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再召喚された勇者は一般人として生きていく?  作者: かたなかじ
召喚された四人の高校生は勇者として生きていく

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第三百三十九話 

 大輝は城での厳しい訓練をやり遂げたという自負がある。しかし、先ほど自分のミスを秋に助けてもらったばかりだった。

 その不甲斐なさを挽回するために、大輝はボスウルフを自分で倒そうとしている。

「はあああああっ!」

 先ほどあっさりと攻撃を防がれてしまった大輝の攻撃。また同じ展開になるのかと思われたが、大輝は反省して新しい手を加える。ボスウルフが大輝に向かって爪を振り下ろそうとした瞬間、彼は魔法を使う。


「フラッシュ」

 それは灯りの魔法を一瞬に凝縮したものだった。目的はただの目くらまし。ボスウルフには視界が真っ白になるような強い光が襲いかかる。

「グオオオオォ!」

 光に目が眩んで一瞬攻撃の手が緩む。しかし大輝にはその一瞬の隙を作るだけで十分だった。

「てやああああっ!」

 気合一閃、大輝は怯んだボスウルフの胴に剣を振り下ろした。


 先程弾かれた時とは違い、気合の入った一撃はボスウルフの胴に大きな傷を作る。ぐらりと揺らいだ身体からはぼたぼたと血が出てきていた。

「グラアアアア!」

 それでもボスウルフは身体を起こして、苦しい声を上げながらもまだ戦おうとこちらを睨み、地面を蹴る。

「まだよ!」

 そこへ秋が追撃する。素早く繰り出された彼女の攻撃は前足をすっぱりと斬り落とした。


「ファイアアロー!」

 片足をなくして苦しみもがくボスウルフの顔に容赦なく冬子が作り出した炎の矢が降り注いだ。苦しむボスを助けようとフォレストウルフが慌てて駆け寄るが、それははるなが作り出した障壁によって止められることとなる。

「させないよ!」

 自分を守るための障壁ではなく、敵を近づけさせないための障壁をはるなは展開させていた。それでも駆け寄ろうとするフォレストウルフたちは必死に障壁に体当たりしている。


 後衛にフォレストウルフたちを任せた大輝と秋は手を休めずにボスウルフへと斬りつけていき、ついには止めを刺し、倒すことに成功した。

「はあはあ、強かったな」

「ふー、強かったわね」

 二人はもう動くことなくぐったりと倒れたボスウルフを見下ろして、息をついた。


 必死に抵抗していたフォレストウルフたちはボスウルフが倒れたのを見ると敵わないといった様子で慌てて農場から尻尾を巻いて逃げて行った。

「……倒せたんですか?」

 リズは逃げて行った魔物を見て、そう呟く。周囲にはもう魔物の気配はなかった。

「みたいだねー、結構強かったからうちもちょっと焦ったよ」

 苦笑交じりにはるなはそう言うが、リズは彼女を見ても焦りは感じ取れなかった。きっと自分たちなら何とかできるという自信があるからだろう。


「はあ……」

 リズは今回の戦いを振り返って思わずため息をついた。

「リズ、どうしたの?」

 服についた砂埃を軽く払いながら冬子はその様子が気になって声をかける。

「あ、いえ……なんか、私、全く役にたってないなあと思って……」

 彼女の戦果はフォレストウルフを一体倒しただけだった。申し訳なさそうにしょんぼりとしているリズはふがいなさでいっぱいだった。


 同じく後衛にいたはるなは一体も倒していなかったが、直接攻撃はしていないものの、彼女の障壁は戦略として役にたっていた。リズは自身がただうろたえてみんなにサポートしてもらってようやく一体倒した現状により胸を痛めていた。

