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再召喚された勇者は一般人として生きていく?  作者: かたなかじ
召喚された四人の高校生は勇者として生きていく

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第三百六十一話


 大量の魔物を相手にした大輝たちは満身創痍だったが、充実感に満ちていた。大輝たちの周囲に魔物の気配はほとんど残っていない。

「ふぅ……つ、疲れたー」

 充足感とは裏腹に身体はついてこず、大きく息を吐くと座り込んでしまう。


「さすがにあの量を相手にするのはキツイわね……」

 秋も同じようで、剣を杖代わりにしてやっと立っているというようだった。


「う、うち、起き上がれないぃ……」

 はるなはぐにゃりと崩れるように草の上に身体を投げ出して仰向けで寝っ転がっていた。メイスの本来の使い方がわかってきたはるなは、終始魔力を流し込んでいたため、メンバー内でも一番疲労感が大きかった。


「はるな、魔力を無駄遣いしすぎ」

 涼しい顔で言う冬子だったが、そんな彼女も木にもたれかかっていた。


「…………」

 リズにいたっては息を整えるので精一杯なようで声も出ないほどだった。


「ど、どうしようか? このままじゃまずいよね?」

 疲労感でいっぱいのメンバーを見渡した大輝は困ったように問いかける。進んでも戦うことができず、戻るにしても身動きが取れない者が数人いる状態ではそれも難しい状態だったからだ。


「……一つ提案がある」

 それは冬子の言葉だった。いっせいにみんなの視線が冬子に集まる。

「何? いまなら大抵の方法は了承するわよ」

 慎重な秋がそこまで言うということが、現状の危険性を表していた。


「あそこに洞窟がある。風魔法で探ってみたけど、魔物はいないしそこまで深くない。だから、あそこに入って、結界石に私たちの魔法の結界を合わせて休憩するのがいいと思う」

 その案は休憩することができないかもしれないという一同の考えを覆すものであり、みんなの顔に生気が戻ってくる。


「いこう!」

 手を広げた大輝の言葉に反対する者は誰一人としていなかった。今まで疲れ切ってたと思えないほどの速さでみんなは立ち上がり、洞窟に一目散に向かっていった。




 普段ならまだしも、疲れている身体に鞭打って行動を起こしたせいで近くにあるはずの洞窟が酷く遠く感じられた一行はやっとの思いで洞窟に辿りつく。

「はあはあ、もう、駄目だ……」

「まだよ! 大輝は結界石の準備をお願い、はるなと冬子はそこを起点に障壁を張ってちょうだい!」

 きびきびとした秋の指示に従い、膝をつきかけていた大輝はすぐさま結界石を取り出し、はるなと冬子は障壁を張った。


「ふう、これで一安心、ね……」

 魔物が近寄れないようになったのを確認した秋は張り詰めていた糸が切れたかのようにそのまま崩れ落ち、身体からは力が抜けきっていた。

「私が見ているから、みんなは先に休むといい」

 そんな秋の隣に腰かけた冬子はこの中で比較的体力が残っていたのでそう申し出た。


 いつもならば冬子一人にそんなことをさせられないと誰かが言い出すところだったが、疲労困憊の全員がそれぞれまどろみつつあるため、曖昧に頷いて静かに眠りについていった。

「私も、少し疲れたな」

 すやすやと眠る皆を見回してそう言うと、冬子はおもむろにカバンから魔力回復薬を取り出してぐびぐびと豪快に飲み干した。

「にがっ」

 良薬口に苦しとはこのことで、魔力を回復するこの薬はかなりの苦みを持っていた。いつも表情を崩すことの少ない冬子の顔がきゅっと歪む。しかし、そのかいもあって彼女の魔力は回復し、先ほどより多少楽になっていた。


「……みんな、強くなった。大輝やはるな、秋ももちろんだけどリズもがんばってる……私も」

 ぽつりぽつりと誰に聞かせるでもなく洞窟に響く冬子の言葉。

 自分自身も戦いの中での判断の速さやどの魔法を使うかの選択などもうまくできるようになってきていた。自分たちの力が強くなっているのを実感しているが、それでも彼には届かないと思っていた。


「近衛蒼太……彼は一体何者なんだろう?」

 淡々と冬子が呟いた名前の主、彼はこの世界に四人とともに召喚されたが、勇者でないことを理由に一人で旅立っていったという話を聞いた。その後も似た目撃談があるたびに同郷ということもあってか大輝や秋は強い反応をしていた。


 あの時、彼の能力は低いと王様と大臣は言っていた。

 しかし、冬子はそれを鵜呑みにはしていなかった。こちらの世界に召喚されてから、謁見の間に連れて行かれるまでの間、わいわい騒いでいた大輝たちとは異なり、蒼太は一人酷く落ち着いているようだった。


 地球でも比較的落ち着いた青年ではあったが、それでも異世界に来た彼の表情からはなんの変化も見て取れなかった。城の中を歩いていても周囲を見渡すことなく、一度来たことがあるようなくらいに驚きがなかった。


「本当に彼は弱いのか……いえ、きっと違う」

 おそらく彼はなんらかの力を持っており、それで能力を隠したのではないか。それが冬子の考える蒼太に対する評価だった。

 そして、その力を持ってこの世界で自由気ままに生きているのではないか? と冬子は考えていた。彼の王様たちに対する態度を見る限り、敬意や恐れという感情はなかったように思える。


「きっと、この世界のどこかにいるはず……彼に会うまでがんばって生き抜かないと」

 うっすらと口角を上げてつぶやいたそれは冬子の密かな、しかし強い決意だった。別段彼に恋心を持っているというわけではないが、それでも彼に会いたいと思っていた。


「きっと二つ名とかあって、魔法もバンバン使えて……そうだ、聖剣なんかも持ってるかもしれない……! もしかしたら眼帯してたり、必殺技なんかも持ってたりして……ふふっふふふっ」

 全員が寝ている中、冬子は蒼太に対して色々な妄想をしてニヤニヤと口元を緩ませて楽しんでいた。勝手に蒼太を伝説の勇者のように仕立てあげていたが、あながちはずれではないところが冬子の直感力によるものだった。

 相変わらず表情筋の仕事っぷりは酷く、目元が笑っていないのが余計に怪しさを引き立てる。


「そうだ、いつか袂を別った私たちと彼が敵対するなんてのも胸アツ展開」

 誰も見ていないことをいいことに、その妄想は大輝たちが疲労から回復し目覚めるまでの間、しばらく続いていた。


お読み頂きありがとうございます。

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再召喚された勇者は一般人として生きていく? 1巻、2巻発売中です。

6月26日に3巻が出ることになりました!

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新作投稿始めました。 五百年後に再召喚された勇者 ~一度世界を救ったから今度は俺の好きにさせてくれ~

本作「再召喚された勇者は一般人として生きていく?」コミカライズ連載中!

配信は電子コミックサービス「 LINEマンガ 」、漫画担当は濱﨑真代さんとなります。

コミカライズ2巻は8月7日発売です! i484554

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