第三百四話
前回のあらすじを三行で
イシュドラ本気出す
巨大な炎の剣with雷
ブレスVSブレス
衝突したブレスは最初だけは力が拮抗して中央で止まったように見えたが、それも一瞬のことであり、すぐにイシュドラのブレスが優勢になった。その勢いのままブラオードのブレスを打ち消し、一直線にブラオードへと向かっていく。
『ぐあああああああああああああ』
そして、そのままブレスはブラオードを飲み込んでいった。
『強力な武器を作ったものだのう』
強化していないブレス同士であったとしてもイシュドラの勝ちであったと予想できるが、装備による強化はその結果を確定的なものに変えていた。装備の出来に感心するように唸ったイシュドラはこれを作った仲間たちのことを思い出した。
放たれた強力なブレスによる光がおさまると、そこにはブラオードが口をあけたまま煙をあげている。その皮膚はブレスによって焼かれ焦げていた。
『うーむ……やり過ぎたかのう』
イシュドラは頬を掻きながらその様子を見ていた。その表情は気まずいものだった。
『う、うぅ……』
すると黒焦げになったブラオードはうめき声を発しながらバランスを崩して横倒しになってしまった。
『ほう、まだ生きておるか。さすが古龍種といったところか……っと感心している場合ではないな』
イシュドラは慌てて近寄ると、小さな小瓶をどこからか取り出し、それを割って中身の薬品をブラオードに振りかけていく。古龍種となるとサイズ的に一つでは足らないので、複数取り出していた。
回復薬をそれだけの数かけた程度ではこの大きさの怪我を治癒するのは難しいはずだったが、蒼太が作った特製の回復薬は古龍サイズでも十分にその効力を発揮していた。
『ぐむむむ』
薬品の反応の光が淡く彼を包み込み、それが落ち着いた頃、ブラオードは身体を起こして調子を確かめるように首を横に振る。
『我の勝ち、ということでいいかのう?』
身体を起こした彼を見るイシュドラのその顔は勝ち誇った表情をしている。
『……あんな風にやられて、怪我まで治してもらって勝ちは名乗れん。負けを認めよう』
彼は先ほどの自分の状態、そして怪我を治してもらったことを考えて明らかに分が悪いと認めていた。
『ふむ、それは重畳。武器はもう壊れてしまったからのう』
負けを認めてくれて助かったという口ぶりで、かつ、ほっとした顔をしていたが、イシュドラにはどこか余裕が見て取れた。
『冗談はやめてくれ、あんなものがなかったとしても勝てないことは戦った俺自身がわかっている』
イシュドラのブレスは強化されていたが、その前の竜力の強さはブラオードのそれをはるかに超えていた。明らかに自分がうまくもてあそばれていたのだと、この結果を見ればはっきりと認識せざるを得なかった。
『かっかっか、まだまだ若いものには負けておれんからのう』
その言葉の通り、二人の間には四桁の年齢差があった。若い者の鍛錬をつけるくらいの認識でイシュドラは戦っていたのだ。
『参った、完全に負けだ』
『かっかっか、そう認められるだけの力はあるようで安心したのう。今後の成長が楽しみだのう』
イシュドラは手を差し伸べ、ブラオードを立ち上がらせた。
勝負はまたもや蒼太陣営の勝利だった。
最上階
「…………」
ここまで全戦全敗の本郷は言葉にできない苛立ちから無言でモニタを睨み付けていた。
「まあ、あいつならこれくらいはやるよな。名前をつけてやってテンションもあがってたみたいだし」
「ですね、あの武器は使い捨てにするにはちょっともったいないですね。何回も使える仕様にできませんか?」
蒼太もディーナも当然の勝利と考えており、話題は武器に移っていた。
「うーむ、どうしても宝石が使い捨てになるからなあ……あれを何度も使いまわせればいいんだが。あれに竜力を込めさせれば何回も使えるかもしれないな」
「あなたたち、こちらを無視して盛り上がるのはやめなさい」
武器の考察にふける彼らを見て無視されている本郷のことが気にかかったダークエルフの彼女が蒼太たちを注意する。
「そ、そーよそーよ! こっちにはまだあたいたちがいるんだからね!」
本郷が期待していたであろうブラオードの負けは彼女も予想していなかったが、なんとかここで巻き返さないといけないと魔王の娘もその大きな胸を張って、続いて言った。
「……お前たち、少し静かにしろ」
本郷はそんな二人に低い声で言う。その声には怒りが籠っていた。
「……っ申し訳ありません」
「ひっ、ご、ごめんよ」
未だかつて見たことがないほど怒りに満ちた本郷の声にびくんと身体を揺らした二人は彼に謝ると口を噤んだ。
「……お前たち、あまり調子に乗るなよ? あいつらを倒したからといって俺たちになんの影響もないからな」
使えない者はいらないという仲間を切り捨てるような言い方だったが、両隣にいる彼女たちは同意して頷いていた。
「いや、あいつらは俺とディーナをここに先に行かせるために残ってくれただけだ。あの勝敗が何かにつながるとは思ってもいないさ。それよりもそんな言葉が出るってことは、そっちのほうが勝敗を気にしているんじゃないのか?」
怒りに震える彼の余裕のなさにやれやれといった表情で蒼太は思ったことをそのまま言っただけだったが、それは本郷の怒りに触れる。
「生意気な……少し現実というものを教えてやらないとだな。おい、お前たち」
本郷の言葉にダークエルフと魔王の娘が前に出てくる。
「ん? お前たちが俺たちと戦うのか?」
「でしたら、私のほうはダークエルフの彼女ですかね」
蒼太とディーナは相手を確認すると、ダークエルフは思うところがあったのかぴくりと頬を動かす。
「私の名前はナルルースです。種族名で呼ぶのは失礼でしょう」
「あたいはフレアフル。よろしくねー!」
ナルルースは種族で呼ばれることに怒り、フレアフルは流れで明るく自己紹介をした。
「一応こちらも自己紹介しておこう。俺の名前はソータだ」
「それでは私も。ディーナリウスと申します」
蒼太は淡々と、ディーナは優雅に一礼しながら自己紹介を返す。
「お互い名前が分かったところでさっさと始めてくれ。もしそいつらに勝つことができたら色々と聞きたいことを教えてやろうじゃないか」
自分の側近として置いておくくらいには二人の強さに自信があるのか、本郷は余裕を取り戻してそう言った。
「なんか、さっきも同じような感じだった気がするが」
蒼太はブラオードの強さに自信を持っていた本郷の様子を思い出していた。そして、その言葉は本郷の耳にも届いており、こめかみには青筋が浮かんでいた。
「エルダード様、ここは我々にお任せ下さい」
「ふっふーん、ナルちゃんはわからないけどあたいはこんなやつには絶対負けないよ!」
フレアフルは自信を持っており、勝利を確信しているようだった。目の前の彼らの仲間たちの戦いから、それ以上であろう相手を前にして油断している彼女の様子にナルルースはイラつきを感じた。だが今の標的は目の前の相手だと冷静さを取り戻そうとしていた。
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