第二百七十三話
前回のあらすじを三行で
帝国の情報
将軍の直轄部隊
将軍の正体?
食事を終えた一行は蒼太の部屋に全員が集まる。
さきほど一階の酒場で蒼太が口にした『そいつはもしかして』という言葉の続きを聞くためだった。
「それで、一体何がわかったんですか?」
部屋に入り、魔法で音が漏れないように障壁を張ったディーナは蒼太へと質問する。
「あぁ、さっきの話の続きだな。あいつの話を聞いて気になったことがあるんだ。一つ目はまるで預言者、二つ目は誰も知らないような知識を持っているという部分だ」
蒼太は指を二本たてて、全員が見えるように前に出す。
「まずは預言者っていうほうだが、どこまで正確に言い当てたのかがわからないから何とも言えないが俺は二つの可能性を考えている。預言、もしくは予知というユニークスキルを持っている可能性。これがあれば小人族の居場所を次々に特定できたのも頷ける」
確かにその通りだ、と納得しかけるがレイラが疑問を抱く。
「でもでも、そんな能力があるんだったらもっと早く集落の場所を突き止めていたんじゃないのかな?」
ただ思ったことを口にしただけだったが、実にその通り、彼女の意見にみんなが同意する。
「その通りだな、となるとその能力を使用するのに条件があってその条件が整った可能性がある。ディーナとソルディアのペアコネクトにも一定の条件があって、それが揃った時は場所の制限を取っ払うことができたはずだ。まあ今となってはその特定は困難だが……」
これにも再びみんなが同意した。
「次に、預言とか予知の類ではなく、予想なのではないか? ということだ。予想というとあてずっぽうや、なんとなくという印象があるかもしれないが、様々な情報が揃えばその精度は予知に近いものとなる」
「それはどういう……」
「それはどういうことですか? か」
蒼太はあえてディーナの言葉にかぶせるように言った。
「今のも予想だ。ディーナならおそらくそう聞いてくるんじゃないかと思って言ってみたんだが、当たっていただろう?」
蒼太の言葉にディーナは頷いた。だが、レイラは渋い表情をしている様子で納得していないようだった。
「でも、そんなのいつも一緒にいたからわかるだけだよね? ただの癖っていうか、そういうのじゃないのかな」
口をとがらせて納得のいかない気持ちを蒼太にぶつけてくる。
「今のはわかりやすい例として言っただけで、レイラの話も全くその通りだ。だが、その情報がたくさん集まればそれこそある程度の予測をつけることができる。右利きだから右手に持った剣で攻撃してくるだろう、魔法が得意だからとどめの一撃は魔法で決めてくるだろうといったようにな」
まだ完全には納得いかない様子のレイラだったが、口を真一文字に結んで話を聞いていた。
「俺がいた国では、明日の天気は何か、明日はどれくらい暖かくなるなんていう予報を生業としている者もいた。それを聞く側も高い確率でそれを信じ、参考にしていた。これは過去の情報を集めて、それを参考に現在の情報を集めて結果を出してそれを伝えている」
ディーナだけは昔聞かされたことがあったが、他の面々はそのことに驚いていた。
「まあ、あくまで例だし予想だからこれが当たっているかどうかはわからんがな。それより次の話に移ろう。二つ目のひっかかった点は誰も知らないような知識を持っているって話だ」
これについてはディーナも薄々何を言いたいか気付いているようだった。彼女は手を上げて発言の許可を求める。
「ディーナ、話してくれ」
蒼太もその様子に頷いて、ディーナに発言を譲った。
「はい、誰も知らないような知識と聞いて私は一人の人物が思い浮かびました。それは……」
「それは?」
レイラが合いの手をうつ。
「ソータさんです。私は昔ソータさんから住んでいた国の話を聞かせてもらいました、その他にも色々な文化の話もです。それは私が、いえ私だけでなく誰もが聞いたことのない話でした」
そこまで聞いたところでレイラは驚いて蒼太に強い視線を送った。
「まさか、ソータさんが黒幕……」
そんな見当違いのことをつぶやきながら。
「アホか。そんなわけないだろ? ちゃんと最後まで話を聞いてくれ」
自分でもぶっとんだ発想だということは気付いていたため、レイラはすぐに表情を崩し、ペロッと舌を出していた。
「ソータさんの話はどれもが聞いたことのない話でした。でも、同じ情報を持っているであろう人物の可能性ならわかります。それは、ソータさんと同郷の方です」
「同じ国、同じ町という小さい話ではなく、もっと大きな単位でな」
それ聞いてレイラはその可能性があったかと納得していた。
「つまり俺と同じように召喚された、もしくは転生してきたという線が濃厚だと思っている。こんな話はあの場所でできないからな」
腕を組んでそう言った蒼太の顔は険しいものになっている。
「そうなるとだいぶ厄介だ。どれくらいの知識があるかわからないが、将軍になるほどの男であれば頭も悪くないだろう。そして鋭い男であるとしたら俺の正体にも薄々感づいているはずだ。それの確証を得るために俺を呼びつけようとしたとも考えられる」
部屋の中は静まり帰っていた。レイラも何も言わず、蒼太の話の内容を理解しようと一所懸命考えていた。
「この世界の人々と俺がいた国では根本的に考え方が違うと思う。だからこそ今まではそこが俺のアドバンテージになっていたんだが、今度はそうもいかない。相手も根本的なものは同じ、そこまでいかなかったとしても近いものはあるだろうからな。少なくとも俺の考えに予想を立てることは他の者よりはやりやすいだろうさ」
最大の敵かもしれない、自分が全力でかかっても危ないかもしれない、そんな考えが頭をよぎるが口にするのは憚られた。
「なんにせよだ、そいつの相手は俺がやることになると思うから、みんなはそいつの手下たちの相手を頼む。集中して一対一で戦いたいからな」
それをこの仲間たちならやってくれるだろうと蒼太は信頼していたため、その信頼を受けたみんなは目を輝かせて深く頷いていた。
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