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うつすとろーく  作者: ちやせん
1/3

あおい、高校初の大会

それなりに暇つぶしというか気休めとして書いてます。意見とかもらえるとうれしいですが、そんな超次元ものにはなりませんよ多分。

「あおいぃ~、今日はもう休もうよ~?明日集合朝早いよ?」

「うっせーなつき!最終調整なんだからちょっとくらいまてよな!」

「あおいさっき同じこと言って二十分たつ!」

「あとちょっとだけ!どうもしっくりこねえ!」

「それもさっき聞いた!」

既にあおいは壁打ちを一時間やっている。よく体力が持つよ、ほんと。

「んー、微妙だけどいいや、帰るかなつき!」

「あーやっと帰る気になりましたか、よかったよかった。」

だるいから待ってるのがしんどい・・・・なんて頑張ってるあおいには言えないよね。

「今日もおつかれさま~」

「さんきゅ、なつきも寒い中毎日わりーな。」

「別に、自分で勝手にやってることだし。」

なんとなくあおいと一緒にいるだけなのだけど。

明日は、群馬県大会本戦だ。応援も応援で面倒だな。




翌日。

「わーりぃわーりぃ!寝すぎた!」

あおいは案の定寝坊。おい。高1の分際で。

今日は春の個人戦県本戦である。普通ならば高1には本戦どころか予選にすら出場資格がないのだが、県B級選手の資格を持っている場合高1でも特別に試合への参加が可能である。

そしてなんとこのあおいちゃん、県B級のテニスプレーヤーなのである。おそるべし。

この大会での成績が今の高3の最後の団体戦のシード争いに影響するため、高3は特に気合が入っている。

逆にこのあおいは高校の大会は初めてで、全く気合いが入っていない。それもそうだ、普段から県外遠征なんかも何度も行っていて、強豪たちを何人も相手にしている。中学の大会では普通に県で四本指には入っていたっていうし、こんな大会は気合いなんて入れる必要ないのだろう。

ちなみに私は小学生の時6年間テニスをしていた。ちなみにちなみに、小学4年生の後半くらいまではあおいよりも強かった!やばくねやばくね!?

だがしかし!今や見る影もなし。あーブランクってつらいねぇ。まぁあおいに誘われなきゃテニス部なんて高校で入るなんて思ってなかったし。小学6年でさっぱりやめたつもりだったんだけどねえ。

話は戻り、一通り先輩に笑い飛ばされて、顧問の先生には注意をうけて、あおいが私のところにくる。

「まじ朝はやすぎねー?大会開始9時だぜ?なんで8時集合なんだよ!?」

「8時50分くらいから選手は審判講習会あるってさー」

「そんなん受ける意味なくね?ほぼみんな本戦まで来るような奴は審判できるし、できねぇ奴はどんなに指導したってクソ審だろ!」

ごもっともなのですが、あおいちゃん女の子なんだからクソとか言うのはよさない?

