持った商人がイースト地方の町を回る。


「それが何かおかしいのか?」

「おかしいも何も、軍の払い下げ品をイースト地方に持っていって何のメリットがある?

よーく探せば、新品でさらに良品が安く手に入ってこそのイースト地方だぞ?

普通は他の地方に持っていった方が儲けになる」


何かがおかしい、やっている事がちぐはぐの言葉に、ガタッと席を立つ。


「その商人は今どこに?」

「イーイの町へ向かう街道の野宿で一緒になったから、多分・・」

「良い情報だ、感謝する」


テーブルの上に銀貨を数枚転がし、驚く商人を尻目に外へと飛び出す。


「【助言】、可能性は?」

『高確率。

軍を隠れ蓑に、軍の移動に合わせて魔薬の補充と密売。軍が主導の可能性も。

遠征訓練の無いイースト地方では行商をする手段を利用と』


見つからないはずである、軍が噛んでいたとなれば。


イーサの町の事も気になるが、元を絶つ事を最優先と心の中で詫びる。


そしておかしな商人の足取りを掴むためイーイの町へと急ぐ。






イースト地方に点在する村の多くは、製鉄業で成り立っている。


鉱山労働者は原則鉱山の持ち主が、衣食住を保証しており商売としては成り立たない。


ザルトーニュクスは、目の前の真っ赤に溶けた鉄の流れる風景を黙して見ていた。


「・・・」


猛烈な暑さ。汗がしたたり落ちるが、その汗でさえ直ぐに乾くと錯覚する。

厳しい仕事ではあるが、この姿がこの地方の正しい村の姿なのだと目に焼き付ける。




直ぐにおかしな商人を見つけ追跡する。


密売人は常に泳がせ、魔薬の購入者から使用する前に、魔薬を強奪してきた。


魔薬の補充に戻った先は、イーノの町の自警団の駐屯地であった。

そこで金と薬を交換し、密売人は他の町へと出て行く。

受け取った金はそのまま町長へと渡されていた。


自警団は見回りと称して、村の一つへ向かう。

その村はとても美しく、色とりどりの毒の花で彩られていた。

村人は薬の原料として作っているらしい。


村の人たちは笑顔で汗水垂らして、本当に懸命に花々の手入れをしている。

この花より作られる薬が人々を救う、そんな誇らしささえ感じる。


同じ汗を流す姿なのにと考えない訳ではないが、誤った汗だと自分に言い聞かせる。






ザルトーニュクスは、ヤーデ町長へと報告へ訪れる。

壁には大穴があいたままだった。


「壁の代金を支払いに来た」




ザルトーニュクスの報告を聞いたヤーデは、そのまま黙って出掛ける。


ヤーデはノース市市長へ報告、二人は揃ってイースト市市長の下へ。


二人の報告に非常に焦ったイースト市長は、碌な確認もせず軍を投入してしまう。

イーノの町長は関係を完全に否定。

行商人の足取りは掴めず。

仕事を斡旋したり巡回した自警団は偽物。

薬作りに関連した者たちの言い訳を一つも崩す事が出来なかった・・



村人は本当に大切な仕事と騙されていただけである。

結果、出来たのは魔薬の焼き払い・・、村一つの壊滅だけであった。


残ったのは村人たちの恨みがましい視線だけである




ノース市長はイースト市長の暴走に溜息を吐く


「何を焦ったのか・・。これでは何の解決もなるまい」

「多分、彼が黙っていないでしょう」


市長に呼び出されたヤーデ町長は呟く。






ヤーデへ報告の後、ザルトーニュクスは【隠密】をかけ、犯罪者たちの元に向かっていた。

魔薬の拠点を壊滅させられ、町長の下へ報告に集まった者たちのすぐ傍に。


「誰が情報を漏らしたか分かったか!?」

「いいえ、まだです」

「町長、軍の介入により、薬は全部焼き払われて壊滅です!」

「な、なんだと!? 何故いきなり軍を投入・・」


駆け込んできた部下の報告に驚きの声を上げる。


「村とかかわった者たちは、既に他の地方へ向かわせ、知らぬ存ぜぬで通しています。

行商役も同様です」

「そうか・・、その件は任せたぞ。

しかし一体何処から、誰が漏らしたのだ!」


【隠密】の魔法を解除して、姿を現し声を掛ける。


「俺だよ」

「「「!?」」」


突然の声と、今の今まで居なかった者が現れ、驚き戸惑う組織の者たち。


「今の言葉はっきりと聞かせてもらった」

「聞いた? だから何だ? お前一人で何が出来る?」

「そうか・・」


次の瞬間、壁、天井、床を縦横無尽に駆け巡る。

そして立っているのは、イーノの町長とザルトーニュクスだけとなる。


「なっ!? そんな馬鹿な・・」


ザルトーニュクスは、刃を潰した剣を使っていた。

そして【爆振】の魔法陣を剣に仕掛けていた。



【爆振】は【衝撃】の魔法の上位であり、【衝撃】も【爆振】も接した状態から衝撃波を放つだけだが、威力はけた違いとなっている。

【衝撃】は意識を保てる者がいるレベルであるが、【爆振】は運が悪ければ死ぬ程のレベルである。

肉体も【強化】ではなく、上級や最上級ダンジョン用に開発中の魔法を使用した。



剣先を町長の方に向け、ゆっくり一歩一歩近づいていく。


「ひっ!? い、いいのか? む、無実の者を手に掛ければ、お前がお尋ね者だぞ!」

「無実? 誰の事だ?」

「しょ、証拠はあるのか?」

「俺は聞いていたが?」

「そ、それが何の証拠になる?」


勝ち誇った町長に、ザルトーニュクスは冷酷な一言を突き付ける。


「じゃあ、お前を殺しても問題無いな。証拠が無くていいなら」

「っ!?」


自分の言葉が、自分に戻ってきた事に愕然とする。


「ま、待て! 待ってくれ」

「さあ・・、お前によって死んでいった者たちの恨みを受け取ってくれ・・

死の底より深き闇よ【魔眼】」



【魔眼】は幻術系の上位魔法であり、【好感】などの魅了系とは別系統である。

上位の幻術ともなれば五感すべてにおよび痛みすら感じる。



町長に掛けた幻術は、常に魔薬を求める人々に襲われるものであった。

幻覚に常に襲われ悲鳴を上げ逃げ惑う町長など、目に入らないかのようにその場を去る。




イースト市より大陸全土に、魔薬組織壊滅の情報が流される。

長期間の内偵と、緻密な情報収集と裏付けを経た結果であると市長より発表されたのだ。


真実を知る人々は、黙して何も語らなかった。






その情報は元サウス市市長の下にも届けられていた。


「くそっ! 一体誰が・・。わしの大切な金の卵を潰しおって!

どれだけ準備に時間と金を・・。ブルートシュタイン殿下を説得するのにも!

ただでは済まさんぞ・・、絶対に!」


同刻、ブルートシュタイン市長も知らせを受けていた。


「これからの戦にはどうしても金が掛かる、資金調達には必要な事と説得されたが、魔薬や人身売買など手を出すべきでは無いという事だ」


大陸を覆う闇は思っていたよりも、遥かに深く暗く、まだまだ晴れていない様である。






ザルトーニュクスは、ウサの町で魔薬による犠牲となった者の墓を訪れていた。





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