第三百十八話
前回のあらすじを三行で
本郷魂を燃やす
鑑定スキルEX
本郷ユニークスキル発動
蒼太がにやりと笑ったのを見た本郷は苛立ちを感じながらも違和感に眉をひそめる。
「何がおかしい!」
そう大きな声を出した時には本郷は意識を失っていた。そして、気づいた時には幾度となく夢見ていた場所に自分がいることに驚く。
「ここは、なんで!」
周囲は見渡す限りの白、蒼太が再召喚時に呼び出された場所に本郷はいた。
『やあ、久しぶりだねぇ。何千年ぶりだろう』
そこにいたのは女神だった。彼女は戸惑う本郷の前に柔らかな笑みを浮かべて立っている。
地球からの転移・転生を止めるために本郷が倒さなければならない敵。長年思い続けた願いの成就。それがすぐ手が届きそうな場所にいるとあって、彼は一瞬で頭に血が上る。
「このっ!」
しかし、先ほどまで持っていたはずの魔剣はどこにもなく、それどころか身体を動かすのにも不自由していた。
『落ち着いてくれ。僕はどこにもいかないから少し話をしようじゃないか』
彼女は血気盛んな本郷を諭そうとするが、それは逆効果のようだった。
「何をぬけぬけと!」
なんとか身体を動かそうとする本郷だったが、それはやはりかなわない。
『ふう、身体……動かないだろ? 自分の身体をよくみてくれよ』
彼女の指摘に再度怒鳴りつけようとする彼だったが、チラリと視界に入った自分の身体を見て驚いた。
「これは……透けている?」
その言葉の通り本郷の身体は透き通っており、その手にはもちろん魔剣はなく、鎧も身に着けていなかった。
『君は魂になってここの空間に飛ばされてきたんだ。そのせいで攻撃的な行動はもちろん、自由に身体を動かすことはできないよ』
それでも抗うように何度か身体を動かそうと挑戦するが、女神の言う通り動けないため、本郷はそこでようやく諦めることにした。
「……それで、これはどういうことなんだ?」
観念して質問してくる本郷に女神は笑顔になる。
『落ち着いたようで何よりだねぇ。それじゃ、少し説明をさせてもらおうか』
動けないのなら話を聞くしかないと本郷は無言のまま女神の話を聞く。
『君の能力の転生はいつしか僕が思っていたよりも強力な能力に成長したようだね。まさかあんな奥の手が使えるようになるなんて思わなかったよ。僕が知っているのは記憶を維持したまま転生ができるところまでだったからねぇ』
女神は彼の成長に感心しており、腕を組んでうんうんとうなずいていた。
「そんなことはいい、どうしてこうなったのか早く話せ」
今までの転生では死の次の瞬間には自動的にユニークスキル転生が発動していた。そしてユニークスキルのレベルが上がってからは真っ暗な空間に自動で移動し、そこで転生先を選ぶという流れだった。
『ふむ、ということはいま何が起こったのか把握していないということだね。君は蒼太君と戦っていた、それは覚えているね?』
本郷は仏頂面のまま頷いた。
『君は転生スキルによる強化を行った。しかし、それでも蒼太君には届かず彼の刀によって胴を斬られてしまったんだ』
冷静さを取り戻した本郷は少しずつ蒼太との戦いのことを思い出していく。そして自らが斬られたことも徐々に思い出していた。
『その顔は思い出したようだね。まあそういうことだよ』
「俺は、死んだのか? しかし、それなら転生が発動するはずだ……」
どんなに記憶を手繰り寄せても戦いの最後のシーンと現状が一致しないため、困惑している。
『君は死んでいないよ。だから転生も発動しない』
淡々と告げられた女神の言葉にますます本郷は困惑していた。
「じゃあ、なぜ俺はここに連れてこられたんだ?」
『この空間に来るパターンはいくつかある。蒼太君のように召喚されたパターン、これは絶対ではないけど僕が呼びかけたい場合にはここを通ることになる。次に、これまた蒼太君のように送還魔法をかけられた時。あとは、ユニークスキルに大きな変化があった時に、これは任意なんだけどねぇ。僕が説明をしたほうがいいと判断した場合に呼んでいる。その時、現実世界では時間が止まっているから安心してよ』
ユニークスキルに変化と聞いて本郷の表情は険しくなる。女神の言葉が真実ならば、今回召喚されたわけでも、送還魔法をかけられた場合でもない自分にとっては最後の選択肢しかありえないからだ。
「おい、どういうことだ! 俺の転生スキルに一体何をした!」
慌てたように彼が自分のステータスを確認するとユニークスキルの欄が空欄になっていた。
『僕は何もしていないよ。君のそのステータスの変化は蒼太君との戦いによるものだよ。一つ面白いことを教えてあげよう。転移者・転生者には基本的にユニークスキルが一つ与えらるんだ』
それを聞いて本郷は何かに気付いたようだった。
「おい、まさか……」
その反応に女神は気を良くする。
『察しがいいみたいだね。そう、その通りだよ。蒼太君は今回が二回目の召喚だ、つまり彼には二つ目のユニークスキルが存在する』
予想はしていたが、改めてその事実を聞いたことで本郷は目を大きく見開いていた。
『一つ目はわかるだろ? 君の部下の魔族の子、フレアフルって言ったっけ? 彼女にダメージを与えることができるのは、対魔族用のユニークスキルを持っている者だけだよ。そして彼のユニークスキルは魔を断つ剣という名前なんだ』
どんな傷を受けてもすぐに回復するはずのフレアフルが大きなダメージを受け、殺されまいと蒼太の邪魔を本郷自身がした時のことを思い出す。
「やはり俺の判断は間違っていなかったようだな。あのままにしていればフレアは死んでいた……」
あの選択は間違っていなかった、であるならばどこで選択を誤ったのか本郷は自問自答する。
『確かに彼女を殺させないという意味では君の選択は正解だったねぇ。でも彼を、蒼太君を敵に回したのは致命的ともいえる……もう少し彼について話そうか。彼は前回召喚された時に、各国から選ばれた七人の勇者の中で頭一つ抜けた実力を備えていたんだ。その彼が元の世界に送還された』
そう仕向けたのは本郷だったため、その言葉に静かに頷く。
『地球からこちらの世界にやってきた時には環境に適応させるために肉体改変が行われるんだ。計算しやすいように元の能力の十倍になるとしよう。反対に地球に戻る場合にも肉体改変が起こる。その場合は能力が十分の一になる。数字は適当だけどつまり同じ倍率で肉体改変が行われるということなんだ』
ここまで言えばわかるだろ? 女神はそんな表情をしている。
「二回目の召喚の時にも能力が十倍になったということか……」
先ほどの話を聞いていれば当たり前の話だったが、蒼太に関してはそう単純なものではなかった。
『そうだよ、ただ彼の場合は少し話が違う。蒼太君は地球でもこちらの世界にいた時と同じように訓練を毎日欠かさずに行っていたんだ。その成果は彼の肉体に結果として返っている。普通の地球人は魔力の取り扱いの訓練なんてしないからね』
こちらの世界で強く成長した蒼太が送還されたことで、地球でも彼は魔力を操ることができた。そのため、彼は地球で強化された状態で再度召喚されたのだった。
「化け物か……」
自分が敵に回した人物がどんな存在だったかを思い知った本郷は呆然とそうつぶやくだけで精一杯だった。
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