「リズ、私たちは勇者として特別な能力をもらっている。そして、城で何カ月も訓練を続けていた。それでリズが私たちと同じことをできたら、こちらの立つ瀬がない」

 ぽんとリズの肩に手を乗せた冬子は淡々と事実を述べているだけだが、彼女なりにリズを励まそうとしていた。

「そうだよ! リズちゃんはリズちゃんの役目があるんだから、その時に活躍してくれればいいんだよー!」

 本来はリズが得意としているのは回復魔法。はるなもスキルとして使うことができるが、スキルレベルに反してうまく扱うことができなかった。


「でも、みなさん怪我一つせずに……」

 回復する間もなく今回は戦いが終わってしまった。それは良いことのはずなのに、リズは思わずそこまで口にしてしまい、慌てて手で口を覆う。怪我がなくてよかったのになんてことを言ってしまったのだろうと思ったのだ。

「ふふっ、気にしなくていいよー。うちはたまたま回復以外に役割があっただけだからねえ」

 はるなはリズが言おうとした言葉を想像しており、その上でそれ以上は何も聞かずにそっと優しく頭を撫でていた。

「ハ、ハルナさん、やめて下さい」

 口ではやめてほしいと言ってはいたが、彼女の手の暖かさに悪い気持ちはしていなかった。


「何やってるのよ。撃退できたんだから、報告に行くわよ」

 血が付いた剣を拭ってしまっていた秋はじゃれているはるなとリズを見て呆れた様子で声をかける。

「……秋、それにみんな。ちょっといいかな」

 しかし、そんな四人をよそに大輝は別のことを考えていた。

「なーに?」

 はるなが続きを促し、他の面々は大輝が続きを話し始めるのを待っている。


「ありがとう、さっきのあいつらのボスと思われる大きいウルフだけど、なんであんなに強い魔物が群れを率いてここに来たと思う?」

 この世界では森林伐採などは目立って行われてはおらず、森に食料がなくなったからという理由は考えづらい。ならば、なぜこの農場が襲われたのか? 大輝はそこを疑問に思っていた。

「うーん、たまたま人の食事を口にしたウルフがいて興味を示したとか?」

 言われてみれば確かにおかしいかもしれないと考えた秋は一つの推論を口にする。

「よくわからないけど、秋ちゃんが言うような理由じゃないかな?」

 あまり深く考えないはるなは秋の意見に乗っかった。


「……もしかして、あの農場主さんが何かを?」

 狼たちがここに来た大輝たちに襲いかかったのは確かだが、人の食糧を狙っているのなら農場にとどまらずよそにも広がっていくはずだった。そして、畑も全て掘り起こされているため、ここでこれ以上食料を手に入れるのも難しい。ならばえさを求めて他の場所へと移動していくのが普通だ。

「僕はそう考えているよ。だって、こんな荒れた土地にいつまでも縋りつくなんておかしいじゃないか。もうめぼしい食料がないんだから、次の場所に移ってもよさそうだ」

 しかしそれをしないのには別の理由があるのではないかと考えていた。最初はただの魔物退治だと思っていたが、もしかしたらなにか裏があるのかもしれない。


「確かに、大輝の言う通りかもしれないわね……いいわ、報告する前に少し周辺を調査しましょう」

 秋は大輝の話を聞いて、改めてこの依頼には何かあるんじゃないか? そういう気持ちになっていた。

「私の風魔法で探索してみる。みんなは目で何かないか探してみて」

 冬子は魔法発動に集中して周囲の探索を始め、大輝たちは近くにある小屋や掘り起こされた場所を確認していく。


「うーん、何もないなあ。勘違いなのかな?」

「何もないねえ」

 大輝とはるなは農具が収納されている小屋を調べるが、そこには何もなかった。

「ダメね、こっちも空振りだわ」

「何もありません」

 秋とリズは収穫物を格納する大きな小屋を調べたが、そちらからも何も見つからなかった。


「…………あった」

 探索魔法に引っかかったものを感じた冬子はそこへと移動を始める。それは大きな小屋の裏手だった。たどり着くと、迷うことなく冬子はその場にかけられていた一枚の布を取り払う。

「あったって、何があったの?」

 冬子に追いついた秋が冬子の肩ごしに視線の先を覗き込む。そこには地面に一枚の扉があった。

「これは、地下への扉?」

「そう、この先にいる」

 布をかけてわざと見つかりににくくしてあったその扉の中に一行は進んで行く。

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