第十二話
三人は別々の方向へ飛ばされ、壁にぶつかるとそのまま気絶した。
こうして「決闘」の決着はついた。
「ミルファ!」
「はい!!」
ミルファは一番近くに倒れたガルに回復魔法をかける。その間、グランはゲルとゴルをミルファの下へ移動させる。
蒼太はゆっくりとミルファ達の下へと向かう。
彼女は冒険者時代にその回復魔法でパーティに貢献し『癒しの聖女』の字を受けていた。
打撲と壁にぶつかった際の衝撃で折れた骨は瞬時に回復していく。彼女の持つ回復魔法でも上位のものを使っていた。
末弟のゴルは三人の中で最も軽傷で、一番早く目覚めた。
「……うーん、いててて、まさかここまで強いとは思わなかった」
ガルとゲルも少し間をおいて起き上がる。
「ルーキーのくせして強すぎだろ。俺らはともかくゴルまで手も足も出ないとはなあ」
「ソータだったっけ? とんだルーキーだね」
悪ぶった馬鹿っぽいしゃべり方はなりを潜める。
蒼太が舞台を降り、三人も落ち着いたところでグランが話を進める。
「ミルファご苦労だった。それでは結果を発表するか」
三人のリーダーガルはお手上げとばかりに両手を挙げる。
「結果も何も一目瞭然だろ」
ガルの言葉に蒼太も賛同する。
「そうだな、わかりきっている」
グランは全員の顔を見渡してから結果を口にする。
「この勝負、ソータの「引き分けだ」」
グランが最後まで言い切る前に蒼太がさえぎるように結果を告げる。
「なんだと?」
蒼太の勝利を告げようとしたグランは怪訝な表情になる。
ミルファと三兄弟も四者四様ながら疑問の表情を浮かべる。
「一体どういうことですか?」
四人を代表してミルファが問う。
「こいつら三人は気絶した。それだけ見れば俺の勝ちだ、だが俺は言ったはずだ。『武器はいらない』とな。だがそいつから奪った片手剣を俺は使ってしまったからな。正式なルールにいれてはないがルール破りだ。だから引き分け」
「なるほどな、お前がそれで構わないならいいが……それだと報酬はもらえんぞ?」
「構わない……ってか、茶番はこのへんでいいだろ」
蒼太は両手を広げ、やれやれといった顔をする。
「こいつらの力はどう考えてもCランクじゃない。俺を襲ってくるまでの流れの粗暴さと戦闘での慎重さの違い、そして戦闘後の口調と表情の変化。武器だってそうだ、最初に使ってたのは予備武器かテスト用の武器だろ。後半に使った武器はレア度の高い強力な武器だった」
三兄弟は目を逸らしたり、顔を掻いたり、眼をつむりごまかす。
「決闘に持ち込むまでを想定してたかはわからないが、馬鹿で野蛮な冒険者を装わせて襲わせることで俺を試したんだろ。そもそもあんなに人目につく形であれだけの額の報酬を渡すこと自体おかしいからな」
グランはため息をつき、ガシガシと頭をかく。
「全部ばれていたのか、まいったな」
「奴隷落ちって話も、実際には奴隷にはしないで奴隷落ちしたことにしてあんたが俺に金を払うことで済ませようとしたんだろ」
グランは苦い顔をし、むむむと唸っている。
「その顔をみたら、当たってるみたいだな。さてさて、あんたが言う簡単な試験ってのはBランク以上の冒険者を三人相手にすることだったのか?」
「いや、それは」
「あーいや違うか。『わしの権限でDランクにアップ、文句は言わせん!』とか言ってたもんなあ、まさかあれだけ断言しといて試験をするなんてことはないだろうからなあ」
「うぅ、その……」
グランの語尾は小さくなる。
「マスターがそこまで追い詰められるのは珍しいですね。だから『よろしいのですか?』と聞いたんです」
「ミルファ、お前まで責めんでくれ」
ガックリと肩を落とす。
「ソータさん、申し訳ありません。なんとか許してもらえませんか?」
「……そうだな、じゃあ俺の条件をいくつか飲んでもらえるなら許そう」
「条件……ですか」
「そうだ、まず一つは俺はDランクから上にいくつもりはないから決して上げることのないように。それから、今回の謝罪としてどこか住む場所を紹介してもらえるとありがたい。料金は……そちらの誠意次第ってとこだな」
ミルファはあごに手をあてながら考える。
「一つ目は大丈夫だと思います。目立つ功績の場合はギルドマスタールームで査定し、外に漏れないようにすればいいです。二つ目のほうですが、持ち家……ということでしょうか?」
「そうだな、しばらくはここに居ようと思うから拠点になる場所が欲しい。条件は、風呂があること、部屋数はキッチン含めて5つくらいあったほうがいいな」
ミルファは手帳をとりだし、条件をメモする。
「……わかりました。すぐというわけにはいきませんが、探してみます。マスターよろしいですね?」
「仕方あるまい……」
不承不承といった感じで了承するグラン。
「俺がされたことをこの街の冒険者と別の街のギルドマスターにでも話すか」
聞こえるか聞こえないかくらいの小さな声で蒼太はつぶやく。
「是非、家を探させてくれ! ミルファいい家を探すんだぞ!」
額に汗を浮かべながらもミルファに指示を出すことで、蒼太に対してやる気を見せる。
「はいはい、わかってますよ。もう、仕方ないですね」
「それで、俺たちはもう行っていいのか?」
「ん、あぁすまんかったな。助かったぞ、壊れた装備に関してはあとで請求を出してくれ」
「いや、いいさ。壊れたのは全部安物だからな、今回の報酬でまかなえる」
ガルはそう言うと、今度は蒼太を見る。
「ソータ、俺たちはBランク冒険者だ。戦ってわかったと思うがゴルだけは才能が上でな、Aランクに届こうかってとこだ。その俺たちが手も足も出ないってんだ。お前さん、相当な実力だな……ぶっちゃけ力の三割も出してないだろ」
「まあ、そんなところだ。お前らも強かったよ」
「ははっ、あれだけ圧倒的な力を見せられてそう言われてもな。まあ今回の俺たちは演技だったが、この先Dランクのままいくんだったらこういうやからに気をつけろよ。ランクだけで舐めてかかってくるやつも多いだろうからな」
蒼太はその言葉に辟易する。
「むぅ、そいつは面倒だな……その忠告はありがたく受け取っておくよ」
「それじゃあな」
ガルは手を振り。
「今度は敵じゃなく一緒に組みたいもんだ」
ゲルは握手を。
「次戦うことがあったら、今度こそは決定打をいれてみせますよ」
ゴルは蒼太を指差し去っていく。
ちなみに、彼らは三人ともBランクだがパーティとしてはAランク認定されており、以前にグランが言っていたこの街に唯一のAランクパーティとは彼らのことだった。
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