第二百六十話
前回のあらすじを三行で
今日も二グループに分かれて行動
小人族の難民?
領主に確認
「さて、話に入らせてもらってもいいか?」
「お、おぉそうじゃったな。わざわざ来たということは何か用事があるんじゃろ? ソータ殿の頼みなら大抵のことは聞こうじゃないか」
エルバスは蒼太がわざわざ来てくれたことを嬉しく思い、身を乗り出して質問する。
「直接的に俺がどうこうってわけじゃないんだが、少し前からトゥーラの街に小人族が押し寄せてきている。なんでやって来たのかはわからないが、着の身着のままやってきたらしく身分証明をできるものを持っていないらしい」
蒼太の話を聞いてエルバスは先ほどの好意的な表情とはうって変わって厳しい顔つきになる。
「それで、わしにどうして欲しいんじゃ?」
「小人族の受け入れを考えてくれれば一番いい結果だ。それがダメなら次の定住地を見つけるまで一定期間住める場所の用意。それもダメなら、多少の援助といったところか」
領主としての判断を求められる案件にエルバスの表情は更に難しいものになっていた。
「……ソータ殿はなかなか難しい案件を持ってくるのう。ソータ殿はどうしてその小人族に肩入れを?」
「小人族はいくつもの集落に分かれて暮らしているのは知ってるな?」
蒼太の言葉にエルバスは頷く。これはこの世界に住んでいるならば当たり前の話として知っているものであった。
「そのうちの一つの集落の住民が何かあったようで全員トゥーラに来たらしい。そしてそこの集落の長はちょっとした知り合いでな、そいつに頼まれたからやってきたというわけだ。それに街の入り口の衛兵たちからもなんとかしてくれと頼まれたもんでな……」
蒼太の話を聞いて状況を理解したエルバスは目を瞑り、天を仰いでいた。
「悪いなやっかいな案件を持ってきて、まあダメならダメでいいけどな。できる範囲のことをやってやるくらいだ……幸い俺自身、金には多少のゆとりはあるからな」
そう言われたエルバスは肩の力が抜けて、ソファに寄りかかった。
「ソータ殿にそう言われてわしが何もしないというわけにはいかないじゃろうなあ……少し考えさせてくれ、明日には結論を出そう」
「今も街の前に待機してもらっているんだが、それはどうする?」
明日に伸ばしたところで、今この時間に押し寄せている小人族への対応は何もなされない。そのため蒼太は現状の領主としての見解を確認した。
「そうじゃのう……さすがに街外に放っておくわけにはいかんからのう」
エルバスは顎に手を当てながら考え込み、部屋は静まりかえる。
「おじい様なんとかなりませんか? ソータ様も小人族のみなさんも困っているのでしょう?」
懇願する孫のエリナの言葉はエルバスにとって何よりも効果的だった。
「うむむ、エリナにもそう言われては……」
エルバスは腕を組んで妙案がないものかと考え込んでいる。
「……なあ、一つ提案があるんだが」
蒼太の助け舟にすがろうととエルバスは目を見開いて視線を向ける。
「今小人族はトゥーラの門を出たとこに待機している。もちろん入場の邪魔にならない位置だがな。そこの土地を今夜一晩彼らの宿として開放してほしい。宿泊する施設のほうは……まあ俺のほうでなんとかしよう」
「ありがたい申し出なんじゃが……」
蒼太の言葉はエルバスにとって渡りに舟だったが、それでもトゥーラの街の領主として一冒険者といえる彼に丸投げすることには抵抗があった。
「気にするな、俺はあんたのためにやるんじゃない。俺の知り合いのためにやるだけだからな。とりあえず、今からその用意にかかるからこれで失礼させてもらおう」
今のまま話し合っても埒が明かないと分かった蒼太はぶっきらぼうにそう言うと、席を立つ。黙って成り行きを見守っていたディーナも話し合いは終わったと判断し、それに続いて立ち上がる。
「ちょ、ちょっと待ってくれ」
「悪いな、もう行かせてもらう。明日までになんらかの対応を考えておいてくれることを願っているよ」
エルバスが彼らを引き止めようとしたが、蒼太は止まらずに手をひらひらさせるのみで部屋をあとにする。
「そ、ソータ様、お送りします!」
エリナはどちらを選んでいいか一瞬迷い、一度エルバスを見てから、蒼太の見送りを選択した。
足早にかけていく孫の様子を見たエルバスは一度頭を冷やそうとあえて見送りには加わらず、ソファに座り込んだまま思案に耽っていた。
「ソータ様、ごめんなさい。おじい様も色々考え込んでいるのだと……」
家の玄関までたどり着くと、申し訳なさそうなエリナが丁寧に頭を下げた。
「エリナが謝ることじゃないさ。もちろんエルバスが謝ることでもない。むしろ領主としては当然だといえる反応だ、俺やエリナが言ったからといってそれでほいほいなんでもやってくれたら領主としての資質に疑問を持つところさ」
蒼太は肩をすくめてエルバスのフォローをするが、エリナにはそれですべてわかったらしく少し悲しそうな表情をしていた。
「俺はこれからやることがある。エルバスはエルバスで、明日以降できることを考える。それぞれがやれることをやればいいんだよ」
少しうつむき気味のエリナの頭を優しく撫でると、蒼太は領主の館をあとにした。
「エリナさん、大丈夫ですよ。ソータさんと領主さんのお二人がなんとかしてくれるはずです」
ディーナも安心させるようにエリナの頭を撫でて微笑むと、蒼太のあとに続いた。
「あ、ありがとうございます」
それぞれの手から与えられた優しい温もりを感じたエリナは二人に感謝の言葉をかけると、大きく手を振って見送った。
屋敷を出てしばらく歩いたところでディーナが質問する。
「ソータさん、みなさんが休む施設はどうするつもりなんですか?」
「うーん、とりあえず簡易的な小屋みたいなものを作ろうかと思ってるんだが……布団と毛布が必要になるからディーナはそっちを人数分用意してもらってもいいか?」
「もちろんです!」
蒼太に頼られたことにディーナは喜んでおり、大きな声で返事をした。
「その前にメシだな……腹が減っては戦はできん。俺たちもゴルドンのとこで昼食にして、終わってから作業にとりかかろう」
「そうですね、さすがに私もお腹ぺこぺこです」
朝から休憩せずに本を読み漁っていた二人は、今にもお腹がなりそうなくらいには空腹を感じていた為、その足でまっすぐゴルドンの店へと向かった。
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