まあ言ってもどうせ治らないので、あおいが言うのとおんなじでクソ言葉遣いはどんなに指導してもクソ言葉遣いなので放置します。

審判講習会も終わり、いよいよ試合が始まる。

少し離れたところからは部員全体で気合を入れているのだろうか、「絶対勝つぞー!おー!」みたいな声も聞こえてくる。

ちなみに私達の学校はそういうのもない。実力はそこそこあるが冷めていると思う。

「なつきー、試合入ったから行ってくるわ、5番コートね。」

「りょーかーい。」

暇だし見に行く。応援と言った方が聞こえがいいかもしれない。

あおいがサーブをとる。相手は高3かな?背が大きい。

あおいがサーブを打つ、相手がリターンする、あおいがそれを返球する。

「ボゴッ」っていう感じの、独特の音があおいのストロークの度にする。

相手は返すので精一杯で、全くボールを散らせない。コートの端の方に打とうとして、アウトする。

これがあおいの戦い方だ。あおいのストロークはとにかく重い。

昔からずっと鍛えられた体幹、そして壁打ちによって染みついた最も効率的な力の伝え方で、あおいのストロークは物凄い重さを伴うのだ。

その上フォアもバックも両手打ちなものだから、あおいのストロークは理論上トップクラスに重いはずだ。

そこそこの相手はとにかく重さで完封される。コントロールしようとしても重くて出来ず、焦れた相手がミスするのが典型パターンだ。

「よゆーだわ。」

もうあおいが試合を終えて戻ってきた。スコアは6ー1。流石。

「1個とられてるじゃん。」

「最後ちょっと遊んだわ。」

ベスト4までは1セット先取で試合が決まるので、とにかく力の差があると試合は早い。

ちなみにこの試合に出場する選手は64人。今日はベスト4まで決める。

あおいがまた試合に向かい、30分もせずにコートから出てくる。

2回勝って既にベスト16のあおいは退屈そうだ。

「余裕?」

「中学の頃と比べて周りが頭使ってくるし、つないでくるけど、なんかバカの一つ覚えって感じ。」

うーん、バカの一つ覚えなテニスはあおいも同じなきがするけどなぁ。

「ベスト16になると周りも一気に強くなるってさ。」

実は本戦にいった先輩達はみんな既にベスト64か32で終わっている。あとはうちの学校はあおいだけだ。

「まぁやれるだけやるよ。」

すぐにあおいの試合が入る。もう残っている人数も少ないので試合が入るのが早くなってきた。

あおいの相手は有名な高2の人だった。名前はよく聞く。

あおいは最初リターン。いつも通りのプレーであおいが試合を進める。

相手も負けてはいない。巧みにロブを上手く使って繋げ、あおいにラリーの主導権を握らせない。

3ー2であおいがリード。

休憩途中にあおいが自分の頬を軽く叩く。お、来るぞ。少し本気が必要だと考えたらしい。

ラリーが始まる。さっきと同じ重いストロークで単調に攻めるあおい。相手もロブ。ここで突然。

「シュッ」

あおいがスライス。それも凄く遅い。回転量はかなりあるが。

相手も意表をつかれたようで、とりあえずネットをこえようとボールをこすりあげるが、思ったよりも自分の方にボールが来ないせいで、ほぼ前へのエネルギーがボールに伝わらない。

力なくボールはネットにかかった。

ここから一気に相手は調子を崩す。あおいも全然来ないスライスに加えて滑るタイプのスライスを重いストロークに混ぜる混ぜる。

結局6ー3であおいが勝った。

「ふー、あぶねあぶね。」

「ちょっと本気だしたでしょ?」

「まぁー、相手がロブ多くてめんどくさかったし。」

ベスト8まで来たあおい。次の相手は第二シードの深堀という人だった。いよいよあおいも負けそう。

「あおい、次の相手勝てる?」

「深堀さんは無理だと思うわ。」

テニスにおいて上位を占める人達は、なぞのネットワークで繋がっている。当然、深堀さんとあおいは知り合いというか友達というか。

「そんなに強いの?」

「深堀さんはコントロールがおかしい。」

へぇー、あおいが相手のコントロールに恐れるのは珍しい。なにしろあおいがコントロールを封じ込めるタイプだし。

「じゃ、いってくらー。負けても許して。」

「いってらー。本気出して負けたら許す。」

あおいと深堀さんの試合が始まる。

深堀さんのサーブ。

「パンッ」

軽快な音と共にサーブが打たれる。そこそこはやい。

「ボゴッ」

あおいがリターン。でも浅くなる。

深堀さんはもちろん見逃さない。スライスでアプローチからの、確実に決まるコースにボレーを決めた。

「うーん、たしかにうまいなぁ。」

思わず声に出してしまう。なんというか、無駄がない。

そんな深堀さんにあおいも必死で食いつく。

「はぁっ!」

声を出してストロークを打つ時のあおいは本気だ。声を出すというのは割と意味があって、実際あおいのボールの重さはかなり増す。

それでも深堀さんは冷静に深く返す。深堀さんのボールは凄く鋭くて、なんというか、スマートである。

あおいのストロークに対して深堀さんは武器の豊富さとカウンターで攻める。ラリーだと深堀さんは多少押されるが、それでも4割くらいはラリー勝負でもあおいからポイントをとる。これは割と凄いことだ。

何より、深堀さんはデュースなどの重要な場面で確実にとってくる。やっぱり強いひとはテニスの戦い方を理解している。

などと感心していたら試合が終わっていた。

「くぁー、深堀さん強すぎっすよー!」

「あおいのストローク重すぎだから!深く打つので精一杯なんだけど!」

深堀さんとあおいが仲良く話しながらコートから出てくる。スコアは6ー4で深堀さんの勝ち。

「あおい、おつかれー。深堀さん強かったねー。でも勝てそうだったんじゃない?スコア6ー4だし。」

「いやー、ありゃー運が良かった。それに今回は1セットだから競れたけど、もし3セットマッチとかなら私のボールに慣れられて、多分ショートクロスとかでボコボコにされるわ。」

そうかもしれない。コントロールが売りだと言われていたが、それでもあおいのボールは深く打つので精一杯と言っていた。多分慣れれば深く打つ以外にもいろんなところに配球できるのだろう。

「さぁ帰ろ帰ろ!明日学校だし!」

「大会前日は休まないのに学校前日は休むんだね。」

「学校はねみーけど、大会はテニスしてれば眠くねぇしなー。」

わかりやすくて何よりです。


かくして、あおいの高校初の大会が終わった。

まぁすぐにダブルスがあるのだが。


結果 あおい 県シングルスベスト8


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