第三百十四話
前回のあらすじを三行で
送還された時の空間
そこにたどり着く方法
飛空艇
「いくぞ!」
蒼太が走り出す。
「来い!」
立ち上がった本郷も剣を抜くと蒼太を迎え撃つ構えをとった。彼の剣も魔剣であり、蒼太の夜月と打ち合うに相応しい剣だった。
夜月と魔剣がぶつかると、金属音が響き渡る。
「なかなかの業物のようだな」
本郷はつばぜり合いをしながら蒼太が手にしている刀の評価をする。
「そういうそっちもなかなかの名剣みたいじゃないか」
蒼太も本郷の持つ剣を褒める。
本郷にも一種の収集癖があり、各国を巡り名剣・魔剣といわれるようなものを集めていた。その中でもとっておきのものを今日は用意していた。
「そうだろ? こんなことも、できる!」
本郷の言葉とともに魔剣から風が巻き起こり、無数のかまいたちが蒼太に襲いかかった。
「甘い!」
蒼太は自分の周りに魔力の壁を作り、それを弾いていく。直接くらえば十分な牽制になったかもしれないが、一つ一つの威力が低いため蒼太にはダメージを与えることができなかった。
そして蒼太は一度態勢を立て直すために、本郷を魔剣ごと弾き飛ばす。
「くっ!」
少し離れた場所まで押され、自分より細身の相手に力負けした本郷はその事実に驚きながらも、蒼太を睨み付ける。
「今度はこちらが魔法で攻撃させてもらおうじゃないか」
蒼太の周囲には既にいくつもの火の玉が浮かんでいた。明らかに通常の魔法使いが出すものより大きく、そして数も圧倒的に多い。
「いつの間に!」
魔法を展開する早さもとびぬけているため今までの相手もそうだったが、蒼太のこれはやはりインパクトがあるようで本郷は驚いている。
「ただのファイアボールだ。少しばかり数は多いかもしれないがな」
蒼太の言葉を聞いて、少しじゃないだろ! と突っ込もうとした時には既にファイアボールは本郷に向かっていた。
「この、これくらい!」
咄嗟に本郷は水の障壁を目の前に張り、蒼太の攻撃を防ぐ。彼も蒼太と同様に全属性の魔法が使えるため、数が多いとはいえ本来威力がそこまで高くないファイアボールを防ぐのはたやすかった。
蒼太はその様子を見てにやりと笑う。
「面白いな」
自分と対等に戦えそうな相手に出会えたことに蒼太は喜んでいた。これなら持て余すほどの実力を出し惜しみをしなくてもいいかもしれない、と。
「この程度であれば、防げないものではないぞ!」
全ての魔法を防ぎ切った本郷は、障壁を解除していた。だが決して油断することなく次の攻撃へと備えている。
「ならば、これはどうだ!」
次に蒼太が呼び出したのは氷の槍だった。
「今度は氷か!」
両手両足で数えても足らないほどの数が浮かんでおり、まるで多数の矢が降り注ぐかのようにその全てが本郷へと向かっていく。
本郷はそれを今度は炎の障壁で防ごうとする。
「結果は同じだ!」
本郷の言葉の通り、氷の槍は相対する属性の障壁に当たると蒸発していく。
「そうかな?」
最後の一本も同じように蒸発していく、そのように本郷は思っていたが、なぜかそれだけは障壁を貫通していった。
「なんだと!?」
蒼太は作り出した氷の槍の一つに剣を埋め込んでいた。そのため外側の氷は障壁の炎によって溶けてしまったが、剣だけが障壁を貫通したのだ。
しかし、本郷は持っていた魔剣でその剣を受け止めた。
「くっ、くうう!」
蒼太が放ったものだけあり、力強く投擲されたそれをすぐに弾きとばすというわけにはいかず、本郷の魔剣に当たったあともそのまま前に進む力は弱まらなかった。
「おいおい、それくらいで苦戦していては困るぞ」
その言葉に本郷が目の前の剣から視線を蒼太に移すとそこには無数の雷の矢が浮かんでいた。
「まさか」
「そのまさかだ」
それを一斉に本郷に向かって発射する。雷の矢は剣で受けてしまうと金属を伝導して、ダメージを受けてしまう。
「くそっ、しかしこちらも!」
本郷はなんとか剣の威力を押しとどめ、横に弾くと次の攻撃の迎撃に移る。
彼の手には小さな球が握られており、それを蒼太に向かって放り投げた。
そして、雷の矢と触れた瞬間に大きな爆発を起こした。強力な魔法を込めた魔道具であり、所有者が発動を念じるか他者の攻撃的な魔力に触れると中にこめられた魔法が発射されるようになっていた。
「フレアバーストだ」
その魔法名が聞こえたディーナは驚いていた。
先程の球にこめられた魔法は炎の上級魔法であり、今いる部屋程度であれば一面を焼き尽くすほどの威力を持っていた。
その威力のおかげか蒼太の雷の矢は全て爆発に飲み込まれて既に消失している。
「すごいの持ってるな」
爆発を目の前にして、自分も巻き込まれようかという瞬間にもかかわらず蒼太は落ちついていた。
彼が落ち着いていられるのはもちろんそれに対する対策を考えていたからだ。
「こいつをっと。頼むぞ」
新しく亜空庫から取り出した剣を持つと、蒼太は剣に語りかけた。
『はいよー』
すると、剣が返事を返した。
いや、正確には返事を返したのは剣に宿る精霊だった。
『アイスブレイク!』
精霊が唱えた魔法は氷の上級魔法だった。しかし事前に魔法がこめられた本郷の球と、精霊が唱え更にそこに蒼太の魔力が加わった魔法ではそのランクが異なった。
「少し寒いな……」
精霊から発動されたそれは蒼太の魔力と相まって辺り一面を瞬く間に白く染めた。相手のフレアバーストを飲み込み、あたりを一瞬で氷の世界に変えた魔法に対する蒼太の感想はその一言だった。
『悪い悪い、少しやりすぎたかい?』
精霊の姿は女性で蒼太よりも少し上の年齢に見える。彼女の髪は青みがかった白髪で、氷の精霊であることが見てとれた。
「いや、助かったよ。戻っていいぞ」
蒼太の助かったという言葉に妖艶に微笑むと彼女は再び剣の中に戻っていく。
「おいおい、あれを防いだ上にこの場を氷漬けにするとはどういう精霊だ」
白い息を吐きながら本郷は驚きを通り越して呆れていた。
「たまたま契約できたのさ。それより、お前こそさっきの球には驚いたぞ。まさかあれが実用化されていたとはな、少し違うが俺と長老が昔作ろうとしたものと同じコンセプトのやつだな」
千年前、蒼太と長老はいろんなアイテムを作り出していた。その中である程度のレベルの魔法を何かにこめることには成功していたが、先ほどのような上級魔法をこめるのには蒼太たちも苦労していた。
「ほう、同じものを作ろうとしていたのか。やはり侮れないな」
地球人であるがゆえに漫画・アニメ・小説・ドラマなどの中からインスピレーションを受けて、実際に試行錯誤して様々なアイテムを作り出していたのは蒼太も本郷も同じだった。
お読み頂きありがとうございます。
誤字脱字等の報告頂ける場合は、活動報告にお願いします。
ブクマ・評価ポイントありがとうございます。




