第二百二十八話
前回のあらすじを三行で
アントガルが連れてきた二人
二人は親戚、つまり……
職人ズ「がんばろう!」
森の中に入り、念のため奥の切り立った岩陰の裏に回った一行はそこでアトラと古龍の本来の姿を確認することにした。
「じゃあ、二人とも元のサイズに戻ってくれ。ここなら周囲に人の気配が感じられないから大丈夫だ」
そう言った蒼太は、話しながらも周囲の気配を確認していた。
『では私から』
インパクトが強い古龍を後にしたほうがいいだろうと空気を読んだアトラが先に名乗り出た。そして、その姿は徐々に大きくなり本来のエンペラーウルフの姿へと戻った。
「こ、これは」
「えっ、すごい!」
「ま、まあ、あんたの仲間ならこれくらいはやるだろうな」
素直に驚くボグディとアリサ、そして内心かなり驚いてはいるのに思わず強がりを言ってしまったアントガル。三人の様子を見て蒼太は満足そうに頷いた。
「改めて紹介するが、こいつはエンペラーウルフのアトラだ。これが本来の姿だが、街中ではばれないように子狼の姿をとってもらっている。余計な問題に巻き込まれたくないからな」
蒼太が説明をしていくが、職人ズは聞いているのかいないのか、未だアトラの変化に驚いていた。
「ごほん」
蒼太がわざとらしい咳払いをすると、三人は現実に引き戻され蒼太へと視線を移す。
「いいかな? まずアトラだが、戦闘スタイルの一番の特徴は素早い動きだ。だから、その動きを阻害しないような物が望ましい、とりあえずは武器と防具だな。アクセサリは何かいいものがあればそれを頼む。まあ、一番難しいのは身体のサイズに応じて変化するようにしてほしいことだが……その顔を見る限りそれぞれ案はあるみたいだな」
今まで各種族向けの装備は作ったことがあったが、魔物用、それもエンペラーウルフ用となればそれぞれがインスピレーションを刺激されたのか様々な方法をすでに頭の中で考え始めていた。
「色々と構想を練ってくれるのはありがたいが、まだもう一人残ってるのを忘れないでくれよ?」
『ふむ、我は装備など不要だと思うのだが……まあソータが言うなら仕方ないのう。それでは我も元の姿に戻ろうとしようかの。まずはこれから』
古龍はそう言うと、子竜の姿から火竜の姿へと変化する。アトラ以上に大きな変化だったため、三人は言葉もなかった。
『かっかっか、驚いているようだのう。だが、まだここからだのう』
火竜の姿を一度挟んだ古龍は、今度はその変化を解いて元の姿に戻っていく。気配を抑えてはいたが、森にすむ敏感な動物たちは次々と逃げていった。
本来の古龍の姿を前にした三人は先ほど以上の衝撃を受けており、見上げたまま口をぽかんと開けて放心状態になっている。
「おーい」
蒼太が声をかけるが、その声は全く届いてないようだった。
「仕方ないな」
魔力を手に込め、パチンと手を叩く。風の魔力を込めていたため音は増幅され、三人の意識を戻し注視させるのに十分な効果を持っていた。
「ふぅ、やっと戻ってきたか」
軽く蒼太はため息をつく。
「い、いやいやいやいや、これってどういうことですか!?」
「は、はは、ははは、これはきっと夢ね」
「さ、さすがあんたの仲間、だ」
三人三様の反応だったが、どれもそれぞれの驚きの上限を超えたがゆえの反応だった。三人は蒼太が古龍と呼んでいるのを聞いて、こりゅう、子竜だと思っていたためあまりの想定外ぶりに一層の衝撃を受けていた。
「まあ、驚くよな。念のため言っておくがこいつらのことは他言無用だぞ? 信用してるからこの姿を見せたことを忘れないでくれ」
蒼太の言葉に三人は何度も頷いていた。
「こいつは、どうなんだろうなあ。動きの邪魔をしないで、攻撃力と防御力を上げたいところだが、正直何がいいかは俺には想像がつかない。アイデアに関して相談にはのれるが、あんたたち職人のインスピレーションに任せたい。それと、当然ながらこいつもサイズ変更可能装備で頼みたい……難しければ着け外しでもいいが」
蒼太の難しければ、という言葉は通常であれば三人の職人魂に触れ、笑うか怒るかするところだったが、今は目の前の衝撃が強すぎてそれどころではなかった。
「これじゃ話が進まないな。二人とも小型サイズになってくれ」
その指示通りに二人はその姿を子狼と子竜サイズに戻した。
「それで、作ってもらえるのか?」
蒼太が質問をすると、何とか気持ちを奮い立たせた三人が返答をする。
「い、色々聞きたいことはありますが、作ります……いえ作らせて下さい。こんな経験はそうそうできるものじゃない!」
ボグディは質問したい気持ちをなんとか押さえ込んだが、創作意欲の高まりは抑え切れなかった。
「わ、わたしも作るわ! こんな面白いことってないもの! そりゃ驚いたけど、こんなすごい人たちのために作れるなんて滅多に、ううん今後一生ないわ!」
アリサもボグディに続く。
「俺はそもそも作る気満々だ。あんたの頼みは断れないさ……それ以上に職人としてやりがいしかない!」
最後にぐっと握りこぶしを作って頷いたアントガルの了解も得られたことで蒼太は更に話を続けていく。
「こっちのエドワルドはこいつらみたいに変化はしないが、知能も能力も高い。それを引き出せるような装備を作ってもらいたい。それと……レイラ、こっちに来い」
古龍とアトラの変化の間ディーナと二人で離れていたレイラを呼びつける。
「ソータさん、なあに?」
なぜ自分が呼ばれたかわからないレイラは、首を傾げて蒼太に尋ねる。
「お前も本来の姿を見せておいたほうがいいだろう。今の状態だと本当の力を使えないからな」
竜人族としての装備と人族としての装備では、考えなければいけないことが変わってくるための蒼太の判断だった。
「わかった、じゃあ一度腕輪を外すね」
古龍やアトラのように身体のサイズの変化はなかったが、腕輪を外して現れた彼女の変化も職人三人を驚かせるに十分だった。
「り、竜人族!?」
何とかその言葉を搾り出したのはボグディだった。レイラと蒼太はその言葉に頷く。
「見るのは初めて、だよな。まあこういうことだから、こいつの装備はそれを考慮して作ってもらえると助かる」
淡々と話を続ける蒼太だったが、三人は情報の許容量をオーバーし始めていた。
「わかってると思うが、こいつのことも、それから俺たち全員のことは他言無用で頼むぞ」
衝撃的なカミングアウトが続いたことで、三人は何も考えずに呆然と頷くことしかできなかった……。
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