第二百三十二話
前回のあらすじを三行で
街に戻る
鍵すげー
買い物ぶらぶら
蒼太と職人三人はカレナの店に向かっていた。
三人は初めて来た街に興味津々といった様子でキョロキョロと眺め、時には足を止めて気になった店で買い物をしていく。国ではかなり名の知られた職人たちであるために金に困ることはないようで、次々に興味を引かれたものを購入していく。
「お前らカバンに入りきる程度にしておけよ」
一応蒼太が注意するが聞こえてるのか聞こえていないのか、三人の買い物の手は止まらない。アントガルに至ってはカバンを持っていないため、蒼太に預かってもらっている。
三人が楽しそうに買い物をしていることに自分が頼んでいる側ということもあって強く注意はせず、蒼太は買い物に付き合っている。そのため、一行がカレナの店に到着する頃には日も傾き始めていた。
扉を開けるとベルが鳴り、蒼太たちの来訪を店内へと伝える。
「いらっしゃいませーってソータさん! お久しぶりです。あの、お母さんのことありがとうございました」
店番をしていたのはエルミアで、ローリーがここに来る背中を押したのを聞いたため、蒼太へと御礼の言葉を深いお辞儀とともに伝えた。
「あぁ、気にするな。俺はただこの店に無理やり入らせただけだかな。大したことはしてないよ」
蒼太は両手を広げて何ということはないというポーズをとる。
「それよりもカレナとローリーはいるか? 二人に用事があるんだが……」
店内に二人の姿が見えないためエルミアへと尋ねた。
「奥にいます。前にお婆ちゃんとソータさんが薬を作った工房にいるので、入ってもらって構いませんよ」
自身も蒼太に世話になっており、カレナとローリーから蒼太の話を何度も聞かされたため彼に対して強い信頼を持っていた。
「悪いな、あとこいつら俺の連れのドワーフの職人なんだが一緒につれて入っていいか? 用事っていうのがこの三人が絡んだ話なんだ」
エルミアは三人の顔を見て、もう一度蒼太を見ると大きく頷く。
「大丈夫です、蒼太さんのお友達だからきっとみんないい人です」
その全幅の信頼はいかがなものか、と蒼太は心の中で思ったが目の前の少女の純粋な瞳に気圧され、その言葉は飲み込むことにした。
「それじゃあ、入らせてもらおう。ほら商品見てないで行くぞ」
ボグディは棚に陳列された商品に目を奪われていたが、蒼太の言葉で意識を引き戻され後についていった。
工房に入るとカレナとローリーが作業をしていた。蒼太はふざけた様子のローリーを見ることが多かったため真剣な表情で話している彼女は意外なものだった。
「作業中に失礼する」
蒼太は開いている扉をノックしてから声をかける。
「おや、ソータじゃないか。久しぶりだね、今日はいつもと違うメンバーを連れてるようだね」
「おー! ソータさんお久しぶり! この間は思うとこがないこともないけど、結果としてありがとね!」
カレナはいつもと変わらない様子で、ローリーはややテンションが高い、これまたいつもと同じ様子だった。
「あぁ、二人も元気そうでよかったよ。今日はちょっと頼みたいことがあって来たんだ。その前にこいつらの紹介をしよう」
蒼太が言うと三人は蒼太の横に並ぶ。
「じゃあ、アントガルから順番に自己紹介してもらえるか?」
「おう、俺からだな。ドワーフの国で武器を作っているアントガルだ、よろしく」
蒼太の言葉を受けアントガルが軽く頭を下げて挨拶する。
「次は僕ですかね。防具職人のボグディです。僕もこいつと同じでドワーフの国の職人になります」
「わたしはアクセサリ職人のアリサです。二人と同じくドワーフの国で工房を開いています」
カレナから漂うオーラを感じ取ったアリサは自然と敬語になっていた。
「この三人は千年前のドワーフ族の勇者ラウゴの子孫で、その腕も確かなもの、らしい。アントガル以外は見てないが、多分、おそらく」
蒼太が自信なさそうにいうので、ボグディとアリサは蒼太を横目で睨んでいた。
「ふーん、わざわざそんな遠くから来たってことは何かまた重要な用件があるってことかい。しかもつれてきたのがあんたということは、なかなか難易度が高そうだね」
カレナは口では厄介なことを、といった様子だったがその表情には笑顔が浮かんでいた。
「どーも、ローリーさんです。よろしくねー」
「私の名前はカレナリエン、カレナで構わないよ」
互いが自己紹介を終えると、軽く握手をかわしていく。
「それじゃあ話を聞かせてもらおうかね。さすがにここじゃゆっくりできないからあっちの部屋に移動しようか」
カレナの誘導でリビングへと移動していく。
「カレナかローリーが出した飲み物には気をつけろよ……エルミアが出してくれた場合なら大丈夫だ」
蒼太は以前の紅茶を思い出して、職人三人に忠告をしておく。それを聞いた三人の顔はみるみる青ざめていき、三人の脳内では錬金術師の作る怪しい飲み物がイメージされていた。
「さて、飲み物でも用意しようかね」
部屋に入るとカレナがそう言ってキッチンに向かおうとする。その背中を見た蒼太はちょっとした絶望感に打ちひしがれそうになるが、そこへ救世主がリビングへとやってきた。
「お婆ちゃん、お店のほうは閉めてきたから私がお茶の用意するね。みなさん座ってて下さい」
「そうかい? じゃあ頼んだよ。それじゃみんな座っておくれ」
お茶がどうなるのか成り行きを窺っていた蒼太たちは立ったままだったため、座るよう促された。
「さて、お茶は用意してくれるみたいだから話を聞こうじゃないか。ソータが持ってくる話となれば、一筋縄じゃいかないのはわかってるよ」
厄介ごとだとわかっている。そう宣言されたため蒼太も話しやすかった。
「あぁ、今回はカレナ、ローリーの二人に頼みたいことがあって来たんだ」
蒼太の言葉にローリーは目を丸くして驚く。
「えっ? お母さんだけじゃなく、ローリーさんにも?」
カレナも、お茶を持ってきたエルミアも同様に驚きの表情になっていた。
お読み頂きありがとうございます。
誤字脱字等の報告頂ける場合は、活動報告にお願いします。
ブクマ・評価ポイントありがとうございます。
再召喚された勇者は一般人として生きていく? 9/10発売です!




