第二百六十四話
前回のあらすじを三行で
蒼太、宿泊施設建設
小人族を攻めたのはやはり帝国
帝国に行くか
『ま、待て待て。エドワルドに華を持たせたいというのはわかるが、そんなところで意地を張って時間をかけても仕方がないだろうのう!』
古龍は慌てた様子で、わざわざ陸から向かう必要がないことを主張する。
「あー言っておくが、別に古龍に頼りたくないとか、もちろんエドに華を持たせるなんて考えはないからな?」
『ではなぜ!』
やや食い気味で質問してくる古龍。
「お、落ち着け。俺とディーナが調べた結果わかったことなんだが、あの国はここ数十年で空中戦力が充実してきているらしいんだ。その名を竜騎士部隊」
蒼太はその名称を最初に見た時に、竜属性の技を使う部隊かと考えたがよくよく調べると飛竜にのった部隊のことだった。
「かっこいー!!」
その感想はレイラからだった。竜に乗って空を飛ぶということは誰しもが一度はあこがれるものなのだろう。
「空飛ぶ騎士とか確かにかっこよさはあるな」
蒼太もその感想に同意したが、それが面白くないのは古龍だった。
『お主らも我の背中に乗って飛んだであろう、それなのに飛竜ごときを褒めるとはなんたることだのう』
古龍は自分を差し置き飛竜に乗る騎士が褒められたことを面白く思っていない様子だった。
「まあ、乗ったまま戦ったわけじゃないからな……話がそれたな、俺が言いたいのはそいつらがいるから空を飛んで行ったら古龍の存在がばれるということだ。竜種という存在はただでさえ目立つ。それは本来の姿であろうと、偽装した姿であろうとどちらでもな」
『むむう』
もっともな蒼太の言葉に古龍はうなる。
「敵と戦う前にこちらの戦力を明かす必要はないだろ? それに空から行ったらいきなり全面戦争になりそうだ、最初は穏便に事を進めていきたい。だから、地上を進むつもりでいる。古龍の力は敵との戦いになったときまでとっておいてくれ、期待してるからな?」
自分よりおそらく実力が上である蒼太から期待されていると言われ、すっかり古龍の機嫌は回復していた。
『ふ、ふむ。ならば仕方ない、その時がくれば我の力を見せつけてやろうかのう』
蒼太は内心でちょろいなと思ったが、それは外には出さず古龍に対して頷きだけ返す。
「あたし! あたしはどう!!」
今度はレイラが蒼太に褒められている古龍をうらやましく思い、自分はどうかとアピールしてくる。
「レイラは……まだ未知数だな。どれだけ新しい武器と技を使いこなせるかってところだ」
それを聞いてレイラは微妙な表情になっていた。それに気づいた蒼太は更に言葉を続ける。
「だから、本番になったらその成果を見せてくれ。楽しみにしているからな?」
「うん! 任せて!!」
古龍の時とは言葉が違ったが、蒼太に楽しみにしていると言われたことでレイラは明るい笑顔になっていた。
「あのー、じゃあ私も」
ディーナも便乗したいのか控えめに手を挙げる。
「ディーナは、なあ。大丈夫だろ」
たったそれだけの言葉しかなかったが、ディーナは満足していた。
「なーんかいいなあ、二人はわかりあってる感じで……言葉にしなくても信頼あるよなあ」
先ほどまで機嫌がよくなっていたレイラだったが、今度はディーナにやきもちをやいていた。
「私はちゃんとレイラのことも信頼してますよ。特訓がんばってましたらかね、ソータさんはその姿を見ていないので、それを実戦で見せつけてあげて下さい」
慕っているディーナのその言葉で機嫌をよくしたレイラは再び満面の笑顔となっていた。
「ディーナ、うまいな……」
蒼太のそのつぶやきは緩みきった笑顔のレイラの耳には届いてなかった。
「うふふ、でも本当のことでもありますよ。レイラはすごくがんばっていましたからね、聖地で初めて戦った時とはもう比べ物にならないです」
それは聞こえていたらしく、レイラは胸を張って笑顔になっていた。
「まあ、強くなっているのはいいことだ。俺たちの相手もおそらく一筋縄ではいかないだろうからな……」
蒼太は目を細めてそう言った。その表情に一同は気を引き締めていた。
「あ、あのー、もう帰ってもいいですか?」
一人この場に居づらそうな様子だった小人族の長がやっとのことでそれだけ口にする。
「あぁ、悪かった助かったよ。ちなみに……ここでの話は他言無用だからな、例え家族に対しても沈黙を貫いてくれ」
蒼太は少し高圧的な表情で長に念を押す。
「ひっ、わ、わかってます。あれだけのことをしてくれた恩人に仇なすことはしませんから、そ、それでは失礼します!」
長は身体を震わせると、逃げ出すように駆け足で屋敷を出て行った。
「ちょっとかわいそうなことをした気もするが……まあ、あれくらいでちょうどいいか」
蒼太は一瞬反省しようと思ったが、念押しをしたのは正解だったろうと自己完結した。
「そうですね、結構色々と話してしまいましたし、小人族には以前もスパイがいましたから、妥当な判断だったと思います」
ディーナの賛同も得られたので、なおさら蒼太はよしとすることにした。
『して、ソータ殿。いつ出発されるつもりだ?』
アトラの質問は最もだった、善は急げという言葉もあるが小人族の一件を放ってそのままいくのも蒼太は気が引けていた。
『うーむ、小人族の件は領主に任せたのであろう? ならば放っておいても事はうまく運ぶのではないかのう?』
一番理性的に考えているのが古龍だったことに蒼太は今回もなんともいえない表情になる。
「まあ、そうなんだけどな。頼んだ手前どういう判断を下すのかくらいは見届けたほうがいいとも思うんだ」
蒼太の意見も最もであった。他者のため、今回でいえば小人族のために領主に直談判に行ったのは蒼太であるため、その結果がどうなったのか、それを知る義務があるともいえる。
「おそらく動くとしたら、明日の午前でしょうから午前中はそちらの様子を見る。もしくは、出発は明後日にするのがよろしいかと」
妥協案としては、ディーナの提案が一番しっくりくるものであり、蒼太も古龍も頷いている。
「一日やそこらじゃ、こっちの状況は変わらないだろうからその案でいこう」
今後の方針が決まった一行は、夕食の支度、外で訓練、読書などとそれぞれの時間を過ごすことにした。
お読み頂きありがとうございます。
誤字脱字等の報告頂ける場合は、活動報告にお願いします。
ブクマ・評価ポイントありがとうございます。




