第二百二十一話
前回のあらすじを三行で
蒼太なら戻ってくるだろう
転がりまわるゴーレム
止める古龍
「相変わらずその切り替えの早さには戸惑うが……竜人族の元族長の宝玉を通じてあんたが何か調べてたのと、この迷宮に色々アイテムを残してるって知ったから、情報収集とアイテム狙いだな」
先ほどまでの転がっていたグレヴィンと今のグレヴィンのギャップに蒼太以外の面々も驚いていた。
「ふむふむ、アイテム類はこの奥にあるから好きなだけ持っていくとええ。調べていたことというのはおそらくわしらを陥れようとしたあいつのことじゃ」
グレヴィンの声のトーンはやや下がり、真面目なものへと変わっていた。
「あいつについて何かわかったのか? フランシールの兄だってことは突き止めたが、なぜあいつがあんなことをしたのか全くわからん」
「うーむ、わしも調べたんだがよくわからんかった……あいつがあのあと何かするかとしばらくの間、あいつの動向を確認していたが、普通に即位して、何かを起こすこともなくそのまま天寿を全うしおった」
グレヴィンの話を聞いて、蒼太とディーナは眉をひそめる。
「じゃあ、何もわかっていないのか……竜人族の族長と色々話し合ってたと聞いて期待してたんだが」
蒼太は明らかに落胆の表情となる。自分たちに仇なした相手が何もなさずに亡くなったことに言いようのない悲しみを感じる。だったらなぜ俺たちを陥れたのか、そんな考えが頭の中をぐるぐると回っている。ディーナも同様の考えに至っていたようでショックを隠しきれなかった。
「あいつに関してはこれといった情報を得ることはできなかったが、その数十年後から我々の状況が一変したんじゃ」
グレヴィンは蒼太たちの心の衝撃をわかっていたが、続きを話していく。
「そもそも有事に備えてわしは一族を、複数の集落に分けておったんじゃが……まさか帝国が我々をターゲットにしてくるとは予想外じゃったな」
蒼太はそれを聞いて目を細めた。グレヴィンは何か大事なことを言おうとしている、そう感じ取っていた。
「ふむ、聞く気になったようじゃな。帝国は我々を狙って攻め込み、潰れた集落もあったようじゃ……わしはそもそも一般に知られている物語にあるように死んだことになっておるからのう。それを利用して正体を隠して潜伏しようとしたんじゃ。アトラと出会ったのはその頃じゃったかの」
グレヴィンは懐かしい記憶を掘り起こすようにアトラへと視線を送る。
『私が他の魔物と戦っている時に、グレゴール殿が助けてくれたのをきっかけに私は獣魔契約を交わしたのだ』
「うむうむ、そうじゃったの。さっきも言ったがその時はもっと、こうサイズが小さかったんじゃよ。まさかこんなに大きくなるとはのう」
グレヴィンの言葉にアトラは目を細める。
『その言葉そっくりそのまま返そう。まさか、こんなに巨大になっているとは思わなかった』
「確かにな、俺もそう思う。まさかゴーレムに記憶を転写してるとはな……それだけここにあるものがまずいってことなんだろうが」
「ここにあるものは、まあ誰でも彼でも使えたら少し困ってしまうかもしれんな。まあ、それは追々説明していこう。それよりも帝国の話じゃな。あいつらは小人族を狙っておった。それも明確にわしの存在を狙っていたようじゃの」
先ほどの言葉と今の話の矛盾に気づいて、蒼太の顔には疑念が浮かぶ。
「気づいたようじゃの、そうじゃわしは世間では死んだことになっておるはずなのに、わしを狙ってきた。つまり、わしの生存を確信していた者がおるようじゃの」
「ってことは、帝国にあんたが生きていることを知っていた。もしくは予想していた者がいて、そいつにとってあんたは邪魔な存在だったってことか」
「うむ、わしは本を何冊か出したからのう。それを読んでわしの存在を確信したのかもしれん」
そう予想するグレヴィンであった。しかし、グレヴィンという愛称は安易な略称であるため、グレゴールマーヴィンから予想しやすいものではあったが、だからといってそこから集落を襲うほどの確信を得たとは思いがたかった。
「そもそもグレヴィンって略したのは俺が言ったからだろ? それを知っているやつなんて限られてくる。ましてや帝国にそんなやつはいないはずだが」
千年前の旅の際には帝国は存在しておらず、その頃はまだ小さな王国だった。だが、小人族が襲われ始めたのとほぼ同時期に帝国を名乗り、その勢力を拡大させていった。
「そのはずなんじゃがな、もしかしたらわしらの知り合いが漏らしたか……それとも裏切り者がいたかじゃが」
「でも、フランシールの兄貴も別に何もしてこなかったんだろ? 他には生存者に心当たりはないぞ」
蒼太とグレヴィンはどんどん思考の深みにはまっていく。
「あのー、思ったのですけど……」
このままでは何も話が進まない状況で、そっと手を上げたディーナが声をかけてくる。
「なんだ?」
蒼太は何かに気づいたのか、とディーナへ言葉を返した。
「そのフランシールさんのお兄さんと、帝国で小人族を襲うよう指示した人がもしかして同じ人なんじゃないですか?」
手振りを混ぜながら話す様子にグレヴィンと蒼太は一体何を言っているんだ? と不思議なものを見るような顔でディーナを見たが、すぐにその可能性に気づいた。
「「…………それだ!」」
蒼太が思いついたことに、同時にグレヴィンも思い至っていた。
「例えばそう、グレヴィンが開発した族長たちがつけている延命装置のようなもの。王族として、死を偽装しそのあとは別の名前で生きていた可能性がある」
蒼太は一つの推論を口にした。
「例えばじゃな、本人でなくてもその思想を受け継いだものがいて、そやつが帝国を築いたという考えもできなくはない」
グレヴィンは同じ考えを持つ別人の可能性をあげる。
「どちらにせよ、そう考えればつじつまは合うな。グレヴィンという名はフランシールもあの兄貴も知っていたはずだ。一度城に戻った時に雑談で名前が出たような記憶がある」
「うむ、あやつが生きていた。もしくはあやつの思想、思考、記憶などを受け継いだ者がおればわしを狙うことも考えられるな」
ディーナの一言から二人は考えをめぐらし、いくつかの推論をうちたてていく。
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再召喚された勇者は一般人として生きていく? 9/10発売予定です。




