第二百七十九話
前回のあらすじを三行で
デカイギルド
依頼確認
アーベンに誘われる
蒼太たちが戻ると、レイラたちも既に宿屋へと戻っていた。
「先に戻ってたのか。早いな」
三人はロビーで飲み物を飲みながらのんびりと蒼太とディーナの帰りを待っていた。
「疲れた……」
レイラはぼそりと言った。その不機嫌そうな様子に蒼太とディーナは首をかしげていた。
「何かあったのか?」
蒼太はアトラへと話を振った。
『うーむ、なんといえば良いのか……』
『簡単な話であろうのう。レイラの容姿に惹かれた男どもが次々に声をかけてきたんだのう』
言いよどむアトラに代わって面白いとからから笑いながら古龍が答えた。
「なるほどな……確かにその恰好のレイラを一人にしたのは俺の判断ミスだったな」
レイラは自分についていてくれなかった蒼太に不満があったが、自分の行動が示した結果であることも理解していたため、口にはせずにただただふくれっ面になっていた。
「レイラ、悪かったな。明日は一緒に行こう……だがこれで一人で突っ走るのも懲りただろ?」
「うぐっ……はい。ごめんなさい、明日はちゃんとソータさんたちについていきます」
レイラは蒼太に先に謝られたため、意固地な自分が嫌になって蒼太へと謝罪をした。自分でも普段しない格好に浮かれていたことはちゃんと自覚していたのだ。
「明日は冒険者ギルドに行くぞ。依頼の数が多かったし俺たち向けのものも見つかるはずだから、楽しみにしていろ」
蒼太の言葉でレイラの表情は輝く。彼女にとって以前アトラたちと依頼をこなしたのが余程楽しかったのであろう。
「ギルド! 楽しみ!」
レイラは立ち上がって両こぶしを握り締めており、既に機嫌が良くなっていた。
「よし、まずは夕食を食べて今日は休もう」
蒼太の誘導で食堂へと向かい、その日の行動を終了することにした。
彼らの泊まる宿は盛況であり、宿泊客だけでなく食事客も多かった。その味は舌の肥えた蒼太たちを満足させるに足るものであった。一日いろんな男どもに振り回されて散々だと思っていたレイラも満足してふかふかのベットでぐっすりと休むことができた。
翌朝
「ギッルッド♪ いっらっい♪」
今日は全員冒険者としての服装をしており、全員揃っての行動であるため、レイラは機嫌良く鼻歌を歌いながら一番前を歩いていた。
「楽しそうなのはいいんだが、場所わかってるのか?」
とりあえずの方向があっていたため何も言わずにいたが、そろそろ広場に差し掛かるため蒼太が確認に声をかけた。
「うっ、わ、わかりません……」
びくっと身体を震わせたレイラは足を止めておずおずと振り返ると素直に返事をした。
「ふふっ、大丈夫、あってますよ。広場にたどり着いたら、次の道を教えますね」
突っ込みをいれるだけの蒼太、助言を与えるディーナ。レイラにとってはいい飴と鞭になっていた。
「ディーナさんありがとう! それに比べて……」
目を細めてじとっと蒼太のことを見るレイラだったが、冗談で言っているのが分かっている蒼太はその様子を見て笑っていた。
「あー、笑ってるー! もう、いいよ。ディーナさん、先に行こう!」
「やれやれ、まだまだ子供みたいだな」
レイラはディーナの手を引いてずんずんと先に進んで行く。目的地は同じであるため、蒼太は肩をすくめながらそのままの速度で進んで行った。
蒼太があとからたどり着くと、ギルドの掲示板の前でレイラが上機嫌で依頼を選んでいた。
「どれがいいかなあ……あ、ソータさんどの依頼にする?」
目の前に並ぶたくさんの種類の依頼にさっきまでの機嫌のふくれっ面はどこかへ消えていた。
「受けたいのを選んでくれたら俺が判別するから、好きなように三つくらい選んでくれ」
「りょーかい!」
ディーナもレイラに任せて少し離れたところで見守っていた。
しばらく待っているとレイラが二人のもとへ戻ってきた。
「ソータさん決まったよ、これとこれとこれ!」
渡されたメモを見ながら照らし合わせるように蒼太とディーナが壁の依頼を確認していく。
「なるほど……この中だったら、一番下のやつかな」
そこに書かれたのは、帝国の西にある森を抜けたところにある洞窟、そこの奥にいるとある魔物の素材をとってくるというものであった。
「あたしもそれが一番いいと思ってたの!」
「そうですね、これなら手ごたえがありそうですし、いいかもしれませんね」
二人も乗り気であることを確認し、これを受けるため受付に向かった。
「いらっしゃいませ、依頼の申請でしょうか。それとも依頼の受領でしょうか」
依頼を受けにきた一行は受付嬢の記憶になく、彼女は確認のために両方の質問を投げかける。このギルドの受付職員のほとんどが記憶力には自信があったからだ。
「依頼の受領のほうだ、これを頼む。メンバーはこの三人とそっちの獣魔二体だ」
蒼太はレイラのメモの一番下の依頼だけ破りとって受付嬢へと渡した。
「……こちらの依頼ですね、複数グループ受付可能ですので大丈夫です。それでは三名の方はギルドカードの提出をお願いします」
そう言われた時には既に三人ともカードを取り出していた。
「はい、少々お待ちくださいね………………はい、完了です。依頼内容は記述してある通りになります、依頼報告は受付で行って下さい」
ギルドカードの返却とともに、依頼の受領書を受け取り、そのまま蒼太たちはギルドをあとにした。
蒼太は外に出てから二人に話しかける。
「少し距離があるみたいだから、エドを連れて馬車で向かおう。それと、本気装備はまだ出さないでおくように」
後半は他に聞こえないように声をひそめていた。
「わかりました」
ディーナは蒼太の言葉の意図がわかっているようで、頷いて返す。
「わかったー」
レイラも返す返事は肯定だったが、首を傾げていた。
「宿に戻ってしばらく空けるかもしれないと話しておこう」
一行は一度宿に戻ると、女将に説明しエドと馬車を返却してもらい出発する。一週間の料金に加えてもう一週間の料金を先払いすることで、部屋のキープを了承してもらえた。二週間を過ぎても戻ってこなかった場合は部屋を引き払うことになっている。
「さて、部屋を引き払われる前に戻ってこないとな」
「ゴーゴー!」
既に門でのチェックを終えた蒼太たちは馬車に乗り込んで西の森に向かっている。もちろん道中で食べるために、屋台の料理などはいつも通り大量に買い占めている。依頼達成の報酬を考えると明らかに赤字であったが、気分転換も含めているので蒼太は気にすることなく豪快に買い物をした結果だった。
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